天球
僕の言葉を受けて盛大にぶち上げたネアンの魔法は自分たちのいる王城を破壊して、その最上階へとたどり着く。
「……ッ!?な、なんだあれは」
それと共に姿を現したのは一つ巨大な天蓋、透明な結界に守られている天球である。
円を象る透明な結界の中は濃い霧に覆われている。
そのせいで、中に何が置かれているかまでは確認できなかった。
「あれは、たしかに面白そうなものではあるねぇ、何があるでしょうかぁ?」
結界の方に視線を送るルーエは少しばかりの警戒を持ちながら結界の中の方へと視線を送っていたかと思えば、こちらの方へと素早く視線を送ってくる。
「そこぉー、あまり近づかなぁーい、まだ戦闘は終わってないよぉ?」
ルーエが非難するかのように見ているのは僕に抱きついてよしよしと頭を撫でていたフィーネである。
「何を言っているの!?コーレンが一生懸命頑張って見つけてくれたんだよ!褒めてあげないと!」
ふんがふんがと僕の匂いを嗅いでいるフィーネは真面目な表情で告げる。
彼女が獣人で犬の尾が生えていれば今ごろぶんぶんと力強く振られていただろう。
「ただ抱きついたいだけでしょぉー?」
それに対してルーエは呆れたような声を上げる……そんな彼女の言葉の裏にはかなりの激情が荒ぶっていそうだが。
「コーレン、僕の胸はいつでも空いているとも……な、何なら脱ご……ッ!?木の根が!?」
変なことを宣うネアンの言葉は途中で驚愕の言葉へと変わる。
「……これは」
それも当然だろう。
崩壊する王城の壁から伸びてきた大量の木の根がその姿を王城へと変えて徐々に再生してきていた。
これを見て驚かない人間などいないだろう。
「……これは、厄介そうだね」
そんな声を前にする僕は手を組んで徐々に見えなくなる決壊に守られる濃い霧に包まれる天球の方へと腕を向ける。
「という訳で、ちょっくら先に行っているね。何かあったら連絡するから」
そして、そのままマーキングを飛ばして天球の中へ。
それと共に僕はマーキングの位置へと己を召喚させることで擬似的に転移の魔法を発動させてみせる。
調査のために端から一人で先んじて中に入るつもりではあったのだ。
王城が木の根によって再生するという些細なアクシデントがあったとしてもマーキングを飛ばすための準備も、自分をマーキングの位置に飛ばす準備もしっかりとしていたのだ。
何時でもとべるようにはしていたのだ。
「「「なっ!?!?」」」
僕は頼もしい味方たち三人とは別れて天球の中へと足をつけるのだった。
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