ペットボトル
暴走機関車ここな丸
第1段落
3日前に買っておいたオレンジ風味の炭酸水を飲む事にしました。
それはペットボトル飲料で、飲むのにまず少し固い蓋を開けなくてはなりません。
大変です、少しどころじゃありませんでした。
めっちゃくちゃ固いのです、この蓋。
固すぎだろ、もっと開けやすいようにしろ。
違います。
こいつが固すぎると言うよりは、私の力が弱すぎるのです。
それも違います。
だって、私は以前までペットボトルの蓋なんてそこまで苦労する事無く開けていましたから。
クリスマスで家族と飲むファニーなグレープジュース、幸せで美味しいんだよね。
姉はオレンジの方が好きらしいけど。
もしかして……。
加齢で力が弱くなった?
馬鹿にしないで下さい、私はまだ
10代から20代で、そんな変わる訳無いじゃないですか。
って言っても、私……科学に別に詳しくないんですけどね、医学にも。
私はある答えに辿り着きました。
なんでだろー、なんでだろーって考えました。
あ、蓋ならもうとっくに開けられているので大丈夫ですよ。
心配しないで下さい。
そう、答えは私が少女時代より慎重になったから、です。
だって考えてみて下さい、私が開けようとしてたの炭酸!ですよ?
しゅわしゅわの喉にピリつくあの炭酸。
周りに飛び散るじゃないですか。
炭酸のペットボトル開ける時、1回目とか2回目とか16回目とか関係無く、開けた瞬間に蓋の隙間から飛沫がプシュって飛び散って来ないですか?
しかもそのせいで手にも付いてジュースでベタベタになる。
一体私は何で手を拭けば良いんですか?
だから出来るだけ少しずつ開けてね。
ゆっくり見送ります、ペットボトルの中の水の、どこからか湧いてくる泡が浮上している姿を。
そんな様子を見せられても、
そうだから私はそれが理由で、力いっぱいには開けらないんです。
今、目の前には読み途中の書物もあるし。
本を汚したくない!手もベタベタになりたくない!
でも喉が乾いたから早くこれを飲みたい!開けたい!
『これが令和のジレンマかぁ』って、私は息を詰まらせました。
やかましいわ、しょうもない事で悩んでるなーって思ったでしょ?
若いなーって、思ったでしょ?
でもね、私にとってはね、大人になり掛けの子供の私にとっては、もの凄い発見なんです。
あー私、慎重になってる……って。
分かんないですけど、だから無意識に蓋に掛ける力が弱くなっちゃうんじゃないですかね?
早く開けて自分の喉を潤す事よりも、それ以外の事に目を向け始めたんです。
自分の中で、優先する事が変わったんです。
私はそう考えましたが、皆さんどうですかね?
ペットボトル 暴走機関車ここな丸 @bousou_novel_c
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