第471話 【第二夜目】ふかく反省してます



「えーーー、っと……お疲れ様でした。赤嶺あかみねさんと、花畑かはたさん」


「「お疲れ様ですー…………」」


「あー……めっっちゃ疲れてますね。……ほんとお疲れ様です」


「「ですーー…………」」




 えーっとですね……早いもので、第二夜の収録・配信が(なんとか)すべて終わりまして、現在は反省会兼ミーティングのお時間です。


 一応ざっくりと『何があったのか』を軽ぅーくご説明させていただくとですね……まぁ、地獄でしたね。




 おれが『激しい運動で紅潮した美少女のお顔』と『合法疲労回復リラクゼーションを施される美少女』を満喫したいがために巻き起こした『ダッツ争奪戦争』によって……それはそれは泥沼の争いが繰り広げられた。


 数発どころか数十発のヒットを浴びても頑なに認めようとしない、色々と我が強すぎるメンバー数名による熾烈なサバイバル(?)戦は、そのとばっちりを受け半泣きになる数名――みどりさんとかえでさん――がリタイアした後も延々と続いた。


 もう賞品であるダッツを選ぶ権利は獲得しているのに、それでも三人は銃を撃つ手を一向に休めない。

 狂暴な笑みを浮かべながらトリガーを引きまくるちとせさんと、普段の眠たそうな顔に満面の笑みを浮かべるももさんと、単純にエアガンを撃つことに快感を覚え始めたみさきさん。

 普段はガーリーで可愛らしいドレス姿の彼女たちによる、大変泥臭く血なまぐさい優勝争いは……おれが『合法疲労回復屋さん』として介入し(てしまっ)たばっかりに、まさしく泥沼の戦いと化したのだった。



 疲労顔の美少女を延々とムフフできるからって、後先考えずにやり過ぎた。完全におれがやらかしたわけだな。てへぺろ。




「えー、その件に関しましては……大変もうしわけございません……」


「いえいえ。まぁ視聴者さんたちにも好評だったみたいですし……あんまり気にしないで下さい」


「そうですよぉー! それに『お詫びの品』もみんなで楽しませてもらいましたし!」


「喜んでいただけて何よりです……ほんとすみません……」




 調子にのったお詫びとして……Ⅲ期生の皆さんには、特大の花火セットを『これでもか』とお届けさせていただいた。


 また晩ごはんのカレーに関しても、プラスアルファおいしそうな具材を奮発させていただいたので……みなさんの手で作りあげたおいしいビーフカレーを堪能した後、陽が暮れたあとなかよく(?)花火を堪能していただいたのだ。



 まるで子どものように(実際小さな子どもの背丈なのだが)花火を手に手にキャッキャとはしゃぐ彼女たちは……それはそれは、とても可愛らしかった。




「えぇーと……ではまず、我々から。なんというか、まぁ不幸な事故はありましたが……そのお陰と言うべきですかね? 数字のほうは良い感じになってますよ。ほら」


「「おほぉーーーー!!」」


「ほんとすみません……差し入れとかもう自重します……」


「あっ、大丈夫です。単純に気を遣って戴けてるのありがたいですし、多少騒動起きたほうが伸びるので」


「アッ…………な、なるほど?」



 Ⅲ期生マネージャーの伊倉いぐらさんからフォローもいただき、これで晴れてわたくしめは無罪放免となったのだが……しかしさすがに混乱を助長するやり方は良くなかったので、心を入れ換えることにする。

 そうとも……醜い争いを助長する個数ではなく、みんなに満遍なく差し入れをすればよかっただけの話なのだ。明日以降は気を付けよう。




「ところで、例の『おすすめメニュー』ですが……正直いかがでしたか? 昨晩ティーリットさんからの発案だったのですが……」


「あっ、ですよね。見覚えないボードいきなり渡されたので、ちょっとびっくりして」


「でも実際、確かにやり易かったですよ。ただ『自由にキャンプしろ』って言われても……正直、めっちゃ間延びしそうだったので」


「そうそう。抽選がサイコロでランダムだったし、行き当たりばったり感も出ててよかったなって」


「毎度サイコロ振らされる側の私は、プレッシャーけっこう半端無かったですけどね……」


「でもそんなハズレ目なかったから良いじゃん! 『深夜バス』とか書いてなかったし!」


「はぁー? オッケーわかった。みど今度サイコロコラボすっぞ。お前にもサイコロ振らせっからな」


「ぅええ!? やだあああ!!」


「だってよぉ! ゆるせねぇよなぁ!? そう思うでしょ若芽わかめちゃんも!!」


「エッ? アッ、ハイ」


「なるほどですね。では企画案として、上に提案しておきましょう」


「まああああああ!!?」




 美少女実在仮想配信者アンリアルキャスター五人組の『行き先ランダム旅企画』ですって……なにそれ見たい。めっちゃおもしろそうですやん。深夜バスお見舞いされろ。

 それにしても……なるほど、そういう『何ができるか』という点も、彼ら彼女らは手探りで探しているということなのだろうな。


 なんでも『にじキャラ』さん方にとってみれば、スタジオの外で【変身キャスト】を行使することなんて、数えるほどしか経験が無いのだとか。

 それこそ今回の林間学校コラボを除けば……半年ほど前の、実体化お披露目カラオケコラボくらいじゃなかろうか。

 あぁそういえば、ハデスさま主導での『なかゲ部凶禍きょうか合宿』もあったか。会場はそれこそすぐ近くの落水荘さんだったわ。……どちらにしろ室内か。


 どちらにしろ、数えるほどしか経験がないようだし……屋外での企画はやっぱり経験が少ないようで。

 今回の林間学校コラボに踏みきってくれた理由のひとつとして、やはり将来的には積極的に外へ出て企画撮影をしていきたい……そのためのテストやデータ収集をしたいというのも、少なからずあったのだろう。



 外部の目が無い屋外空間で、思い付く限りいろいろな演目を体験させ、どういった内容の配信であれば『実在仮想配信者アンリアルキャスター』の強みを活かすことができるのか。

 また、仮想配信者アンリアルキャスターの頃から追いかけてきてくれている視聴者さんは……どんなことを期待しているのか。


 それらのデータを集めるために、われわれ『のわめでぃあ』の存在は、いろいろと都合がよかったのだろう。ふふふ。




「……ではまぁ、それぞれ改善点も浮き彫りにできましたので……そろそろ解散としましょうか。何かありますか?」


「私は大丈夫です。サイコロコラボよろしくお願いしますね!」


「うぅ…………私も大丈夫……あっ、明日『だし巻き』食べたいです……」


「ふふふ。それも込みで、了解しました」


「「やったーー!」」




 とりあえずは、あと半日。

 寝て起きてごはんたべてテントを撤収し終えるまで、実在仮想アンリアル林間学校をがんばっていただき。


 その後も……もしご用命とあらば、みなさんの配信者業をお手伝いさせていただくことも、やぶさかではございませんとも。



 まぁ、とりあえずは……いろんな意味で疲れたであろう一日の、その疲労を抜くためにも。

 皆さんには、ゆっくり休んでいただきたいものだ。


 ……もちろん、スタッフさんも含めて。



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