第362話 【誘客遊戯】ハラハラの第二試合



 大盛り上がりの中で決着した第一試合……その勝者はハデスさまと、なんと『ひよこ組』のなつめちゃん。

 見事に空気を読んでくれた『なかゲ部』の方々のお陰もあり、見所のある激闘ながらいい意味での予想外と、非常に盛り上がりを見せた一戦であった。



 そして……選手交替からの、第二試合。

 参加者はおれと、ラニちゃんと、『なかゲ部』からは刀郷とーごーさんと、ティーリットさま。


 この中では、圧倒的におれがよわよわなのだろう。何てったって霧衣きりえちゃんやなつめちゃん同様『ひよこ組』なのだ。マトモにやり合えば勝てるはずがない。

 しかししかし、そんなおれにも光明が差したのだ。それはほかでもない第一試合で証明されたこと。

 見ていて面白い盤面を作り出すためには、つよいひとはつよいひとを倒しにいかなければならない。つまり、おれは逃げに徹してさえいれば、勝手に二位になるという寸法なのだ!!



「ぐわーーーーーーーー!!!」


「ああ! わかめちゃん!?」


「ラニちゃんえっぐ……! 全く容赦ないじゃないすか!」


「はっはァ!! ノワを虐めて泣かせて辱しめる権利は誰にも譲らんよ!!」


「こわいこわいこわい!! やだ! ゆるして!! やだ、わたし死にたくな…………ああーー!!?」


「「あぁー…………(合掌)」」



 開幕からの怒濤のラッシュと的確なコンボで、またたく間におれの操るエルフの勇者はライフポイントを削りきられる。

 第二試合では唯一ハンデを貰っていたのに、しかしゲームオーバーになったのは一番最初っていう……どんだけ執拗に攻められてたの。ひどい。


 おれのみに粘着しているようなら、ハラスメントとして訴えかけてもよかったのだろうが……しかしそこはこの勇者、抜け目が無いというか単純に半端無いというか、刀郷とーごーさんとティーリットさまにも怒濤のアタックを仕掛けているんだよな。

 おれのライフを削りきりながら、またお二方も(漁夫の利があったとはいえ)一つずつ削ってみせる……いや、強すぎやしませんかね。



 というわけで、現在の戦況としては……黒ずくめの怪盗を操るラニちゃんが残機ライフ三で単独首位、その下にエルフのお姫様キャラを操るティーリットさまと、大剣装備のソルジャーを操る刀郷とーごーさんが続く。


 お姫様ティーさまソルジャーとーごーさん怪盗ラニの暴れっぷりに危機感を抱いたのか、どうやら共闘の構えを見せたようだ。



「……ッ! さすがに……やりづらいね、っ!」


「ラニさんさすがに、ちょっと危険すぎますん、でっ!」


「わかめちゃんのかたきじゃよー! えいっ、えいっ!」


(かわいい)



 そりゃあれだけ暴れまわり、哀れな少女おれをたやすく殺めた相手とあっては、怪盗ラニは警戒されて然るべきだろう。

 ソルジャーとーごーさんは距離を詰め、お姫様ティーさまは中距離から、怪盗ラニにダメージをじわじわと蓄積させていく。

 がんぱれお二人。めっちゃ応援する。おれのかたきを討ってくれ。




「……ねぇ、ティーちゃん?」


「んう? なんじゃ?」



 二対一、さすがに旗色が悪いと悟ったのだろうか。

 ゲームつよつよで、イタズラが大好きで、たまにえげつない悪辣あくらつさを見せる可愛い妖精が……その本性を露にする。



「ずばり『ファンタジー女子会』とか……どう?」


「…………? なにを、いうとる?」


「っ!! ティー様耳貸しちゃダメっす! 早くラニさん倒さないと……」


「ボクが勝ったら……『ファンタジー女子会』コラボ、持ち掛けようと思ってるんだけど」


「け…………けど?」


「ティー様ダメっす! 早く攻撃を! ラニさんの作戦っすよそれ!」




「『ファンタジー女子』であるティーちゃんも……コラボ、誘っちゃおっかな★」


刀郷とーこーくんごめんねどす」


「アァーーやっぱこうなったーー!!」




 な、なんてえげつない……!

 美味しそうな餌をちらつかせ、甘い囁きでティーリットさまをたぶらかし、あっという間に自らの手勢に引き込んで見せた。


 というわけで、いとも容易たやすく形勢逆転。

 怪盗ラニお姫様ティーさまに畳み掛けられ、あわれソルジャーとーごーさんは確実に追い込まれていき……




「くっそぉーーーーー!!」


「「イェーーーーイ!!」」


「いやぁ……女子って怖ぇなぁ……」


「いやぁ……あれはラニちゃんが怖いわ」




 こうして第二試合の勝者は、漆黒の怪盗とエルフのお姫様……ラニちゃんとティーリットさまの『見た目華やかペア』に決まりまして。




刀郷とーごーさん……今度飲み行きましょっか……」


「あっ……いえ、光栄っすけどオレ、一応高校生って設定なんで……お気持ちだけ頂いときますわ……」


「そっ、……そう……です……か」


「のわっちゃんの誘い断るとか最ッ低やなデコ!!」


「そうだぞ刀郷トーゴー! わかめちゃん姫直々じきじきのお誘いだろうが!!」


「いや、でも! でもですよ! 仮にオレがあのお誘い受けたらまた炎上するでしょう!?」


「せやろな」「だろうな」


「ほらぁーーーー!!」



 ラニちゃんのえげつない策略の前に散った刀郷とーごーさんは、負けてなおかわいそうな目に遭っていた。かわいそう。

 かわいそうだけど……おかげでコメントのほうは大盛り上がりだよ。すごいね刀郷とーごーさん。




 ……というわけで。

 様々な悲劇こそあれど、事件と言えるような問題も特に起こらず……これで決勝に駒を進める四名が無事に決まったわけで。



 ではでは……第二回『のわめでぃあ杯【局長争奪戦】』、えある決勝戦の参加者を、ここに纏めさせていただこう。


 第一試合からは、肉弾系魔王を操るハデスさまと、青いハリネズミを操るなつめちゃんがノミネート。

 終始紳士的な試合運びとなった第一試合、うにさんに半ば譲られるような形とはいえ、なつめちゃんが『ひよこ組』のなかで唯一、勝ち抜けの栄誉を賜るに至った。えらいぞ!


 そして混迷の第二試合からは……今大会の主催にして黒幕、ラニちゃん操る漆黒の怪盗、そして彼女に唆されたエルフのお姫様……を操作するエルフの王女、ティーリットさま。

 とにもかくにもラニちゃんの悪辣さが際立った第二試合、しかしそれでも寄せられるコメントはなぜか好意的なものが多い。げせぬ。



 以上の四名で闘っていただく決勝戦。ルールは変わらず、なつめちゃんのみ残機ライフ五スタートのハンデ戦だ。


 この一戦での勝者が……優勝賞品、つまりは『局長おれに(公序良俗に反しない範囲で)何でも一つお願いを聞いてもらえる権利』を手にすることができる。

 おれとしては一も二もなくなつめちゃんに勝ってもらいたいけど、さすがにそれは厳しいか。




 というわけで、更に増えた多くの視聴者さんたち(おれ正直びびってる)が見つめる、注目の一戦。


 いざ尋常に……はいプレイボール!



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