第334話 【催事二日】至近距離えがおおーら
みなさんヘィリィ、こんにちわ。泣く子も笑う『のわめでぃあ』局長、木乃若芽だよ。
東京臨海展示場ビッグボックスにて開催中の、全国規模のキャンピングカーイベント……その名も『ジャ(略)ス』!
本日はその最終日となる二日目、一月二十六日の日曜日でございます。
無難に朝起きして、各々身支度整えて、みんな揃ってごはん食べて、
ちなみに帝國旅客車輛さん、やっぱ普通のタクシー会社とは一線を画す会社らしくてですね……乗客のプライバシーとか機密事項とか、そのへんの取り扱いもしっかりしている『安心』なタクシーらしいです。窓もスモーク入ってるし、あんしんだ。
ともあれ、指定されていた集合時刻までに無事出勤を果たせたおれたちは……昨日と同様に、順調にスケジュールを消化していった。
「「「おぉぉぉぉーー」」」
『――――ほぉ……』
「……いや、目の前でまじまじ見られると照れるっすね」
そうして迎えた、例の『休憩』時間。おれたちは前日立てた計画の通り、まず『車輌紹介動画(
今回が初出しとなる公式イラスト供給には……会場モニターをご覧の一般のお客さんたちも、また『のわめでぃあ』の視聴者さんたちも、たいへん喜んでくれたようだ。
でもおれのほうがうれしいもんね。ママありがとう。
ちなみに本日の休憩時間は、十二時頃と十五時頃にそれぞれ設けてもらっている。今回は十二時のほうだ。
なんでも……昨日のおれの『休まなさっぷり』に関して、各方面よりツッコミが三納オ社さんに寄せられたんだとか。
おれが勝手に無茶なスケジュール組んだだけなのに、そのせいで迷惑かけてしまう形となってしまったのだ。まったくもって申し訳ない。
なのでおれは尚のこと気合いをいれて、午後からもはりきって三納オ社をPRしていく。
キャンペーンガールらしくないことをしてるのは百も承知だが……おれは施されたら施し返す男なので。恩返しだッ。
「
「こ、こんにちわっ! のわめ……っ、ではなく…………みのう、おおと、さあびす、の……見習いの、
「よくできました! えらいねぇ、きりえちゃんいいこだねぇ」
「わうぅぅ……わうぅぅぅぅ……!」
「えへへ……まぁ、配信をご覧頂いてる方にとっては『いまさら』感が拭えないのですが……なんとなんと、本日は東京臨海展示場『ビッグボックス』内、東ホールからお送りしています!」
『てぇてぇ』『尊ぇ』『てぇてぇ……』『のわきりてぇてぇ』『しってた』『会場のおまえら裏山』『てぇてぇ』『かわいいが』『わうわうかわいい』『スパチャできない』『なでなでして……』『今更だけどな』『出張ヘィリィ』
……えーっと、最初おれも提案を聞いたときはビックリしたのですが……なんとなんと、いつものような『のわめでぃあ』生配信を
というかぶっちゃけ、会社としての目標そのものはとっくに達成してしまっているらしいので……まあ、早い話が『関さんの趣味』らしい。
あのおじさま、どうやら我々のなかでも
まぁ……要するに、
クライアント様からのご要望という形であったのなら、おれは応えずにはいられないだろう。そこんとこよく解っておられる。
本来であれば昨日同様、関さんを巻き込んでの車内ひろさアピールの予定だったのだが……急遽予定を変更し、おれ対
というわけで、構成のほぼ全てが『のわめでぃあ』となってしまったので……改めて
「改めてになりますが、本日わたしたちは『三納オートサービス』さんのお手伝いとして、こうしてイベントにお邪魔しているわけですけども……」
「はっ、はいっ! こっ、ここっ、からの、時間は……わたくし、新人れぽーたーの、きりえが、『きゃんぴんぐかー』のすきなところを……ごせつめい、させていただきますっ」
「はい、よくできました! 大丈夫? きりえちゃん。緊張してない?」
「しゅっ、しゅこし……どきどき、しておりまする。……
「大丈夫だからね。わたしがついてるから、安心してね。…………あと視聴者さんたちの中で今えっちなこと考えた人は局長おこらないから正直に『きりえちゃんかわいい』って言って」
「わうぅ!??」
『お、おっきくてご立派さま……』『きりえちゃんかわいい』『きりえちゃんかわいい』『きりえちゃんかわいい』『立派だなんてそんな……照れるぜ』『きりえちゃんかわいい』『きりえちゃんかわいい』『AVインタビューかな……』『きりえちゃんかわいい』『振り込ませて』
昨日今日と、朝十時からぶっ通しで配信回しているものの……車外で表立って
おれの視聴者さんたちからの歓声と、会場のお客さんのどよめきと感嘆。狗耳白髪和服美少女きりえちゃんのポテンシャルは、やはり健在のようだ。取締役が推すだけのことはある。
そんなこんなで自己紹介を終えて、特設の『お立ち台』へと二人揃ってひらりとよじ登って、ふたりならんで腰掛ける。なんでも昨日の閉場後、技術スタッフさんが高さの再調整をしてくれたらしく、現在の座面高さは九十センチほどに下げられている。
お客さんたちとの距離も近づいたので、声も聞こえやすいだろう。あしがぷらぷらしてしまう高さだけど、
「それでは、そういうわけで……気合いいれて、いってみましょうか。『キャンピングカーの
「は、はいっ! ……えっと、あの……ごしゅっ、……わかめさまと、
「いや、ヴゥッ……っ、…………うん、大丈夫。……大丈夫だから……」
予想通り……いや、予想を遥かに上回る『かわいい』の暴力。これがよく聞く『むり』『しんどい』といった感情なのかもしれない。ヒトって極限状態まで陥ると、やっぱ語彙力なくなるんだな。
さてさて……この子と一緒にお話をする、この先およそ一時間。
果たしておれは、この超高火力おれ特効攻撃を食らい続けて……生き残ることが可能なのだろうか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます