第293話 【第二関門】常識ビフォーアフター
「
「ちゃんと自己紹介しぃや! なんかもっと、こう……あるやろ!」
「んふゥー」
まさかのまさか、この日本において実在
……ほら、ラニちゃん元気だして。何しょげてんのさ。あぐらかかないでよ。おまた見えちゃうでしょ。
「改めまして……エルフになっちゃいました、
「あっ、あのっ! れぽーたー見習いの……
「そしてボクがフェアリーの! 現代ニホンで唯一のフェアリーの! 超稀少種族フェアリーの! ラニことシラタニです!!」
「どうどうラニちゃん」
「ごめんてマミちゃん」
「むきぃーー!!」
ラニちゃんの(不本意な)尽力もあり、くろさんとの距離感は大きく縮めることが出来た……気がする。
おかげでやっと、本当にやっと、本題である『おうたコラボ』に関しての詳細を詰める話の場を設けることが出来た。
八代さんの提案によると……場所は『にじキャラ』さんの所有スタジオにて、普通のカラオケ機材を用いての『カラオケ配信』ということらしい。
っていうかさっき普通に言ってたけど……自前で持ってるんですかあの機械。
「でもでも、かめちゃん実在
「わ、わたしは別に、構わないんですが……くろさんは、その……大丈夫なんですか? カメラに姿が映っても」
「ぅん! 大丈夫ぅ!」
「「「「大丈夫
「んふふゥー」
……うん、わかったぞ!
この子は……なんというか、てきとうだ!
決して悪気があるわけじゃないんだろうし、実際悪い子じゃないんだろうけど……まわりで世話を焼く人たちは大変そうだ。
それがさっきの八代さんの……死んだような目に繋がるんだろうな。
…………相当振り回されてきたんだろうな。
「やぁーでもぉー……カラオケボックスのほうが……いいじゃん?」
「何をして『良いじゃん』って言っとんのかわからんのやけど……じゃあ逆にさ、くろ。うちのスタジオじゃダメな理由て何?」
「…………ドリンクバー……」
「「「…………あぁー……」」」
「んふゥー! かめちゃんわかってくれる?」
「えーっと…………うん……はい。……わかります」
そうなんだよなぁ……なんていうか、座って立って歌い続けるだけっていうのも……疲れるっていうのとは少し違うんだけど、だんだん『だるさ』のようなものが出てきちゃうんだよな。
そういうときに気分転換もかねてブースから出て、ドリンクバーで好きなジュースを選んで注いで……たった数分の散歩だけど、ブースに戻ってくると『だるさ』がいつの間にか姿を消していて、また歌いたくなってくるのだ。
あと単純に……オレンジジュースがいっぱい飲める。うれしい。
……というわけで、おれ個人的な意見としては、くろさんの提案に賛成であるのだが……それをカメラに収めて配信したい側の
そりゃそうだろう。
つまりは……専門的な設備が整っていないカラオケボックスでは、おれたち二人を同じ画面に収めることができない。
もちろんカラオケボックスに
……うん、そのへんの大変さを知ってるおれがくろさん側に付いたのは間違いだったかもしれない。
このあたりで軽く、現在の状況について整理してみよう。
まず……おれとくろさんの『おうたコラボ』を行うにあたり、演者双方の合意はひどくあっさりと得ることが出来た。
基本的な方針は、端的に言うと『カラオケオフコラボ』形式。リアルタイムでコメントや
……と、ここで。現在議論の焦点となっているのは、その『カラオケライブ』を収録する場所についてだ。
まず運営側としては、撮影や配信や配信中のフォローを的確に行うためにも『自社で確保したスタジオで行いたい』という基本方針を提示。
しかしその一方で……主演であるくろさんとおれの二人が『どうせやるならカラオケボックスがいい』と
えっと……裏方の苦労をある程度知ってるおれとしては、正直スタジオでの収録でもべつに構わないんだけど……でもそれを言うとたぶんくろさんが『しゅん』としてしまうので、心の中で手を合わせて詫びつつその意見は呑み込んでおく。
「そうですね……我々としても、最大限演者の意向に添う形としたいのは山々なのですが……」
「うーん…………ネックになってるのは、やっぱくろさんのアバターを動かすための機材っすよね。撮影して……まぁ流れるコメント欄とフレームに嵌めて、それを配信に乗せるだけであれば、ハイスペノートが一台あれば外でも可能なんでしょうけど……」
「いっそのことさ、カラオケボックスにいくだけいって、まぁドリンクバーとかも使わせてもらって……適当な立ち絵と曲目とかのテロップだけで、わたしたちの姿は映さないで、音声だけライブ配信っていうのは」
「「「「「「「それは却下」」」」」」」
「んぬェー!?」
……で、あれば!!(半ギレ)
であれば、やっぱりどうにかして機材を運ぶか、くろさんに涙を呑んで貰うか選ぶしかないですね!
「その……コラボ? までは、どれくらい期限があるの?」
「そうですね、なるべくなら早めに計画したいところですが……」
「来月の前半あたりでできればー、って言うとったっけ?
「ざっと、十日間から二十日間くらい……ってとこかな。……それがどうかしたの? ラニ」
「うーーーーん…………まぁ、できる、かな? やってみるか…………やってみる価値はあるか」
「ねーえー? ラーニー? ちょっとー? もしもーし? ……おっぱい揉む?」
「揉む揉む。……え、ごめん何?」
「うわ完全に反射で返事したよ今」
「いえ、ですからわかめちゃん揉めるほど無い痛い!! ちょっ、やめてください! よそ様の前ですよ!?」
「ああっ! ごめん! つい!!」
「うわ完全に反射で殴ったよ今」
……まぁ、ともかく。ラニがなにやら思考に沈んでいたので、そのお考えをお聞かせ願おうと思ったわけだが……
そこにはなんと、この
「…………【変身】魔法……とでも言おうかな」
「「「「「「……は?」」」」」」」
「さっきスズキさんに言われたやつ。……それまでに間に合うよう、ちょっとがんばってみるよ」
「「「「「「…………は!?」」」」」」」
この世界には存在しない『魔法』を操り、新たなる『
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