第261話 【定例配信】日本列島ランダムの旅
定例活動報告配信にて、視聴者の皆さんへお送りする二つの『お知らせ』のうちの一つ……明日よる九時からのゲームコラボのお知らせを、つつがなく完了させる。
メインチャンネルとなるうにさんのチャンネルを宣伝しながら、おれは密かな闘志と気合をこの身に漲らせていた。
わかめちゃんが……ただの
「……というわけで、続きまして『お知らせ』その二へいきましょう! ラニちゃん説明を!」
「はあい! えっとね……ご存じの視聴者さんも居るかもだけど、ボクら『のわめでぃあ』は先日『三納オートサービス』さんからオシゴトをいただきまして。その一環として……キャンピングカー? をですね、使わせてもらってるんだよね?」
「よっこい、しょっと。……うん、そうそう。モニターさんみたいな感じですね! 三納オートサービスさんの製品を使わせていただきながら、その使用感やメリットデメリットを報告したり……そんな感じなんですが、まぁキャンピングカーですよ? 遠出するに決まってますよね?」
「りょ……りょこう! ……で、ございます!」
『キャンカーいいなぁ』『きのう谷屋PAで見たぞ』『ついに旅番組かぁ』『やっぱのわちゃんだったのか……』『加賀森で見たぞ』『のわちゃん目撃証言はガチだったのか』『りょこうたのしみ!!』『【¥7,800】沖縄きてママ……』『温泉で見たって証言もガチってことか!?』
まぁ……先日の北陸ぷち旅行の際は特に身を隠していなかったので、見られることもあるだろうとは思っていた。
しかし実際おれの『目撃証言』がそんないろいろと挙げられていたとは知る由もなかったし……まさかあの、温泉でおれのことを
とはいえ実際、旅行動画に関する期待はなかなかのもののようだ。
年末の鶴来神宮
そんなこんなな理由もあるので、単純に『旅行動画が好き!!』という方々はもちろん、それ以外の理由でも期待されている気がする。……これはよりいっそう気合を入れないといけないな。
……というわけで、ここからが本題。
今しがたおれがえっちらおっちら運んできたのは……さっききりえちゃんに
おわかりいただけただろう。おれたちはこれから……ライブ配信しながら、行き先抽選を行おうとしているのだ。
「こちらにご用意いたしました、意味ありげなボード……こちらには『1』から『144』までの数字がランダムに散りばめられています。ちょっとカメラ寄ってみましょうね…………よっこらしょっ、と」
「あっ、わ、わかめさま! お手伝いいたします!」
「アッ、カワイ…………っ、ありがときりえちゃん。……えっと、見えましたか? 順番バラバラで『1』から『144』まで、ひとマスにひとつずつ数字が書かれていますね」
コメント欄に『見える』『見えた』の文字が満ちたことを確認してから、例のボードを壁際へと設置し直す。
はにかみながらお手伝いしてくれるきりえちゃんにズッキュンされながら肉体労働を終え、おれたちは再びカメラへと向き直る。
「今からあのボードにですね、きりえちゃんに……コレを投げてもらいます。ダーツですね」
「ダーツの刺さった番号が、つまるところ次のノワの目的地ってわけだね」
『ダーツ!?』『ダー、ツ……?』『えらい物騒なダーツやな……』『は???』『ダーツってなんだっけ』『ところさんのやつかwwwwww』『ダーツ???』『俺の知ってるダーツと違う』『ダーツか?これダーツか?』
「このダーツで当たった数字はですね…………こちらの『JAF全日本ロードマップ』のページと対応させて、目的地ってことにします。『1』ページの北海道は
『ねぇダーツ?』『これ手裏剣ってやつじゃん?』『ダーツ???』『ダーツ(スリケン)の旅wwww』『殺傷力高そうなダーツですね??』
「ダーツです。いいね?」
『アッハイ』『アッ、ハイ』『わかりました!!』『ダーツ!ダーツです!!』『アッ、ハイ』『イェスマム!』『サー!イェッサー!』
視聴者さんたちも抽選方法について納得してくれたので、ここで改めて企画の概要を説明しておく。
まず最初に、きりえちゃんのダーツによって目的地をランダムに選定。同時にその目的地付近に住んでいる視聴者さんたちに協力を募り、
企画概要、ならびに企画名称『のわめでぃあのせっかくとりっぷ』を公表し、例によって『セーフ?』『まぁセーフ?』などのコメントをいただき、また企画内容について色々とお褒めの言葉をいただき……このままであれば『新企画発表会』は、好評のうちに終わることだろう。
ただ……おわかりのことだろうか。
一見かんぺきに見えるこの企画だが……ただひとつ、決定的かつ致命的なボトルネックが存在しているということに。
「つきましては、ですね…………願わくば『のわめでぃあ』視聴者さんがいる地域に、ダーツが刺さってほしいですね……」
「現地視聴者さんゼロとかになって途方に暮れたら笑えるよね」
「笑えないよぉ!! みなさんぜひぜひ、お知り合いにも協力要請をどうか! どうかお願いします! なんでもし……あっ」
『ん?』『なんでもって』『ん?』『ん?』『ん?』『ん?今』『ん?』『ん?いまなんでもって』『ん?』『ん?』『怖すぎだろwwwwww』『ん?』『ん?今なんでもって』『ん?』『ん?』
「い…………言い切ってないからセーフ、ってことで……」
「……まぁ……そうね? しょうがないなわかめちゃんは」
「あ……ありがとう、ラニえもん」
場合によっては……現地の情報に詳しい視聴者さんだったら、現地在住じゃなくても受け入れるなどの柔軟な対応を取るべきなのかもしれないが…………まぁ、そのへんは壁に当たったら考えよう。
いや、きっと大丈夫、大丈夫だ。おれの親愛なる視聴者さんたちを信じるんだ。
「…………こほん。ではでは、気を取り直しまして」
「この借りはいつか返してもらわないとね」
「アッ!! こわい!! うぅ……とりあえずそれは保留としてですね……きりえちゃん、おねがいします!」
「は……はい、っ!」
……気を取り直して、いよいよきりえちゃんにしゅりけ…………ダーツを投げてもらう。
ボードからおよそ三メートル、きりえちゃんは右手の指に
いつものことながら、とても綺麗な立ち姿だ。静かに垂れる和服の袖や、足先を覆う
おれたちと視聴者さんたちが、固唾をのみながら暖かな視線で見守る中……
運命の一投が、ついに(打ち合わせ通りに
スパァンと硬質な音を立て、ボードに真っ直ぐ突き立った。
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