第133話 【近隣探索】風評の原因?
「……そうですね。……確かに。集落の方々の中には、それこそが原因であると考える方々も多いでしょう」
「あー……じゃあやっぱ印象よくないんだろうなぁ」
「……否定はできませんね。……事実、手前も以前は敵愾心を露にされたこともありました」
「…………よくそこでめげませんでしたね」
「……『契約』履行のためには、集落との交流が必要だと判断しましたので」
「あぁ…………」
ここの地名にも現れているように、かつてこのあたりには『
正直いって、規模はそんなに大きくない。岩波川に注ぐ流れのひとつ、その途中にあったのだという
昼夜を問わず水飛沫と水音を響かせ、訪れる人々を楽しませたという誉滝。その迫力のある音がどこにいても聞こえることから、この地は『
……そんな『滝音谷温泉』の……より厳密にいうと『誉滝』の終焉は、今からおよそ三十年前。誉滝の近くの山肌を切り開き、住宅用地が造成され始めたことに起因する……と、温泉街の人々は考えているらしい。
土地改良のため地中深くを掘り返され、また地表面が削られ、
今となっては月に数回、大雨の後なんかに稀に見られる程度。ここに住んでいる人々にとってはそこそこの頻度でお目にかかれるらしいが……最初からそれ目当てで訪れていた観光客にとっては、そうはいかない。
温泉に浸かりながら瀑布の音と眺望を楽しみたかった観光客にとって……たまにしか見れない、しかも雨天の後でないと拝めない、しかも確実に滝となるかは解らないとあっては、その魅力も褪せてしまう。
誉滝が姿を消して以降は……後を追うように、観光客の姿も消えていってしまったのだという。
「…………ここに住んで……石とか、投げられない?」
「……手前はこれでも、粘り強く交流を試みてきたつもりですので。……手前がこの物件の保守管理要員ということは、集落の方々全員の知るところです。頭ごなしに
「…………テグリさん、まじぱねぇっす……」
観光地としての目玉を奪われたとあっては……観光産業に従事しているこの町の人々にとって、別荘地『フォールタウン』はさぞや憎いものだったことだろう。
直接的な加害者ではなかったにしろ、あの場に居を構えた者に対する風当たりが強くなってしまっても、それはある意味仕方の無いことなのかもしれない。
そんな逆風も逆風、完全アウェーの中で、二十五年間地道に信頼関係を築き上げてきたというのだ。
やはりこのメイドさん、半端無いって。
「……でもさ、雨の後とかにはたまに流れるんだよね?
「……そうですね。……推測の域を出ませんが、完全に滝が死んだわけでは無いのだと思います。この山に滝の水源が存在する以上は、流れていた水が全て消えるとは考えづらいかと」
「…………滝まで届かずどっか途中で流れが変わって、雨のあと増水したりするとそこから溢れてくる……みたいな?」
「……ええ。確認したことがありませんので、あくまで推測になりますが」
「そ、そうなんだ……そんなに険しい山の中、とか?」
「……いえ。契約の履行そのものには関係が無いと判断しましたので」
「あ、あぁ……なるほど……」
そもそもの水源――この山の地下に蓄えられた地下水――が消滅するなどありえないので、その水はどこかに存在するはずなのだ。
別荘地の造成工事でその流れが変わり、滝へ向かうはずだった水が別のところへ流れていってしまった。
しかし滝方向へのルート……というか、水は無いが川部分は健在なので、大雨の後とかには水がそこを伝ってくる。……とか。
「……では……見に行ってみますか?
「んー…………そう、だね。せっかくだし。
「はいっ! 問題ございません! これでも神使依代に連なる系譜でございまするゆえ!」
「じゃあ……ちょっと寄り道。
まぁ、なんにせよ推測である点には変わりない。全然見当違いな考察である可能性だって、充分にあるのだ。
……だが、しかし。仮にこの仮定が正しかったのならば。
そのときは……もしかしたらだけど、おれでも何とかできるかもしれない。
まあ
とにかく、現地を見てみよう。詳しく調べればもっとスマートで有効な解決策も浮かぶかもしれない。
おれたちは
休憩中のモリアキにも
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます