第87話 【帰途談話】とりあえず作戦会議
非常に密度の濃い
さすがに入浴や睡眠は自宅で済ませたが……それ以外のほぼ全ての時間を鶴城神宮で過ごした、この二日間。家との往復には白谷さんに【門】を開いてもらい、時間を一切無駄にすることなく撮影と研修に打ち込んだ。
とりあえず撮影したいところの撮影も済んだし、
今のところ無事にことは進み、まわりに報告できそうな域にまで進捗度が達したので、ようやく情報解禁といったところだ。
ちなみに……この二日間のおれの行動ならびにおれの服装は、モリアキに内緒にしてあった。サプライズってやつになるんだろう。
いきなり
何といっても、シロちゃんがきっちりと着付けてくれた本格的な巫女装束……しかも一日目に着付けて貰った基本形態に加えて千早を羽織った、いうなれば第二形態である。
親としての贔屓を差し引いたとしても、控えめに言って可愛らしいんじゃないかと我ながら思っている。サプライズというわけでは無いが、少しは喜んでもらえただろうか。
「……いや『ちょっと喜ぶ』どころじゃないっす。本当心臓に悪いっすよ。マジで天国連れてかれるかと思いましたもん」
「ホヘェ、まーじ? 可愛い? ねぇおれ可愛い?」
「いや、ヤバイっす。控えめに言ってメチャクチャ可愛いっす。こんなん見たらもう大騒ぎっすよ……どうしたんすかその装束」
「
「……………………いやいやいやいやいや。何すかそれ!? どういうこと……えぇ……何すかそれ…………全くワケわかんないっす……マジで大騒ぎなりますよ…………いや本当、よく見つからずに車乗れたっすね」
「そこはホラ、頼りになるアシスタント妖精さんがいるから」
「んふふ……まぁ、ノワの危機感の無さにはそろそろ慣れてきたからね。ボクが可能な限り守ってあげないと」
「白谷さん??」
「それはめっちゃ安心感あるっすね……ありがとうございます白谷さん」
「
心外だ。おれはこんなにも色々考えて行動しているのに、モリアキも白谷さんも……まるでおれ一人だと不安だとでも言わんばかりだ。
そりゃあ確かに……モリアキには配信者計画を発動してから今まで――いやそれ以前からも――数えきれないくらい助けてもらってきた。そのことには感謝しているし、彼の助力は非常に嬉しくも思う。
「そうそう、先輩昨日新しいの上げたじゃないすか。伊養町のやつ。スゴいっすよあれ!」
「ほえ? なになにどうした? もしかしてバズっちまいました?」
「先輩のソレがどの程度を指してるのかは解んないっすけど……再生数は既に二万越えてます。一日で」
「にまっ…………!?」
「地名入れたのが良かったんすかね?
「マジで!? マジかウェルなみちゃん見てくれたのか! うおー!!」
昨晩、一旦自宅へと戻った際に投稿しておいた新作動画『
おれたちが鶴城さんの撮影と研修でいっぱいいっぱいだった間、投稿動画の経緯を観察してくれていたのだろう。良いニュースを持ってきてくれた彼に、自然と顔がほころぶ。
ちょうど良い。ならばこちらも、成果を発表すべきだろう。
多少流動的なところもあり、実際随所で白谷さんの知恵と助言を拝借したものの……今回だってばっちり案件を獲得してきたのだ。
……そう、モリアキに報告できる
この喜びを共有するために、モリアキに迎えに来てもらったと言っても過言ではない。
「……何か言いたげっすね」
「ふふふふ……良いニュースとすごいニュースがある。どっちから先に聞きたいい?」
「ぇえ…………ちょっと待って下さい、事故らないように車停めますんで」
「そんな
「いやいやいや……! そんな本格的巫女装束仕入れてきた時点でもう予想の遥か上ですんで! これ以上ヤバいニュースがあるってことでしょう!? 勘弁してくださいよ!!」
「いいや断るね。良いニュースかすごいニュース、どっちから聞きたいか答えるんだよオラッ。
「いやぁ……めっちゃ良い顔してるね……」
コンビニの駐車場に車を停め、観念したようにモリアキが
そんなおれと見事に反比例するように……モリアキの顔は不安そうな表情。ふふふ……そのどんより顔をスカッと快晴に変えてやるぜ。
「じゃあまあ、おれは我慢弱いので。もう二つ発表しちゃうね」
「えっ!? ちょっ、待っ」
「まず
「は!? 宮司さん……は!?」
「そして
「え!? ちょっ……先輩!? え、巫女さん……えっ!?」
「あー……ちなみにモリアキ氏。これ多分トドメになるんだけど……ノワね、ツルギの神様の
「ぇや!? なん、え……神、って…………ちょっ、もう頭痛…………ヴォェ」
「ふぉあ!? ちょっ……大丈夫?」
うおお、なんだかいきなり気分悪そう……もしかして風邪とか、あの悪名高い肺炎とかじゃないよな。念のために【
ちょっとカフェイン摂りすぎが気になるけど……それだって異常って域でもない。少し前の修羅場のときに無理して……翼を授かり過ぎたんだろうか。労ってやらねば。
ともあれ、彼に健康的被害もなさそうなので……落ち着いてきたら報告を再開しよう。
おれたちが初めて取ってきた、とびっきりの大型案件だ。きっと彼も喜んでくれるに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます