怖い乗り物

 北山麗子さんは同じ会社に勤める一個上の先輩で、とびきりの美人。美人というだけでなく、性格もいい。当然多くの男性からいいよられるわけだけど、未だその想いを成し遂げた者はいない。デートの誘いは概ね受けてくれるらしいけど、それ以上の関係には発展しないそうだ。

 僕も麗子さんに想いを寄せる一人。なんとかして付き合いたい。そう思った僕は、まず情報収集から始めた。麗子さんに告白して失敗した先輩社員に聞き込みをしたところ、皆が口を揃えて答えたのが、甘いものと絶叫マシンが好きというものだった。それで、皆デートで絶叫マシン巡りするわけだけど、男達は皆麗子さんより先に音を上げてしまう。そこで麗子さんは決まってこう言うそうだ。

「私を恐怖で震え上がらせる乗り物を教えてくれたら、付き合ってあ•げ•る」

 その情報を元に僕は作戦を立てた。結論から言ってしまうと、僕は見事麗子さんを射止めることができた。

 僕の手の内はこうだ。まずはデザートブッフェに連れていった。麗子さんはそこに並ぶ色とりどりのスイーツに目を輝かせた。

「瞬くんは女心をわかってるわね。でも、お付き合いするかどうかには無関係だからね」

「わかってます」


「あー、美味しかった。もうお腹いっぱい」麗子さんが満足そうに言う。

「瞬くん、このあとはやっぱり遊園地?」

「いえ、ここで大丈夫です」

「ここ?」


 僕はトートバッグからヘルスメーターを取り出して床に置いた。

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