第15話 ★スキル【獣神化】

 ハンターラビットのお墓は死体発見所に設置してたのもあり、薬草採取に行く時によく見かけた。


「もうちょっとで貯まるから、待っててね」


「後どれくらいだ?」


「後薬草採取二回くらいかな?」


「なんの話ー?」


「新しいスキルの獲得だよ。なー?」


「そんなところです。取得したら見せてあげますね?」


「楽しみにしていますよ」


 ミキリーさんが興味を引いたのか尋ねてくる。


 兄さんと一緒に獲得するまで秘密としたが、すぐに興味を失ったようだ。


 それよりも僕の稼ぎで食べる夕食のおかわりの方に興味が移る。


 ここ最近は安定して稼げてるので、ここ数日お腹いっぱい食べられているのだ。


 おかげで兄さん以外のパーティからの申請が多い程。


 兄さんはまだまだ僕が子供だからついていてくれるが、ミキリーさんに至っては、もう晩飯狙いで僕のパーティ申請を許可してる。


 ストックさんはミキリーさんが食べすぎてぶくぶく太らないかだけ心配していた。


 戦闘中あれだけ動き回ってるのもあって、そんなに太る様子は見られない。


 特に暑い季節にそこまで動き回っても気にしないのは、僕の【老廃物】除去効果が大きいみたい。


 むしろこれだけのクエスト発注が多いのだ。

 それというのもミキリーさんがあちこちで言いふらしてくれてるからというのもあった。


 おかげでスコアは上がらずお金だけが溜まってる。


 水路掃除ほどのスコア獲得エリアはそうそうないけど、念入りに掃除したのもあって、もうあの規模でスコア獲得できる場所は少ない。


 老廃物、スコアはすごい持ってかれるのに、獲得できるスコアはすごく少ないんだよね。


 汗に付着する菌とかだからわからなくもないんだけど。


 でも汗びっしょりかく環境下であって嬉しい効果だよね。


 そんなこんなであっという間に数日。

 目標のSスコアが貯まる。


 お墓の前でお祈りして、ついでに抽出を使うと。


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 <条件達成:ラビットソウルを獲得した>


 ★スキル/獣神化

 一時的にハンターラビットに変身する。

 変身中、ゴミ拾いスキルの使用不可。

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



「えっ」


「どうした?」


「いや、少し思ってたのと違ってて……」


「あのウサギの毛皮が無料に入手できるとかじゃないのか?」


「そういう系統じゃないねー。ここじゃ見せられないから宿に戻ってからね?」


「おう、今日の晩飯も期待してるぜ?」


「あはは」


 これは使い道に困る奴だぞ。

 まさかゴミ拾いとは別系統のスキルが手に入るなんて……


 ◇


 そして夜。

 お酒が入ってすっかり上機嫌な兄さんに、概要を話すとすっかり酔いが覚めた様な面持ちになる。


「マジか。よりによって変身スキル?」


「うん。ただでさえ、ここら辺で見かけたら討伐隊が組まれるモンスターなんだよね?」


「ああ。そして今、タイミングが悪いことに親父が出張ってきている。なんでも、純白の毛皮を王様に献上すればさぞかし箔がつくだろうと職人を呼びつけている。そしてさらに量をご所望だ。もし見つかったら捕獲されて剥製コースだな」


「でもそれって純白の毛皮を欲してるんでしょ? 通常のハンターラビットなら……」


「それを見極めるためにも一回変身してみろ。変身解除にどれくらいかかるかの検証も兼ねてな。その間部屋に誰も入れんから安心しとけ」


「わかった」


 兄さんに全幅の信頼を置いて、変身する。


 そこに現れたのは、ブカブカの服を纏う、純白の毛色のハンターラビットだった。


 野生種との違いは、二足歩行できて、さらには会話が通じることぐらいか。


「これは使用禁止だな」


 兄さんが僕の姿をまじまじみながらそう言う。


「そうだね、可能な限り使わないほうがよさそう」


 動きにくい、と言うのが最初に来る。


 でも体は羽が生えたように軽く、元の肉体より運動が得意そうな印象だ。


 しかし僕以上に警戒を強める兄さん。


「いや、絶対に使うな。捕まったら剥製コースどころか見せ物として奴隷コースが追加された。会話が通じるってのが何しろまずい。世の中には理解のできない変態が多いからな。買われた先で何を命令されるかわからんぞ? そして捕まったが最後。奴隷にされたら人間に戻っても見逃してくれない。くれぐれも変身するなよ?」


「ヒエッ」


 その念押しは注意というより半分以上脅しが含まれていた。


 変身時間は10分。

 短い様で長く、ここは兄さんの言葉を信じる方が良さそうだ。

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