マジカル☆カスミンの死神稼業(デスサイズ)

亜未田久志

第1話 イクシードデュエル


 俺はある日から「魔法少女」をやるハメになっちまった。

 それはとあるアプリ「イクシードデュエル」を起動した事に起因する。

 しかしそれは俺の不手際であり、この際、割愛する。

 それより現状だ。

 それは「魔魂まこん」と呼ばれる化け物。

 イクシードデュエルを起動した人間にしか知覚出来ない。

 それは人より数倍大きなアリクイのような姿であり、今、まさに少女を襲おうとしていた。

 俺は渋々、アプリを起動する。

『set up』

 コンマ一秒で変身は完了する。正直、このフリルいっぱいのドレス姿は好きではなかった。

 ただし武器だけは気に入っている。

 それは巨大な鎌、名前を「死神稼業デスサイズ」という。

 俺はそれを一思いに振るう。

 敵はそれを爪で弾く、しかし死神稼業デスサイズには第二形態が存在する。

 鎌が屹立し持ち手が砲塔になるのだ。

 射線を魔魂の頭に合わせて引き金を引く。

 頭を吹き飛ばされ霧散する化け物。

 あっけないものだ。イクシードデュエルに魔魂ポイントが貯まる。

 いったいこれはいつ使うのだろう? いつも疑問に思いながら貯めている。

 俺はその場を立ち去ろうとすると襲われていた少女が声をかけてきた。

「待ってくださいまし! アッシュグレーのウルフカットヘアーに黒曜石のようなツリ目で紅いフリルドレスに大鎌を持った魔法少女の貴女!」

 やけに具体的に俺を指してきた。

 そこまで指定されてしらばっくれるわけにもいかないので仕方なく振り返る。

「なn――グフォ!?」

 何か用かと聞く前に俺の懐に飛び込んできた少女。

「お慕いしたく思います!」

「……」

 はぁ、そう言われましても。

 ことわりゃいいのか?

「いや、いいから」

「いいのです! ただ好きでいさせてくださいまし!」

 重……。重いよ……。

 ていうか口調もおかしい。

「はぁ、勝手にすればもう会う事もないだろうし」

「あっ、イクシードデュエルの友達登録はしておきましたので」

「は?」

 このアプリそんな機能あったの? ていうかこいつも『起動者』だったの? じゃあなんで戦わなかったの? などなど疑問がいくつも湧き出た。

 起動者、イクシードデュエルを使っている異能力持ちの事、このアプリを使ったからと言って必ず起動者として覚醒するわけじゃない。ただのSNSアプリとして使っている者が大半だ。俺はただ変身アプリとしてしか使ってなかったが。

「あなた夜雨霞よあめかすみさんと仰るのですね」

「……あー」

 しまった。本名で登録していた。

 ネットリテラシーが疑われる。

「ではカスミンとお呼びしても?」

 距離の詰め方がエグい。

「俺、そろそろバイトの時間なんで……」

 さっさと帰りたかった。

「あらま、引き留めてごめんなさい、またイクシードデュエルで連絡しますわ」

 えぇ……嫌なんだけど。

 よくよくこの子の恰好を見る。

 金髪のロングヘアに碧眼、西洋人の端正な顔立ち、腰に剣を携えた王道ファンタジーの冒険者みたいな恰好をしている。職業は「剣士」か。

 イクシードデュエルで名前を確認する。ええと友達欄は……っと。

「アリア・ベルナデット」

「呼びまして!?」

「ごめんなんでもない」

 俺はそそくさとその場を後にする。

 アリアは幸いついて来る様子はなかった。

 しかし俺は思いもしなかったんだ。

 それ以来、が舞い込む事になるだなんて。

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