第25話 リリスとデート
リリスがブラッディを連れて行った場所は以外にも魔道具のお店だった。品ぞろえがよく、魔術書などもあるので子供の時からよく通っている場所である。現に店主は顔なじみの二人の顔を見ると勝手にしていけとばかりにうなずいて魔導書を読み始めている。
てっきりデートだと聞いていたので、けげんな顔をしているブラッディにリリスが真剣な顔で尋ねる。
「ジャスティス仮面様は魔法がお上手ですよね? 私にあう杖を選んでいただけないでしょうか?」
「別に構わないが……リリスは魔法使いになりたいのか?」
リリスも貴族のたしなみにとして魔法は学んでいる。そして、その非凡な才能に教師も驚きの声を上げているというのはよく耳に入ってくる話である。とはいえ、ブラッディとしてはあまり荒事の多い仕事にはつかないでほしいのだが……
「私もジャスティス仮面様やお義兄様のように誰かを守るだけの力が欲しいんです」
「君のことは俺が守るよ。それに、リリスはもう強い心を持っているだろう? 現にこの前だって友達をかばっていたと聞くぞ」
リリスの友人の二人からヘラ教徒相手にタンカを切ったと聞いて誇らしげに思っていたのだが、なぜか彼女は首を振った。
「違うんです、私はずるい女の子なんです。だって……ジャスティス仮面様が助けに来てくれるってわかっていたからがんばれたんです。ですが、私もいつの日かジャスティス仮面様やお義兄様のように人を救えるような人間になりたいんです。私はこのお二人に救われて変われたので……」
「リリス……」
ブラッディの彼女の言葉に思わず涙ぐみそうになる。原作ではだれも信用せずに、孤高のまま散っていた彼女が誰かのため役に立ちたいと言っているのが、そして、自分が少しでも推しに影響を与えていたのがうれしいのである。
そして、二人の話を聞いていた店主が一本の太い枝を置く。
「だったら、これだな。ブラッディ様の使用している杖と同じ樹木から作られた杖だ。いつかブラッディ様がリリス様にプレゼントしたいと言っていた品でな。ようやく探し出せたんだよ。事情はあんたのほうからブラッディ様に話しておいてくれるよな、ジャスティス仮面さんよ」
「お義兄様が……」
それはいつの日か彼女が王都の学校に行くときに送ろうと思っていた品だった。見つかればいいな程度だったが、店主は約束を覚えていてくれたらしい。
ただの枝だというのに握っただけで内包された魔力があふれ出してきてその枝の強さをリリスは実感する。
「ああ、ブラッディには俺のほうから言っておくよ」
「後のアクセサリーはあんたが選んでやりな。せっかくだからリリス様も大切な人に選んでもらったほうが嬉しいだろう?」
「「なっ」」
ニヤッと笑う店主の不意打ちにブラッディとリリスは顔を真っ赤にする。幼いころから二人をみてきた店主もまた、ブラッディがリリスを大事に思っていることも、リリスがブラッディに特別な気持ちを抱いていることも知っているのだ。
二人がどうなるかはわからない。だけど、幸せになってほしいと思い彼らをアシストしたのである。
「変なことをいわないでくれって、じゃあ、アクセサリーを選ぶぞ。これで杖の持つ方向性がかわるからな。たとえばこのフェニックスの羽をいれておけば魔力の消費が減るんだ」
「は、はい。それでは私は……」
そうして、二人で仲良くあーでもない、こーでもないと杖を作っているのを見て、店主は満足そうに見守るのだった。
「うふふ、素敵な杖を選んでくださってありがとうございます。ジャスティス仮面様」
「ああ、素晴らしい杖ができてよかったな。ちゃんと学びたいなら、ブラッディに頼めば多分魔法学校にも入学させてもらえると思うが……」
幸いにも魔法学校とナイトメア領はそこまで離れていないし、転移魔法の陣もある。何かあればすぐに助けに行くことは可能だ。それにゲームのメインキャラクターなどもいるのだ。
あまり気は進まないが、今のリリスならば彼らと仲良くなることもできるだろう。そうすれば自分よりも優秀な連中に守ってもらえるだろう。主人公だっているしな……
寂しい気持ちを抱きながらもリリスの幸せを祈るブラッディ。
「学校ですか……それまでにちゃんとしなきゃですね……」
リリスのことを思って提案したのだがなぜか彼女の表情は気が進まないのか寂しそうに見えた。そして、再びこちらを向いた彼女に目には何かを決意したように強い意志が宿っていた。
「ジャスティス仮面様……ちょうど小腹もすいてきましたし、ご飯にいきませんか?」
「ああ、それなら何個か候補を選んでおいたんだ」
「いえ、ジャスティス仮面様とどうしても行きたい店があるんです。」
珍しく意見を曲げないリリスに連れられて、向かった先はやたらとピンク色のお菓子の家みたいな外装のやたらと、ポップなカフェだった。あれ、なんかこんなお店ゲームでもあったような……とブラッディが何かをおもいだしそうになる。
そして、一歩そこに踏み入れると、さっそく歓迎の言葉で出迎えられる。
「いらっしゃいませ、カップル専用喫茶店「ラブラブランド」へ」
「あ、これ、デートイベントで使われる店じゃん」
たしかカップル専用のメニューしかない変わった店である。
まったく、リリスも背伸びしたい年ごろなんだなぁと思っているとなぜか、隣で「え……?」といって固まっていたのだった。
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