第18話 VSヘラ教徒

アンダーソン領の領主の屋敷にはブラッディも何度か訪れたことがあった。そのため、建物の構造は脳内に入っているので侵入自体は問題がないのだが……



「貴族の屋敷だから当たり前なのですが見張りがいますね……どうしますか? ご主人様の顔は知られているので、領主の屋敷に強引に入ったとなれば抗議が来るかもしれません」


 

 門や塀の周りを見張っている兵士たちを見て、眉を顰めるナツメ。



「ん? どうせ、今はジャスティス仮面なんだし、真っ向から行っても……」

「いえ、幻影魔法を使いましょう。お願いできますか?」



 仮面を軽くたたいてドヤ顔をするブラッディの言葉をナツメが強く遮りながら制止する。



「いや、でも……」

「マスター、考えてもみてください。リリス様にとっての正義の味方であるジャスティス仮面がご友人の家に部下に暴力をふるったとなれば、ショックを受けるのではないでしょうか?」

「確かに……リリスたんのジャスティス仮面へのイメージを損なうわけにはいかないな……『幻影』」



 ブラッディの言葉と共に、彼の手から光があふれ出して二人を包むとその姿が掻き消える。光の角度を変えてお互いは見えるが、他の人間からは不可視になったのである。



「さすがはブラッディ様、本来は苦手な光属性の魔法だというのに、すさまじい制御力ですね」

「そりゃあ、正義の味方は光属性って相場はきまっているんだ。無理やり覚えたんだよ」



 本来ナイトメア家は闇魔法の使い手であり、相反する光魔法とは相性が悪い。それでもなお覚えるという苦労を一切感じさせない。むしろ、リリスのために頑張ったのだと得意げである。

 そんな風に軽口を叩きながら足音を消して塀の前に行くと、ナツメがさっと飛び上がり、塀の上に着地する。そして、周囲を見回してからこっそりと服の中に仕込んでいたロープを落とす。

 まるで空中にいきなりロープが現れたように見えるが、ブラッディが触れると幻影がうつって即座に他の人間からは見えなくなる。そして、ロープを伝って屋敷へと侵入すると、何やら禍々しい気配を感じ、二人は顔を見合わせる。

 そして、そのままリリスを探そうと屋敷に侵入すると、法衣を身にまとった二人組が歩いてくる。



「なあ、聞いたかよ? 今日のお茶会にすさまじい魔力を持つ女がいたらしいぜ」

「ああ、ルック様がここの領主に取り入って魔力の高い貴族令嬢を選別しているんだろ。ようやく当たりが来たかな。これで巫女が見つかれば俺たちも……」

「マスター、落ち着いてください。このままあとを追っていた方がいいです」



 魔力が高い女という言葉にリリスを連想し、思わず襲い掛かろうとしたブラッディをナツメが抑える。彼女が危険な目にあっていたらと……我慢できなくなりそうだったのだ。



「ああ……そうだな。ありがとう」



 ナツメの言葉に深呼吸して精神を落ち着かせるブラッディ。



「リリス様が大事なのはわかります。だからこそ慎重に行きますよ」



 ナツメの言葉に従って二人のヘラ教徒の後をつけ、離れの一室へと続いた時だった。その奥にいる眼光の鋭い男が声を張り上げる。



「お前らなーに、お客さんをつれてきているんだ? 冥府の番犬よ、喰らいつくせ」

「え?」



 間の抜けた声をあげる部下をよそに、漆黒の闇で作られた狼がちらへと向かってくる。



「くっ、見抜いたか、光の盾よ!!」




 ブラッディがとっさに作り出した魔力の盾と幻影魔法が一瞬で喰らいつくされ、ジャスティス仮面たちの姿があらわになる。



「魔力を喰らうとは……なかなかやりますね」

「これは……司祭クラスだな……」


 

 思わぬ強敵の存在に驚きの声をあげるブラッディたちだったが、なぜか敵もまた驚きの表情をしているのに気づく。




「貴様……その姿……」

「おお、まさか、ナイトメア領以外にもジャスティ仮面の名が広まっているのか!!」

「パーティーでもないのに浮かれた格好をしやがって不審者か!!」

「ぶっ!!」



 露わになったジャスティ仮面の姿を見てドンびいた声をあげる眼光の鋭い男の言葉にしょぼんとするブラッディ。そして、その反応にわらいをこらえるナツメ。



「貴族の屋敷に忍び込んだ盗賊かなんかかぁ? 運が悪かったなぁ。今は取り込んでいるんだ。このヘラ教徒が司祭タルタロス様が速攻で殺してやるよ!!」

「この服装のかっこよさがわからないとは哀れな男だな!! 我が光魔法のさびとなるがいい!! エクスカリバー―!!」



 問答無用とばかりのドラゴンすらも一閃する光の剣の一撃が、タルタロスを襲い切り刻む……かに思われたが、煙が晴ると先ほどと同じ姿勢で立っているタルタロスは傷一つない。彼の周りの番犬が光を喰らったのである。



「ふははは、なかなかの光魔法だがその程度では俺には勝てんぞ」

「これがモブではない……司祭クラスの力か……そりゃあ強いよな、ボスキャラクラスの力だもんなぁ……」


 そうして、ジャスティス仮面たちとヘラ教徒の戦いがはじまるのだった。




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それではまた明日の更新で



カクヨムコンテストようのこちらも読んでくださるとうれしいです。



『せっかく嫌われ者の悪役領主に転生したので、ハーレム作って好き勝手生きることにした~なのに、なぜかシナリオ壊して世界を救っていたんだけど』


本人は好き勝手やっているのに、なぜか周りの評価があがっていく。悪役転生の勘違いものとなります。


https://kakuyomu.jp/works/16817330667726111803


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