第5話

 ここで、レコナイーズとヒポポパーラメンスの喧嘩する声が聞こえた。


「あたしは、山賊退治をしたいのですわっ!」


「それが、良くないという話だ!

この他人を冷ややかに挑発するところが、山賊退治に採用できんところ。

海賊退治か、空賊退治にしておくんだ」


「あたしは海賊退治や空賊退治の成績は、上から12位しかなくても、山賊退治だけ11位だったのですわよ!」


 ここで、トゥリッツさんが口をはさんだ。

 

「どうしたんだ?」


「あたしは山賊退治になりたいのに、ヒポポパーラメンスがだめって・・・」


「事情は把握してないが、ヒポポパーラメンスが言うなら・・・」


 トゥリッツさんは、考えこみながら話した。


「優秀な君には納得のできないアドバイスになるかもしれないが、山賊退治を候補から外して、宇宙賊を視野に入れるのは、どうか?」


 それを聞いたレコナイーズは、不思議そうな表情をしていた。


「宇宙賊なのですか?」


 宇宙賊とは、エリートだけがなれる宇宙専門の盗賊退治屋。

 

 レコナイーズは、そこまで優秀だったんだ。


「レコナイーズは、我ら研究員の間でも、宇宙賊退治は上位9位となる。

番号はもらえないが、他の退治屋よりも、もっと優秀な成績を残せる。

悪くない話では、ないか?」


「いいのです。

賛成なのですわ」


「その代わり、山賊退治からは採用されなくなるが、レコナイーズならきっと優位に立てると信じてるぞ」


「了解なのです。

では、試験をシーウ様と一緒に受けて来るのですわ」


 こうして、レコナイーズは笑顔で走り去った。


「本題に入るのだが、サランはヒポポパーラメンスとペアで、任務を行う」


 トゥリッツさんが言う、ヒポポパーラメンスと言うカバのぬいぐるみは、初対面のはずだが、なぜか知っている感じがした。

 まるで、夢で見たことが本当の出来事かのように・・・。


「妾は、その提案を辞退させてもらおう」


「何故?」


 トゥリッツさんが眉をひそめた。


「妾に、サランの護衛は務まらん。

そこで、考えた。

安寧秩序、意気消沈、一罰百戒の魔法を持つ方を相棒にするのは、どうか?」


「どうしたんだ、ヒポポパーラメンス。

話し合いにより、君がサランとの魔法相性がいいと言う結果となり、任命したのだ」


 トゥリッツさんはそう言うけど、できれば俺としても他のやつにしてほしい。

 なぜなら、俺はカバが苦手だからだ。

 本物のカバなんて、見てられない。

 それは、俺が漆器しっき覇業はぎょうとして生きていた時からそうだった。


 だから、カバ以外の生物にしてほしくて仕方がない。


 だから、俺はここで願った。

 カバ以外の生物が、相棒になることを。


「理由を聞かせてくれないか?」


「妾の魔法を知っていれば、想像がつくだろう?

ワープ、テレパシー、ループ。

この3つの魔法のみで、妾がサランのためにできることはなかった。

サランの身に、どんな危険があっても、助けられん。

そこで、考えた。

妾の次に数値がいい方を・・・」


「彼が使えるのは、安寧秩序、意気消沈、一罰百戒。

その言葉の意味、わかってるな?」


 俺は四字熟語には詳しくないけど、安寧秩序が平和的な意味で、意気消沈が落ち込むことで、一罰百戒が罰による成敗だっけ?

 そんな意味だったような?


「成績は落ちたとしても、サランの身の安全が優先事項。

妾は、傍観者にしかならん。

ならば、サラン、相棒を紹介したるが、どうだ?」


 ヒポポパーラメンスが俺に問いかけたけど、そんなことはカバから開放されるためには、迷うことじゃない。


「俺に、君たちが言う相棒を見せてくれないか?」


 俺は、トゥリッツさんとヒポポパーラメンスに案内された。

 誰が相棒になるんだろう?


 そして、俺は宙に浮くクジラのぬいぐるみを見た。



「彼の名は、ウェイオ」


 トゥリッツさんが、俺に目を向けながら話した。


「ウェイオ?」


「君の相棒だ。

君との魔法相性は、ヒポポパーラメンスの次にいいとされる」


「ワイをお呼びか?」


 ウェイオと言うクジラのぬいぐるみは、俺たちを見た。


「そして、今回はレコナイーズが山賊退治から外れたために、別の女性を任務に行かせる。

彼女は確か、一網打尽と隠忍自重、雲散霧消という魔法を持つ 


「俺、四字熟語詳しくない・・・」


「後に、彼女と合流することになるか、その時に魔法性質がわかるだろう。

彼女の相棒は、温厚篤実と夏炉冬扇と外柔内剛の魔法だ」


「またしても、四字熟語・・・」


 説明されても、俺はトゥリッツさんに言われてること、半分以上は理解してないと思う。


「ウェイオ、彼はサランだ。

これから、任務に同行だ」


「確か、ヒポポパーラメンスが一緒と聞いたが?」


「彼は、訳ありで辞退した。

代わりに、二番目に優秀なウェイオを選んだ」


「ヒポポパーラメンスは、こんないい機会を何故に自ら逃した?」


 ウェイオは、トゥリッツさんの次はヒポポパーラメンスを見ながら話した。


「それは妾のワープ、テレパシー、ループの魔法から詳しい察してほしい。

妾は、戦闘力もなく、無能なのだ」


 この説明だけで、事情の把握は難しいのでは?


「ワイも、どこまで貢献できるか・・・」


「貢献しなくてもよい。

任務を達成できれば、よいのだからな」


 俺は、ここで疑問に持つ。

 ヒポポパーラメンスは、いつループしたんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る