AI
近年、SiriやAlexaなどのAIが導入された製品が数多く作られている。iPhoneなどスマホにも内蔵されており、行動を学習する事でやって欲しい事や調べて欲しい事を代わりにやってくれる。ChatGPTなども話題となっており、今や、このようなAIを一度も使った事がないという人の方が少ないだろう。
様々な質問に答えてくれるAIだが、皆さんはこのAIに自分の寿命があとどのくらいか聞いたことはあるだろうか。
カナさんの通う学校で、AIに自分の寿命を聞くという遊びが流行っていた。AIがスマホの持ち主の健康状態などを見ているのか、人によって「あと、62年後です」とか「35年後です」などと返答が違い、誰が1番長生きなのかで盛り上がっていた。
カナさんは半信半疑だったものの、クラスで流行っている事に乗らないと空気が読めないヤツと思われるのもしゃくだった。まあゲームみたいなものでしょ、と試しにAIに聞いてみた。
「●●、私の寿命はあとどのくらい?」
AIが反応し、答えが返ってくる。
「明日です」
カナさんはこのAIの回答に驚いた。今までに聞いた友達の結果では、日単位の回答が来た人はいなかったのだ。それどころか10年未満の回答が来た人もいない。それもそうだ、みんな未成年。10年後でも20代だ。AIが自分達の年齢から回答を導き出しているなら、20代で死ぬと判定される事はあり得ない。
なんでこんな答えが…と狼狽したカナさんは、思わずスマホに向かって「どうすれば、もっと生きられるの?」と言った。すると、すぐにAIに反応があった。
「紙に『あなたの大切な人』『あなたの事を大切に思っている人』の名前を書いてください。それを神棚に並べて置き…(中略)…をすると、あなたはもっと生きる事ができます」
あまりに具体的な儀式のような事をさせる回答に、妙にリアリティを感じてしまった。本当に自分の身に何かあったらどうしよう、そんな焦りから、その夜、AIに言われた方法を実際に試し、眠りについた。
翌日、いつもの時間に目覚めたカナさんはいつも通り学校に行き、いつも通りに授業を受け、いつも通りに帰宅した。だが、特に何も起きなかった。その日を無事に過ごす事ができたカナさんは「AIに寿命なんてわかるわけないよね」と安心し、眠りについた。
翌朝、カナさんは大声で母親に起こされた。
「お父さんが……」
朝起きると、カナさんの父親が動かなくなっていたのだそうだ。急いで救急車を呼び、駆けつけた救急隊員が心臓マッサージなどをおこなったが、父親は亡くなった。
お通夜やお葬式が終わり一段落した頃、ふとカナさんは、自分が本当は死ぬはずだったのでは、という疑念が頭に浮かんだ。カナさんはあの儀式の時、『あなたの大切な人』に父親の名前を書いていたのだ。
もしかして、AIが言っていた儀式が実は別の人を身代わりにする呪いだったのでは?
そう考えてしまうと「自分が父親を殺してしまった」と後悔の念を拭い去れないのだという。
あれからカナさんは同じようにAIに寿命を聞いてみたが、何度聞いても「45年後です」などと普通の答えしか返ってこなかった。寿命を伸ばす方法を聞いても「それは私にはわかりません」としか答えない。2度と同じように「明日です」と返事をする事はなかった。
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