【第9話】最後の「会社員チャレンジ」
就労支援施設に通所し始めたはいいものの、実際蓋を開けると、障害者雇用での就労は一般就労よりも大幅に手取りの平均給与が低い現実を知ることとなる。
個人差はあれど、一人暮らしをしている自分にとって、それは到底安心して暮らしていけないものだった。
悩んだ挙句、数ヶ月無職生活を送ったのち、再び一般雇用で企業に就労することに決めた。少し体を休めたから大丈夫だろうと思ったものの、結局のところ根本的には何も解決していないので、やはりその職場も先の職場と同じような理由で長続きはしなかった。
就労支援施設に通った意味も、職を変えた意味も殆ど無く、結局同じことの繰り返し。
しまいには、過集中が度を過ぎて過労により職場で倒れ、救急車騒ぎを起こしてまたもや離職する羽目となる。
負のループで完全に八方塞がりだった。会社員として生きていくことはもう無理なのかもしれない。
そう半ば諦めていたとき、十代から付き合いのある友人から、うちの会社の中途採用を受けてみないか、という連絡をもらう。
長年の付き合いで自分のこともよく知っている友人だし、自分で見ず知らずの職場を探すよりも心なしか安心感があるな、というのが最初の感想だった。
よくよく話を聞いてみてもなんだか面白そうだし、何より「作る」ことに拘りがありそうな会社だなと興味を惹かれ、その後面接を受け、無事内定を貰った。
自分は転職回数も多い方だし技術的にもまだまだ不安があったが、自分がそれまで数年間取り組んできた仕事の実績が評価されたようだった。
一筋縄にいかない道を歩んできたが、それでも実直に作ってきたもので評価してもらえたことが嬉しくて、即座に内定を承諾した。それが今の職場だ。
しかし私はこの時点で心に決めていた。
「これが最後の会社員チャレンジだ」と。もし次がダメだったら、もう会社員として一般就労することは諦めようと心に決めていた。それくらい自分の能力に限界を感じていたのは本音だ。
しかし同時に、自分のこの凸凹能力でどこまでやれるのか、という本当の限界を知りたくなったのもまた本音である。
そんなある種の覚悟を持って、私は再び新たな環境で働き始めた。つい一年前のことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます