#2 私がアイドルを目指す理由
転生してから1週間がたった。
最初は胸が重かったり股間の違和感がすごかったけどさすがにもう慣れた。
それにしても…大きい胸って邪魔なんだね…肩が凝る……。
今日は4月6日。
明日はいよいよ登校日。
今の私の見た目は転生した頃とはまるで別人のようになった。
さすがに中学校にメイクはしていけないけどそれでも十分なくらい垢抜けすることができた。
多分クラスだと一番かわいいと思う。ナルシストって思われるかもしれないけどアイドルになるんだからこのぐらいの気持ちでやっていかないとね。
ちなみに今は夕方の18時、もうそろそろ明日の準備をしようかな…!
「持ち物はリュックと筆記用具とクリアファイルっと~ふんふふ~ん」
「あら?海羽ったらテンション高いわね~?」
……え?
「お、お母さん?いつのまに帰ってきてたの?」
「今さっきよ、開けた時に海羽が鼻歌を歌ってるのが聞こえたからそっとね…ふふ」
恥ずかしいところを見られた…お母さんも人が悪いね…
「ひどいよお母さん…盗み聞きするなんて……」
「ふふふ、ごめんなさいね、だって海羽が鼻歌を歌ってるのなんてはじめて聞いたんだもの。うれしくて」
「えっ…?」
そうだった…私が転生してくる前の海羽ちゃんは暗くて鼻歌とか歌うタイプの子じゃなかった。
「ようやく海羽が生きるのは楽しいって思えたのかなって、ずっと死にたいって言ってたから…」
え……私は来る前はそんなことを思ってたの?海羽ちゃん…
「私たちは、ずっとなにか海羽にしてあげれることはないかなって思ってたの。でもうちは貧乏だから、ほかの女の子みたいにかわいい服だったり、そういうのを買ってあげられなかった…」
私はお母さんの思いを全然知らなかった。
「だから…せめて愛はいっぱいあげようって思ったの。だけどそれでも海羽は明るくならなかった。それなのに今、こんなにも楽しそうに学校に行く準備をしてるのがうれしくて……」
私は思わずお母さんに抱き着いた。
「み、海羽……?」
「…お母さんありがとう…私はね、今、幸せだよ。お母さんとお父さんといられて、本当に…幸せだよ」
私はまだお母さんたちと家族になってたったの1週間しかたってないけどそれでもわかる、どれだけこのお母さんが私(海羽)のことを大切に思っているか。
私が転生する前の海羽ちゃんの記憶の中にお母さんが一生懸命海羽ちゃんに話しかけたりしているところがあった。
それにはお母さんがどうにかして海羽ちゃんを幸せにしてあげたいという思いが込められていた。
だから
「お母さん。これから私は、もっと幸せになるよ。だからね…これからも見ててほしい」
「海羽……うん…お母さん見てるからね…!」
私は決めた……
時は進んで夜――――――
お父さんも帰ってきて今はみんなで食卓を囲んでいる。
私は今日、二人にアイドルになりたいと告げる…。
多分反対されると思うけど…アイドルになりたい…
「あのねお父さんお母さん…」
「ん?どうした?海羽」
「どうかしたの?」
私は覚悟を決めた。
「わたし、アイドルになりたい…」
「「え…?」」
「急に驚いたと思う。だけどこれは私の一生のお願い。おねがい…私にアイドルを目指させて…!」
私は怖くなって下を向いてしまった。
ただ、二人の口から出た言葉は海羽の予想を反する言葉だった。
「いいぞ」「いいわよ」
「え…?いまなんて…」
今、お母さんたちなんていった?私の聞き間違い…?
「ふふ、聞こえなかったの?いいわよって言ったのよ」
お母さんはそういって柔らかく、そして優しく私に向かって微笑んだ。
「海羽が自分からなにかをしたいって言ったのは初めてだからな!俺たちは応援するのみだ!」
お父さんは力強く、そして優しく私に笑いかけた。
私は涙をこらえられなかった。お母さんとお父さんがこんなにも私…海羽のことを思ってくれて、こらえられるわけがなかった。
ぼくは、ただ海羽の魂に乗り移っただけの人間だ。
だけど…たとえ私がほんとうの海羽じゃなくても…海羽の魂に入り込んでしまっただけの別人でも…。
二人を幸せにすることはできる………
そう……
私はアイドルになって二人を幸せにする。
それが私のこれからの目標であり夢
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