妻が不倫していることを俺は知っていた
ぱぴっぷ
不倫の発覚 1
登場人物
夫 地元で工務店を営む父の後を継いだ 二十四歳
妻 旧姓
◇◇◇
妻の愛梨と出会ったのは中学三年生の頃。
あるきっかけで話しかけ、のちに同じ高校に進学するということを知り仲良くなった。
その後、高校に入学して二ヶ月が経った頃、告白して付き合うこととなる。
毎日のように一緒に居て、あちこち遊びにも行ったりと周りにも冷やかされるくらい仲が良かった俺達。
だが高校卒業直後の三月の初め、俺達は別れる事となった。
俺は地元で就職、愛梨は夢のために都会にある専門学校へと進学することが決まっていて遠距離恋愛になると思い、俺から別れを告げた。
あの時の事は今でも悔やんでいるが、あの時のガキだった自分にはきっと耐えられなかったんだろうと今ではそう思っている。
そして二年後、二十歳を迎えた記念にと開かれた同窓会で愛梨と再会。
お互いに過去を引きずったままの俺達だったが、色々とあってしばらくしてから復縁して、そして一年後に結婚した。
稼ぎも少なく二人とも仕事に忙しかったが、それでも支え合い楽しくやってきたと思う。
だが結婚して三年経った今、俺は妻の愛梨を不信感を抱いている。
妻の愛梨の仕事は映像関係のデザイナーで、基本は在宅での仕事のはずなのに、二ヶ月前くらいから週に一度、打ち合わせと言って外出するようになった。
大きな仕事が入って直接打ち合わせする必要がある、と言う愛梨の言葉を信じ応援していたのだが、この頃から何となく愛梨の雰囲気が変わってきたと感じるようになってきた。
多分、俺にしか分からないような些細な変化なのだろうが、疑い始めてしまった俺には愛梨に対しての不信感が募るばかり。
そんな中、愛梨はいつも以上に甘えてくるようになった。
週に一度の外出をした週末なんかは特に。
夫婦なのだからもちろん夜の生活もあるのだが、ここ最近は週末になると愛梨から求めてくる事が多い。
疑いたくはなかったが、こんなに積極的に求められると余計に不信感が募り『浮気』の二文字が頭の中をよぎった。
ただ、問い詰める事も出来ず、スマホを覗く勇気も出ない俺は、モヤモヤとしながらも悟られないよう普通に振る舞い過ごしていたのだが、仕事中『浮気調査』という広告を見て、悩んだ末に興信所に依頼してみることにした。
週に一度、出かける曜日は決まっていたので思ったほどの金額は取られなかったが少なくない金額を支払い、そして今日……
調査結果の入った封筒を受け取った。
結果は黒…… 愛梨は打ち合わせと言いながら、実は男と会っていたのだ。
ただ、肉体関係があるかまでは確認出来ず、引き続き調査をするか聞かれたのだが、俺はショックを受け、何も答えられずに興信所から封筒だけを受け取り帰宅したのだが……
「おかえり、シュウ」
いつもと変わらない笑顔で出迎えてくれる愛梨に、俺はどうしていいか分からなくなってしまった。
食事中もずっと笑顔で話しかけてきて、気を落ち着けようとリビングでくつろいでいる時もくっつくくらいの距離で隣に座り色々と話しかけてくる、だが頭の中が混乱している俺には話の内容がほとんど入って来ない。
そんな俺の様子に気付いたのか、愛梨が俺のおでこに手を当ててきた。
「どうしたのシュウ、具合でも悪いの?」
……お前のせいだ、とも言えず笑って誤魔化したが、心配しているのか頻りに俺の様子を伺う愛梨に少し嫌気がさして、その日は早めにベッドに入ることにした。
だけど目を閉じれば、興信所で見た愛梨が男と手を繋いで歩いている写真を思い出してしまって、なかなか眠りにつけない。
しかし興信所っていうのは凄い。
相手の名前や職業までも調査で分かってしまうんだから。
愛梨が会っていた男は、愛梨の専門学校時代の彼氏、いわゆる元カレってやつだった。
専門学校時代に彼氏が居た事すら初耳だし、その元カレと週に一度密会していた事が俺の中で余計にショックだったのかもしれない。
胃がムカムカして気持ち悪い中、無理矢理食事を詰め込んだせいか吐き気がするし、頭はなんだかフワフワとして、現実なのかも曖昧な気分だ。
「……シュウ、まだ起きてたの?」
しばらくすると寝室に愛梨が入ってきて、心配そうな顔で声をかけてきた。
「……ああ、ちょっと胃がムカムカしてな、調子悪いのに食べ過ぎちゃったかな、あははっ」
「大丈夫? ……今、胃薬持ってくるから待ってて」
変わらないんだよ…… 本気で心配しているのが伝わるから、余計に分からなくなる。
どうして内緒で元カレと会ってるんだ?
俺の事が嫌いになった、とかの方が分かりやすくて今の気分的にも助かるんだが。
分からなくてモヤモヤして、不安になる。
もし愛梨に俺の事が嫌いになったから別れようと言われたら? だからといって元カレとは遊びだから別れないでと言われたら? ……どうすればいいんだよ、俺は。
そもそも浮気なのかすらも分からない状況だ、本当に仕事の打ち合わせかもしれない。
考えれば考えるほど分からなくなり、気分も悪くなっていく。
「胃薬持ってきたよ…… シュウ、大丈夫? やっぱり忙しくて無理してるんじゃない?」
「大丈夫だよ、明日も早いし薬を飲んだら寝るから」
「そう…… 無理しないでね?」
……今、俺に負担をかけているのは愛梨の隠し事のせいなんだがな。
そんな事を言えるはずもなく、その日は無理矢理目を閉じて眠りにつけるよう努力したが、浅い眠りを繰り返しスッキリしないまま目覚めて仕事に向かった。
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