ボーイミーツガール〜押し入れから推し編〜
川埜榮娜
第1話 推し様とは会話も難しい
どうもはじめまして、私は
名前はどこぞの少女漫画のキャラみたいですが、見た目はごく普通の……いや嘘です。ちょっと身長が高めで男勝りな感じで、黙っていれば冷たい美男子のようだと、学生時代は女子からキャーキャー言われちゃう感じのそっち系の女子です。
そんな男勝りな私なので、男に興味が無いと思われがちなのですが、そんなことはなく、彼氏はいませんが
推し様といっても実在する人物ではなく、某ゲームのキャラです。
はい、2次元で、聖騎士様です。
名前はエヴァン様といいます。
聖騎士という役職についてるだけあって、誠実で強くて格好良くて……。
はぁぁぁぁ。御姿を想像しただけでうっとり。想像だけで何時間でも時間を潰せます。
しかも素敵な御姿だけでなく、声、声も素晴らしいのです。
大好きな声優さんが
ところで、何故こんな説明から始まったのかと言うと……。
「申し訳ありませんが、ここは……何処でしょうか?」
押し入れの扉から、超絶美形で
えっ? 今、開けたの虹色の扉だった? 確定ガチャ??
えっ? ガチャじゃないの? 推し様が押し入れから出てきたって親父ギャグ?
いや、それにしても、ほんと、何だこれ。
2次元が3次元になっても、変わりなく格好良いなおい。格好良いどころじゃないな、美しいな。光り輝いてるな。こんな御姿、
それにしても、何その綺麗な瞳。切れ長で金色の瞳だよ。金だよ金。キラッキラだよ。
さらに何そのサラッサラの金髪。風がふいたら髪もキラキラ光りそうだね。
長髪キャラはそんな好きじゃなかったけど、エヴァン様が長髪だから、関係なくなっちゃったよ。っていうか、今や長髪が好物だよ。
そして、何その鎧を着ていてもわかるほど
…………。
はあぁぁぁぁっっ?!?!
推しっっ!! 推し様が目の前に居るぅっっっ!!!!
「えっ? これは夢??」
「多分夢では無いと思いますが」
私の大きな独り言に、
ひゃぁ。美声っ美声だっ。えぇー、生の音声凄っ。やだっやばっ。まじか。美しすぎるだろ。えっ? これも
あまりの驚きで、スンッと無表情になる私。
「ふむ、どうやら私は異世界へ来てしまったようですね」
おっふ、ここが異世界って理解してるんだ?
まぁ、異世界っていうより、次元を超えてきてるんだけどね。2次元から3次元だからね。
てかエヴァン様がやったわけじゃないのかな? よくある神様的な何かが、死んでしまった人を転生させたり……ってそれだとエヴァン様が死んでるじゃん?!
違う違う、エヴァン様はエヴァン様の姿をしたままここに居るということは、勇者としてこちらへ召喚された的な……。いや、この世界に勇者は必要ではないから、そうじゃないよね。
……とりあえず、わからないことだらけだし、エヴァン様と色々話したほうが良さげ?
……しかし、推しのエヴァン様と話す……だと? いや、無理だわ。既に今、地べたに這いつくばって、ははぁーって拝み倒したいぐらいの気分なのに、普通に会話ができる気がしないわ。
「先程から心此処にあらずですが、大丈夫でしょうか? やはり私が突然現れたので混乱していらっしゃいますよね?」
なっなっなっなんとっ! 自分も訳わからん状態だろうに、こちらに気を配れる心優しきエヴァン様!
はぁ、ヤバい。生の声が尊すぎで心臓が苦しくなってきた。いや、もうそろそろ死ぬかもしれない。こんな生の美声を、こんな距離で聞いてたら、耳が、私の耳が、耐えられなくなって、鼓膜破れて死ぬわ。
だがっ、最期に聞いた声が、推し様の美声ならば悔いはなしっ!
「えーと、大丈夫ですか?」
昔からの癖で、考え込むと表情も雰囲気も、全てが無になっていたであろう私に、エヴァン様はそう言いながら、私の頭にポンっと手を置いて優しく撫でた。
ーーーーっ?!!!!(声にならない叫び)
はっ? 何? 今何がおきたっ?! えっ? 私の頭に推し様の手が、撫でた? 手が私の頭にポンって、手がポンって? 頭撫でたっ? えぇぇぇぇっ!?
「ふぇ? わたっ、わたたたっ、あたっ、あたま? てててて手が、手がっ?」
驚きすぎて、もはやケンシ〇ウ並みの言葉しか話せなくなった私の様子を見てエヴァン様が笑った。
「ふふっ。あっ、すみません、貴方が可愛らしいので、つい笑ってしまいました」
はうぅぅ、笑顔が素敵すぎて脳みそ溶けそう。はぁ……とりあえず拝んでもいいですか?
はぁ、ほんと顔が良い。多分ゲーム通りなら性格も良いはず。そして実物を見ると、背も高いし
そして、推し様に可愛いとか言われて嬉しいけど、お世辞なのは分かってます。私可愛くないので。どちらかというと格好良いので。(おい)
よし、なんかどうでもいい事考えてたら、ちょっと落ち着いてきたし、会話ができるかも。とりあえず、私が知っている事を伝えよう。
「あの、私、あなたのことを知っています」
その一言を言った瞬間、エヴァン様が驚いた顔をしてから私の手をとった。
「それは本当ですか?!」
おおおおおおおおっ推し様の手ぇぇぇぇっっ!!!
騎士だから剣だこがあってゴツくて、こんな美しいのにちゃんと男って感じ! 私も手が大きい方なんだけど、包みこまれてるっ! 包みこまれてるぅぅぅ!
そう、エヴァン様は両手で私の右手を包みこんでいるのだ。
ぎゃーっ、もう手を洗えないどころか、我が右手は、このまま封印の道を辿るであろう……うん。
「あっ! すみません、つい手を……あぁ、美しい手ですね」
エヴァン様は手を取られた瞬間に、ビクッと反応した私に気付いて、包みこんだ手をそっと開き、キラキラな顔面でそんな事を言い出した。
「ひゅっ………………」
あまりに美しい顔面が近くにあることに気づき、息をすることを忘れた私は、そのまま固まってしまった。
「私を知っているとのことですが、詳しくお話を聞かせてもらってもよろしいですか?」
…………え? 何?
おっといけない、ちょっと気絶しかけてた。
「あっ、はい。分かることなら答えますので、何でも聞いて下さい」
とりあえず心を強く持って、気を確かに、大丈夫、大丈夫。
目の前に、ただのイケメンでイケボな推し様が居るだけだよ。
心で深呼吸を、すーはーすーはー。
「では、あなたのお名前は何というのでしょうか?」
「えっ?」
今までの流れから、私の名前って関係あるのか? ……まぁいいか。
「
「アヤメ……あなたにお似合いの、素敵な名前ですね」
そうかな? 私の見た目には似合わない名前だと思うけど。
「貴方はエヴァン様ですよね?」
「本当に私を知っているんですね!! やはり……」
はぅっ。キラッキラの笑顔をこちらに向けないで。ホント心臓に悪いからー。そして『やはり』って何?
「あっ、実は私の世界で、異世界へ行ってきたという人間が数人居るのです。そのうちの何人かが、自分の事を知っている人物に会ったと言っていたのです」
えぇぇっ! もしかしてその人達、エヴァン様以外のURキャラか?!
あっ、エヴァン様がいらっしゃるゲームは、昔からあるスマホのカードバトルゲームで、ガチャやイベントでキャラをゲットできるんだけど、レア度が最高のUR……ウルトラレアというものがあるのだ。(因みに声優さんがしゃべるのはこのURだけ)
勿論エヴァン様もそれなんだけど、そのキャラ達は揃いも揃ってイケメンなのだ。
他のキャラの3次元バージョンもちょっと見たいな……。
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