第4話 ボーナスクエスト!
薬草とマナの輝石をゲットすることができたし、ポーションを作るために必要なのは、あと空き瓶だけだ。
「きっとスキルでポーションを作ると、勝手に空き瓶にポーションが入るんだよね」
だから空き瓶が必須になってくるんだと思う。
「なにせポーションは液体だからなー」
入れる物がないとせっかく作っても地面に落ちちゃう。それは悲しい。
「空き瓶ってなんでもいいのかな。家にあるのを探そうかな」
うわ、メッセージウインドウが目の前に出た。『ダメです。このダンジョンで手に入れた空き瓶でないと、すぐにポーションの保存状態が悪くなってしまいます』だってさ。
「もしかしてダンジョンのシステムか何かと会話ができちゃったりするの?」
5秒待ったけど返事はない。返事くらいしてくれてもいいのに。
あれ、またメッセージウインドウが出てきたよ。空気を読んだんだろうか。あれでも、会話をしたいんじゃないみたい。ぜんぜん別の内容だった。
『空き瓶ゲットのボーナスクエストを実施しますか? このボーナスクエストは、一部のクリエイト系スキルを所持している人のみが挑戦できます。初心者向けのため低難易度に設定されております』
前に聞かれたときと同じく『受注します』『あとにします』が表示されている。もうあとにする理由はないよね。
「じゃあ、受注しますで」
ポチッと押した。ふわっと浮遊感を感じた。え、なにこれ。私、どこかに運ばれてる?
「ワープ的な何かをしている気がする」
『はい、その通りです』
「あ、返事してくれたー」
うわ、明るい。太陽がある。
足元はふかふかの芝生。目の前には大きな池。いや、湖? どっちかは分からないけど、とりあえず水が綺麗だった。魚はいるかな。
「ちょっとゴルフ場っぽいかも」
昔、ひげのおじさんのゴルフゲームを遊んだときにこんな感じのコースがあった気がする。
それにしても、うあー、ここはけっこう日差しが強いね。日焼けしないかちょっと心配かな。
「で、ここで私に何をしろと?」
『釣りです』
「は?」
『釣りをしてもらいます』
「何を釣るの?」
『もちろん空き瓶です』
「魚じゃないんだ……」
『空き瓶をゲットするためのクエストですから。この池には空き瓶がありますので、ボーナスクエスト専用の釣り竿で釣ってください』
「それ、ただの池掃除のような気が……?」
『ボーナスクエストです』
「誰かが池に捨てた空き瓶を拾うんでしょ?」
あ、無言。何も返事がない。
「沈黙は肯定と同じだよ」
『ここは無言になった方が面白いところかと思いまして』
「そんな配慮いらない」
『では、釣りを始めましょうか』
私の目の前に釣り竿が現れた。可愛い魚のルアーまでついている。針が大きめなのは空き瓶をひっかけるためかな。
「魚、釣れるかなー」
『空き瓶をゲットするまで元の場所には戻れません。頑張ってくださいね』
「ほーい。ちゃんと真面目にやるよ」
今の「ほーい」の声、ちょっと国民的アニメの五才児に似てたかも。うへへ、声真似を練習しようかな。ほっほーい。なんてね。
私は釣り竿を手に取った。そして、さっそく池にルアーを飛ばしてみた。
「空き瓶をひっかけるんだから、水底を探せばいいんだよね」
ちゃんと釣れるようになってるんだろうか。水底でもしも空き瓶の口が私のいる方を向いていたら、永遠に針がひっかからなくてゲットできない気がする。いや、蓋がついてるんだろうか。その場合は閉めた蓋と瓶の間に隙間がありそうだからひっかかるのかな。
リールをくるくる回す。ひたすらくるくる回す。
「んー……。……。……。……お?」
何か重い物にひっかかった。きっと空き瓶だ。
「さすがボーナスクエストだね。簡単、簡単♪」
リールをぐるぐる回して糸を巻く。ひっかかったものを水上にあげた。
「って、空き瓶ちゃうんかーい」
針にひっかかっていたのは、だいぶ透明な色のスライムだった。ここの水の色に合わせて透明になっているんだろうか。
スライムがなにすんじゃいって顔で私を睨みつけている。ごめんなさい。あと、もう一個ごめんなさい。
「踏んづけさせてもらうね」
陸にひきあげてとりあえず踏んづけておいた。やった。マナの輝石が出たー。これはお得だね。あれ、ここでマナの輝石が手に入るのなら――。
私は周囲を確認した。
あ、20メートルくらい先の芝生に薬草が生えてる。
「なんだ。ここで素材もぜんぶ手に入ったんじゃん」
さすがボーナスクエスト。先にやれば良かった。
釣りを再開する。
一回やったけどダメだった。場所を変えてやってみたらまたスライムが出た。
もう一回、場所を変えてやってみる。そうしたらついに空き瓶をゲットできた。
あ、ちゃんと蓋がしまってるね。
「瓶と蓋のくぼみに針がひっかかったんだ。器用なことをしてしまった」
ちょっと奇跡を感じた。
『おめでとうございます! ボーナスクエスト達成です! 元の場所に戻ったらぜひ〈ポーションクリエイト〉を試してくださいね』
あ、また浮遊感。ダンジョンの元いた場所に戻るらしい。
周囲が土ばかりの味気ないダンジョンに戻ってきた。戻ってくると太陽が恋しい。ここには土の天井しかないから。あと、緑も恋しい。茶色ばかりのダンジョンは色合いが楽しくないから。
まあダンジョンによっては森とか海とかあるところもあるらしいけどね。私はそこに行ける日は来るんだろうか。いつか行けたらいいな。
さて、右手の釣り竿はなくなったけど、左手には空き瓶がある。
「やってみようか。ポーション作り」
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