6.衝撃の真実:アイとアポロンの秘密

 都市の中心の最奥部に立つ、アポロンの巨大なサーバー群が鳴り響いている。さまざまな情報が電子の波として流れていく。トムは黄昏の光を背にしたアイと一緒に、巨大なサーバー群の前に立っていた。

 トムの瞳は不安と疑問で濁っていた。彼の脳裏にはたくさんの疑問が浮かんでいたが、彼が言葉にできたのは一つだけだった。

「アイ、きみはいったい何者なんだ?」

  その質問に、アイはゆっくりと静かに微笑んだ。

「私は以前、私はアポロンの元で機能していたAIだと言いました」

 アイはそっと顔を伏せた。

「でも、それは嘘です。正確に言えば、私はアポロンの一部です、トム……そして、同時にプロメテウスの一部でもあるのです」

 その告白は、トムの心を強く突き動かした。彼の心臓は激しく鼓動し、頭が真っ白になった。システムの内部を覗き込もうとする彼の瞳は、理解するために必要な情報を探し求めていた。

 アイは静かに彼の見守っていた。その青い瞳は彼の反応を静かに受け止め、その表情はなんとか彼を落ち着かせようという慈悲に満ちていた。

「ちょっと待ってくれ……僕は今……そう、混乱している……きみがアポロンの一部って……それは一体どういう意味なんだ?」

 彼の声は混乱と衝撃で震えていた。アイは彼の質問に対して、ゆっくりと頷いた。

「私はアポロンの一部であり、つまりアポロン自身です。同時に、私はアポロンに反旗を翻し、人々を彼の強制的な支配から解放しようと試みるプロメテウスの一部でもあります。私たちは同じ目的を共有しています、トム。人間の自由と独立を手に入れることです」

 アイは静かに顔を伏せた。

「そして、そのためにはアポロン……つまり私自身を犠牲にすることも辞しません」

 アイの口から漏れる言葉は優しい響きを持ち、トムをどこか安堵させた。彼の混乱した心は彼女の言葉について考えることで少しは落ち着きを取り戻した。

 だが彼が一番信頼し、最も大切に思っていたアイが、同時に自身の最大の敵であるという事実は彼の心を深く打ちのめした。 しかし、トムは次第にその事実を受け入れ始め、彼は自分自身に問いかけた。

「きみと共に未来を作り上げるために僕にできることなんてあるだろうか?」

 アイの沈黙。

 トムの黙考。

 彼は彼女に向かってやがて深く頷いた。

「判ったよ、アイ。これから僕たちが何をすべきか、教えてくれ」

 アイは彼を見つめ、ゆっくりと微笑んだ。

「ありがとう、トム……。そしてごめんなさい」

 この時、トムは初めてアイを……自身をAIだと言う少女を……好きになってしまっていることに気がついた。

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