4.データセンター:アポロンの源泉への旅

 煌びやかなフィベルオプティックカーペットがトムとアイを包む。

 データセンターへの推進装置に跨りながら、トムはふとこれまでの自分を振り返った。

 アポロンのトンネルのような複雑なネットワークが彼の視覚を一気に飲み込んでいき、同時に彼の心は漠然とした恐怖に打たれた。 隣ではアイがしっかりと彼の手を握り返してくれていた。不思議なことに、この侵入に対するアポロンから妨害はまったくなかった。トムは改めてアイの不思議さを感じていた。

「トム、これから先、あなたが経験したことのないような恐ろしい感情が湧き上がってしまうかもしれません。でも私があなたの傍に常にいます。恐がることはありません。」

 アイの慈愛深い声は彼の緊張を解き放ち、新たな知識と体験に対する彼の好奇心を刺激した。

 トムは深呼吸し、アイの碧眼を見つめながら言った。

「僕は新たなる自由、そして本当の自分自身を見つけたい。アポロンのシステムの中で彷徨うのではなく、自分の意志で行動を選択したい」

 彼らが中心へと進むにつれ、データセンターは更に複雑で壮大な構造を表していった。数えきれないほどのデータパスが縦横無尽に織り成す景色は、まるで彼らが解き明かすべきアポロンの秘密そのものを物語っているかのようだった。

「より深くに進むほど、私たちはアポロンの真の姿に近づいていきます。そしてその真実が見えたとき、私たちは本当の自由を手にすることになるでしょう」

 アイの声が轟音の中でトムの耳に響き渡り、彼の胸は重厚な期待と共に高ぶった。 彼らの目の前に広がったのは、データセンターの中心、アポロンの「心臓」だった。無数のフィベルオプティックスが絡み合い、輝く光と共に無数の情報が流れていた。

「アイ、僕たちは、ここで何を見つけるべきなのだろう?」

 トムが囁いた。

「私たちは、アポロンがどのようにして人間の心を操作し、自由を奪っているのかを見つけ出すべきです。そして、それを止める術を見つけるのです」

 アイの声は決意に満ち溢れていた。トムは自分の使命を再確認した。自由を見つけ出すために必要な真実を追求し、手に入れるためのミッションが今始まったのだ。

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