第26話、Same dream, Same way
その大判サイズの写真に、彼は写っていなかった。アメリカにある一軒家。大きな掃き出し窓からは、静かに月光が降り注ぎ、リビングにはロッキングチェアが一脚。
その横のテーブルには芳醇な香りだが癖のないテネシーウイスキーが注がれた、氷の入っていないロックグラスが置かれている。
From imagination and the chain of freedom
幾千もの夢物語が積み重なるような、虫の囁きと緑の匂い。太陽からの反射光は優しく世界を照らし、まるでアメリカ版のアラビアンナイトのような幻想的な月夜にシャッターが押された。
Not a destination just a place where I can be
サングラスに帽子にマスクを付けた彼が街中を歩いていた。外出時はマスクを付けているのが当たり前になったこの国。ようやく彼は、外出する自由を取り戻した。
彼はアメリカでの成功を目標にはしていた。確かに彼のデザインはアメリカでも好評ではあったが、それは単なる一設計者としての評価を出ることがなかった。
What I want. And what I need.
彼への評価は「どこかでみたデザイン」。今まで、それは「リスペクト」と見做されていたが、アメリカにおいては「模倣」となった。
「そんなに気にすることないと思うけどね。言いたい奴には言わしておけばいいのに」「コンペ5回連続落選ですよ。よかったのは最初だけ。あとは誰も来ませんでした」「でも、今回は勝てたじゃない」「あなたがいたからです。俺の中をあなたが彩ってくれないと破れないんです。殻が」「え、俺、そんなになんか危険なの?」「あなたの描いたデザインが、俺の中身を特別にする魔法をかけてくれてるんです」
彼は朗らかに笑って、隣にいる誰よりも敬愛している相棒に向かって、こう書き残した。
Its the same thing Same dream. Same destination.
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