第24話、バイバイ、嘘つき

本屋入って正面の特設コーナー。今月発売の写真集が特集されており、彼のインタビュー映像が流れている。インタビュー映像では赤チェックのネルシャツにタイトなジーンズを着用した彼が、白い木製の椅子に座りインタビューに答えていた。


ギターを背負った男性2人が、その映像を見て話をしている。


「この人、なんかパクリばっかでつまんね?」「そう?どの辺り?」「この部分とかさ」「元ネタは?それだけ?」「え?お前、細かくない?全体的にパクリなんだよ」「お前さ、ミートソースはボロネーゼと別物って言ってたよな?」「は?意味わかんね?」「いや、同じだろ。肉じゃがとカレーでもいいけど」「それは違うだろ?いいから、パクリでダセーの」「お前にとってはな」


画面には白からベージュのグラデーションとアクセントのパイン材で、明るさを全面に押し出したリビングが映り、その大きな掃き出し窓からは庭先の緑が、彼の背景として記録されていた。


内装工事終了後の新築のお店。まだ何も入っていない建物内で2人の男性が話をしている。


「この内装ってさ、すごいよね」「そう?そう言って貰えると嬉しいな」「うん。今回のイメージは人が集まる公会堂とか、硬い感じなんだけど、内装入れたら、急に柔らかくなった」「ほらさ、集会所ってイメージ聞いたからさ。だから暖炉をバーンて目立たせて、周りにみんなが集まってウイスキーでも飲んで夜が更ける感じにしたんだ」「相変わらず、さいっこうですね。尊敬してます」「いや、設計者さんがすごくいいんだよ」


冷たい石積みの暖炉と石と柔らかな木材で作られた部屋の中で談笑している写真。


写真では秋用のコートに身を包んだ2人が互いに顔を合わせて、お互いにびっくりしているような横顔で、互いを褒めあっている。


「これもさ、雑誌になるの?」「らしいです」「俺、写っちゃていいの?」「いえ、逆にもっと写ってください」「いいのかな?」


晴れやかな青空に砂色の建築物。かなり引いて撮影された写真には街の中心となる威厳はあるがどこか可愛らしい、自己主張しながらも違和感なく街にある不思議な建物が写っていた。


その写真には3人の親子が、写っている。


「わざわざ来たかいはあった?」「うん!どしても来たかったの!」「我が子ながら将来は建築家として有望かな?」「イケメン大好きな子なのは間違いないわね」「それは君の血だね」「あら?あなた、最近、鏡見た?」「ああ。もちろんいつも通り、君に愛されて輝くいい男が映っていたよ」

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