第20話、コズミックサーフィン
相変わらず、この男は人の話を聞かないらしい。
「よし、出かけようぜ。あとさ、会わせたい人がいる」
「なんだ?ずいぶんと突然だな」
「お前は都市開発が専門だったな」
「開発というよりは、持続可能な観光資源の創出だな。街を残す、維持する、発展させるためには適度な流入とまず、知ってもらうことが必要なんだ」
街というのは空間としても、時間としても「最初」と「最後」、循環が必要となる。
「いいか?街そのものは、生きて死んでを繰り返している。人と同じだ。俺も街も等価なんだよ。俺は自由を愛しているが、孤独じゃないし、孤立していない。わかるか?」
続けろ、と意外と丸い目で促される。
「自由という文字は、マッチ棒で作ると、最初の点以外は他の棒と繋がっているだろ?これをさ、人は生まれた時は1人だが、あとは死ぬその時まで、誰かと関わり合って生きていくってことだ。あみだくじみたいな選択を自分で由え《ゆえ》あって選ぶから、それを自由だと、むかしの人は当て嵌めたんじゃないかと勝手に思っている」
「へー。生ぜしもひとりなり、死するも独りなり」
「さすが文学科。速攻で否定しやがる」
「まあ、俺も自由の文字が、空港の滑走路に似てるとは思ったことがあるし、自由と孤独は違うってのはわかる」
人は旅立ち、そして帰る。帰る場所は様々だが、リズムを刻む、この鼓動に従い、自ら行動する。
「人も街も同じなんだ。人を血液として街も生きている。全ては循環しているんだ。土地も時間も」
「なら、その中の自由ってなんだろな」
紅茶コーヒーをこいつの目の前にゆっくり掲げて、匂いを燻らせるように揺らし、そして少し、くちびるを吊り上げて、笑いながら言ってやった。
「自由ってのは大きな流れの中で自らの行動を決めることさ。赤血球、白血球、血小板のように流れの中で役割を果たしてもいいし、脳ならシナプスとニューロン。新しい繋がりを求めてこうして2人で話して、明日は4人で話す。どちらも自由だ」
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