第14話【昇級クエスト〜懐かしの場所〜】


「おはよう。」「おはよう!」「おは!」「おはぁ」

「あ!おはようございます皆さま!」


 魔法の訓練を終えた俺たちは、その後ウェーナの作った朝ごはんを食べると、いつも通り武器を持って冒険者ギルドへと行った。

(魔法の訓練が朝なのは、クエストなどの時間帯を考えれば、一番最適だからだそうだ。)


 初めてモンスター討伐をしてから1週間。

 俺たちはあの日あんなに怖い思いをしたのにも関わらず、1日も休まずにスライムやらゴブリンやらを討伐していた。


 正直俺はあの日の翌日はモンスターが怖くて冒険者ギルドに行きたくなかったのだが、みさと達に無理やり連れていかれた。さすがにもうこの雑な扱いにも慣れてきたぜ。


 (それにしても今日の受け付けお姉さんは俺たちを見つけてからずっとニコニコしてるな。)


 確かにいつもニコニコ笑顔を絶やさない(例外はあったが)お姉さんではあるが、今日はいつにも増してニッコニコなのだ。


「ん〜?なんだ?俺たちに何か言いたいことがあるのか?」

「確かに、今日は凄くニコニコだよな。」


 俺は思い切ってそう聞いてみた。

 すると、お姉さんは「へへ、実はですねぇ――」持ったえぶるようにニヤニヤしながらそう言うと、カウンターの下――依頼の紙を置いてあるところをなにやら触りだした。


 ん?本当になんなんだ?

 俺はお姉さんが何か言うまで黙って待っていると――


「なんと!今の皆さまにピッタリな依頼があるんですよ!」


 お姉さんは1枚の依頼が書かれた紙をカウンターの上に出し、そう言った。


「ピッタリな依頼?」


 俺はカウンターに置かれた紙を見る。


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下級下位クエスト〘昇級〙

・内容:5匹のワーウルフ討伐

・報酬:銀貨5枚

・場所:オリアラの森

・期限:出来る限り早く

・依頼主:サラ・ブラウス(職業:伐採職)

・備考:他のモンスターも居る森です。注意して下さい。

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 下級下位クエストというタイトルの横には、「昇級」その文字がハンコで押されていた。


 なるほど、これがたまに現れるという「昇級クエスト」ってやつか。


「このクエストって?」


 おそらく分かっているが、念の為という感じでみさとがお姉さんに聞く。


「この依頼は昇級クエストで、完了させることが出来れば、等級を上げる事が出来ます。依頼内容は、他のものともあまり変わりはありませんのでご安心下さいね。」

「なるほど……」


 お姉さんの説明を聞いたみさとは、顎に手を当て感心したようにそう呟いた。

 まぁ、内容はやっぱり予想通りだな――って、まさかみさとは本当に分かってなかったのか……?


 コイツ、カンニングとかずっとしてたんだからてっきりこういうこともすぐ察せるのかと思っていたが……どうやらそれは違うかったらしい。

 ま、とにかく絶対受けた方が良い依頼だな。


「どうする?俺は受けた方が良いと思うが。」


 等級が上がれば、今よりももっと色んなモンスターの討伐依頼を受けることが出来る。

 それに、この依頼自体の報酬もなかなかに美味いしな。


 ワーウルフってのがどんなモンスターなのかは知らないが、まぁなんとかなるだろ。

 ここのところ依頼に慣れてきて調子に乗り出した俺である。


「うん、私もこれは受けたいわ。」

「だな」「うん!」


 よし、これで全員の意見が揃ったって訳だ。――ってことで、


「よし!じゃあその依頼、俺たちが受けたッ!!」

「ありがとうございます!では、討伐時にワーウルフの耳を入れてもらう袋を用意しますね。」

「あいよ」


 前々から思ってたんだが、今のお姉さんのセリフの中にもあったように、モンスターをちゃんと討伐したか確認する時に、今回の耳だったり、スライムの切れ端だったり、ゴブリンの親指だったりと、なかなか残酷なことをさせてくるよな。


 まぁ、それを言い出したらまず討伐してる時点でってなるんだけどよ。


 すると、そんなことを考えてる間に――


「はい、ではこの袋に討伐したワーウルフの片耳を入れて持って帰ってきてください。なお、切り取る耳は全て同じ方の耳でお願いします。ごちゃごちゃになると数を不正されても分からないので。」


 お姉さんが袋を持って来た。


「あいよ」

「では、くれぐれもお気を付けて!」


 俺はその袋を受け取ると、お姉さんは頭を下げながらそう言った。


 さぁ、今日も俺たち転生パーティーの討伐開始だッ!!


 ---


 そこから俺たちは、いつものように場所の詳細を聞き、冒険者ギルドを出ると歩き始めた。


 しばらくして――


「あれ?ここってまさか――」


 なにやら見覚えのある草原が、砂利道の右側に現れた。

 ここってあれだよな。


「ここ、私たちが最初に目を覚ました場所ね」

「ここだったのか、今こうして来てみると、意外とラペルと近いんだな。」

「すごく懐かしく感じるよ。」


 俺たちは、太陽に照らされて青々と光を反射する草原を見ながらそう言ったのだった。

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