第五話  白鳥の慈愛

side 澪


 「これで……50体目なのです!」

 射ち放った矢が黒狼の脳天に突き刺さり、キラキラになって霧散していくのです。

 (経験値3を獲得しました)

 (オオカミ肉:一般・黒い毛皮:上等を手に入れましたインベントリに保管します)

 (レベルが7に上がりました。ボーナスポイントを付与します)

 (称号:見習い狩人を取得しました)

 「そろそろ矢も尽きてきたね」

 あっ、もう矢筒の中に矢が入っていないのです。

 じゃあ先生に物の収納方法のついでに教わった市場に行って、素材を換金してもらうのです。

 それで矢を補充してまたこk――――――ッ⁉

 「ぐぺ」

 何かの気配がしたと思ったら背中から強い衝撃を受けて押し倒されたのです!

 後ろからだから何が来ているのかすらわからないのです!

 そんな事よりも手が、玲の手が離れて、あぁ、手が、手が冷たい、なんでなんで、あぁ、玲はどこ、ああああァ――――――⁉


 双子は後に知ることになるが、Stardust Onlineには単一のモンスターを連続で倒し過ぎると「ペナルティキラー」と呼ばれる化物バケモノが湧く仕様がある。

 普通の人は『Astronomica掲示板』で情報交換するなりなんなりで知ることが出来たのだが、双子は勿論もちろんそんな事知らないので、このような事になってしまったのである。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

name 名も無きネームレス星狼スターウルフ  Lv28

 ……一人寂しく生きる黒狼がいました。

 しかし彼は、子供の頃のあの温もり母の温もりを忘れることが出来ませんでした。

 ある日、彼は星の欠片を見つけました。

 そして彼は、星狼となりました。

 ……星は、あの頃とよく似た温もりを彼に与えてくれました。

――――――――――――――――――――――――――――――—――—――――


 「あ、あぁあ、れ、玲、待って、玲—―――ぁ」

 狼の牙が見えるのです。

 玲と離れてしまったせいで体が重くなり、混乱した頭でも、その牙は認識できたのです。

 私達を噛み砕かんとする真っ白な牙。

 狼の目が見えるのです。

 ……何故だかその瞳は、悲しそうに見えたのです。

 ……どうしてそんな目をするのです。

 そしてそのあぎとが閉じていって――――――


 side 玲


 まずいまずいまずい!

 待てよ、そっちに行くな、来るなら僕からにしろ、待て、くそったれ‼

 なんで突き飛ばされただけで体が動かないんだよ!

 澪を助けないと。

 死なせてたまるか、死ぬなら僕からだ‼

 澪がいないと僕は……僕は……!

 そんな思いは重りにすらならず、狼のあぎとが閉じていって――――――

 「おどりゃ何しとんじゃァァァ⁉」

 「ギャイン⁉」

 大きな男が狼に向かってタックルをかましてきたのです。

 それをもろに食らった狼は、悲鳴を上げながら澪の上から飛び退きました。

 そしてそのまま逃げていきました。

 「澪ッ!」

 あわてて澪に駆け寄ります。

 「うぁ……あったかい……玲ぃ……」

 「うん、ここにいる」

 「良かったぁ……」

 もう二度と離したりするもんか。

 「あー……大丈夫か?」

 ……あ、忘れてた……。

 「はい、本当に助かりました、ありがとうございます!」

 「いやいや、子供のピンチにゃ駆けつけるのが大人の役目ってもんだからな、気にすんな」

 そう言って僕達の頭を撫でてくれる男の人は、スキンヘッドでとても怖そうな人相をしているけど、目がすごく優しい色をしています。

 「俺はレダってんだ、お前らはなんて言うんだ?」

 「私はミオで」

 「僕はレイって言います」

 「おう、いい名前だな!次からは同じMobを倒し過ぎないように気を付けるんだぞ?また奴が来ちまうからな、じゃあな!」

 「あっ、まだお礼が……!」

 「いいんだよっ、子供からたかる程落ちぶれちゃいねぇよ!」

 そう言って足早に去ってしまったレダさん。

 でも不思議です。

 普通、プレイヤーネームは自分が知った後頭上に白く表示されます。

 でも彼の、レダさんのプレイヤーネームは赤く輝いていたのです。

 ……どうしてなのでしょう?











――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 1月の第二週の土日までは不定期になってしまうのです。

 重要な行事があるのです……すみません!

さて、誰が【白鳥】なのでしょう?

 

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