第1章 春と誓い

そしてその時は、突然訪れた。

「うわっ!」

私の後ろを歩いていた後輩の叫び声が聞こえたかと思ったら、すぐに私の背中に後輩がぶつかり、私の体が下に落ちていく。痛みを感じるまで、何も考える余裕がなかった。

いたっ……。

澪夏達の声が聞こえる。階段の下の方ではあったので、数段を飛ばして落ちてしまったのだったが、着地をする時に足首を思いっきり捻ってしまい、転んでしまったのだった。

心配をかけないように早く立ち上がりたかったが、右足首の痛みが強くて、簡単には立ち上がることができなかった。

「彩葉、今先生呼びに行ってもらってるから!」

「…うん」

澪夏に返事をしながらも、私が頭に浮かんでいたのは、大会のことだった。

先生達がすぐに来てくれて、私は保健室へと運ばれる。

部活動の後輩達も、バスケットボール部の子達も、保健室に一緒にきてくれた。後輩達は泣いていて、バスケットボール部の子達は気まずそうにしている。

バスケットボール部の子達も関係があることだったので、澪夏が秀君を呼びに行くと言って、保健室から出て行った。秀君は体育が終わった後にそのまま部室でお昼を食べ、体育館でバスケットボールをすると聞いていたので、部室にいることだろう。

私が落ちてしまったのは、バスケットボール部の子が話に夢中なこともあり、私の後ろを歩いていた後輩にぶつかった。そしてその子がバランスを崩してしまい、私にそのままぶつかったのだった。その子はもう1人の後輩に腕を掴まれた後、バスケットボール部のぶつかった子も、その子を掴んでくれたので、事なきを得た。

「念の為病院で診てもらった方がいいですよ。おそらく、しばらくは運動は控えるように病院の方から言われると思います」

私の足首を冷やしながら、養護教諭の先生はそう言っていた。

浦辺先生は、親に連絡を入れてくると言って保健室を後にした。

保健室の空気は重苦しかった。本当は私がどうにかしないといけないのだが、今は自分のことで精一杯だった。

後輩達を責めて怒っているわけではない。ただ、大会のことがずっと頭をぐるぐる回っているだけだ。

「彩葉ちゃん!」

保健室のドアが勢いよく開き、澪夏と秀君が入ってくる。すると、秀君は私に真っ先に頭を下げたのだった。

「ごめん!話は澪夏から聞いた。俺の後輩のせいで本当にごめん」

「秀君、顔をあげて。いいの、大丈夫だから」

「いや、だって…」

秀君はそれ以上私には何も言わずに、バスケットボール部の後輩達の前に立つ。私が知っているいつもの彼ではなく、今はバスケットボール部のキャプテンの顔をしていた。そして、その表情はとても怒っているようだった。

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