第35話

一生懸命書いたつもりですが、早く書こうとするといろいろボロが出そうです。

その14,これで良かったのか?

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   その14

”蒼天の銀翼”との依頼をこなした後、冒険者ギルドで早速ランクをDに上げてもらって、カズとアズミは山の中のアジトに戻った。

”蒼天の銀翼”と合同で依頼を受けてみて、いろいろ考慮することが出てきたためである。

何より、収納バッグを何とかしたかった。

魔力による身体強化にひらめく物があった。この前はたった三日ほどしか訓練できなかった身体強化だが、明らかなレベルアップを感じた。訓練の仕方のコツがわかったかもしれない。

それから腕輪、バングルをバージョンアップしたかった。

あと、当然であるが風呂にも入りたい。と、言うことで、朝から風呂である。

ま、それは置いておいて、とにかくまず、収納バッグをあずみに作ってもらう。見た目の印象はビートのバッグにそっくりにして、ビートのバッグは肩掛け式だったが、私のはリュックサックタイプの背中に背負う形にする。人前で大っぴらに使うことになるので、なるほどこれは収納バッグと分かる方が良い、多分。で、ビートのバッグと全く同じでは困るので印象は似ていても形は違うものにした。

バングルであるが、古代遺物というふれ込みになっている。もちろんアズミには古代遺物など必要がないのでダミーである。

ダミーであるが、美しい。

京象嵌である。

一見、黒漆に金銀で蒔絵を施したように見えるが、地金は銀、それを黒漆で黒く着色して、金と銀で桜の花と花びらを象嵌してある。

前世で見た時はブローチだったがそのミヤビた姿に一目惚れして、今生では腕輪、バングルで再生してもらった。

アズミのバングルはただのダミーだが、私のは緊急脱出用にアジトに移転できる魔法が仕込んであった。私は残念ながら空間魔法が絶望的なのだ。縦、横、高さ、それプラスもう一つの方向、余剰次元をイメージし、解放しなければならないが、もう一つの方向のイメージなど、どうやっても出てこない。

アズミにとっては3のディメンションが一つ増えて4になるだけで、何の事は無いそうだが、やっぱり俺にはできなかった。

で、魔道具が必要になる。最初、魔道具はタブレットだけでいいと思っていた。いや、現在タブレットはコンピューターのバージョンアップを施して、見た目は魔導書になっている。一応、所持したままでも戦えるように腰にポーチを取り付け、そこに入れてあるが、やはり少し安定が悪く、幾分気になる。多分すべての荷物を降ろして戦いたくなる時もあると思う。

そんな時、よく使う魔法だけでもバングルに仕込んであると楽なのだ。

風呂から上がって一休みすると、一番楽しくない体力強化である。ローラーゴロゴロして、うさぎ跳びもして、ランニングにジグザグ跳びに…・憂さ晴らしに罵詈雑言まき散らしながら、それでも一応はまじめにやってる。アズミももう少し長い刀が振れるようになった方が良いので、一緒に不満を喚き散らしながらやっている。おかげで多少は気が紛れている。

最近の流行は魔力を流しながら体力増強を狙っていることである。

多分であるが、これをやると体に魔力が流れやすくなる気がするのである。ダンが体力強化を強く勧めるのは、身体の強化が魔力の流れを良くすると言うのも有るからかも知れない。

それが終わると、真っ向唐竹割の練習をする。これは魔力を込める練習でもあるが、抜きの練習でもある。

まず、剛、上段から気合もろとも力まかせ、思い切り、力と魔力を込めて、木刀で寝かせた竹の束をぶっ叩く。

薩摩示現流の真似である。

何度かそれを繰り返してから、その正反対を行う。

無駄な力が入らないよう、刀がぶれないよう、真っすぐ、重さを感じないように体幹を使って滑らかに刀を振りかぶる。

振りかぶった刀をビデオの逆再生するように、まったく同じコースを滑らかにぶれないように振り下ろす。

剛の薩摩示現流は受け手の刀もろとも押し込んで、相手の頭蓋骨を粉砕したという逸話を持つ。

反対に、柔の修心流は、居合で音速で飛んでくるピンポン玉を両断した実績を持つ。

ピンポン玉? と怪訝に思うかもしれない。これは前世の面白科学実験のテレビ番組での、科学者と武道家のコラボ対決の番組である。科学者は柔らかいピンポン玉を潰さずに、いかに早く飛ばせるか。武道家は飛んできたピンポン玉を両断することができるかの対決をした。科学者は、なんとあの柔らかいピンポン玉を音速の1,440㎞で飛ばして見せ、武道家はそのピンポン玉を居合で両断して見せた。

人間は時において、恐ろしい程の能力を見せるものである。しかし、前世の私なら、同じ事をやろうとしても絶対無理である。だが、この異世界ならば、魔力を持って身体能力を爆上げする事ができるならば、魔力量だけはトップレベルまでチートした私である。今まではせっかくの有り余る魔力がほとんど生かせてない俺である。身体強化なら、刀の強化なら、遠慮会釈なく魔力を使っても問題はない。もう、必死になってガンガン行くしかないのである。

あとは、魔力をスムーズに流して、身体強化できるならば、絶対に、あるいは多分絶対に、ま、何にせよ希望だけは必要なのである。

柔と剛、私の体格を考えれば、柔を主体にするべきであろう。しかし、柔を生かすのは剛なのだ。力を持たないふにゃふにゃの体からさらに力を抜いてもただのボロ雑巾にしか過ぎない。

柔から剛、剛から柔への瞬息かつ滑らかな移行が肝なのである・・・たぶん。

「俺より強くなるな! この駄メイド!」

「おー!!へばってんじゃねえぞ、屑男!!」

「うるせー! 口先女!!」

「ちっとは動け! このヒョロヒョロもやしの、ヒョーロク玉!」

であるによって、くそ面白くもない体力強化をアズミと思いつく限りの罵詈雑言を浴びせ合いながら励むわけである。

次の日とその次の日は身体強化の後、アズミと十字に切り結びをやった。どこまで体と刀を魔力強化できるか、確認と練習である。特にアズミは軽量なので、それを魔力強化でカバーする必要がある。

はじめは軽く、だんだん力いっぱい、ガンガン切り結んで、体と刀を強化していく。

そして、それが終わると、切結びからの影抜き、そう、アズミがダンをうならせた技の練習である。

四日目、五日目、六日目にはさらにVR ゴーグルによるバーチャルの練習も付け加える。

ワイルドウルフの群れを突き抜ける練習である。”蒼天の銀翼”とゴブリンを駆除した時にやった戦法である。群れる魔物相手にはぜひとも習得したい戦法であるが、ゴブリンのようなどんくさい相手ならともかく、ワイルドウルフぐらいスピードのある魔物には、魔力による身体強化と抜きによる幻惑が必要になる。

お互いに正面から高速で襲い掛かり、寸前で魔力による強化を使って超速で右にかわす、相手が反応したところを、影抜きの要領で左にすり抜けつつ刀を当てる。

剛から柔の瞬息の転換、これこそ私が求めていた武術の肝である。

まさに瞬息、よほどの達人でなければこの速さは目視できないだろう・・・決まってくれれば。

むふふ、ダンの唖然とする顔が見たいものである・・・・まだ極めきれてないけど。

という風に六日間にわたる俺たちの強化合宿は過ぎていったのである。

武道の修練は一生ものである。しかし、その進むべき道筋と、愚図である私の身の丈に合った訓練方法はぜひとも知っておく必要があった。

別にこの合宿で長足の進歩を遂げたとか言うつもりはない。ま、多少は、そこそこ、最初意図したよりは進歩したと、ふふふ、言っていいかも知れない。しかし、アズミの奴はめちゃ強くなったんだよなあ、クソ!

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