不自由な鴉と籠のカナリア

東雲

第1話

 大きなお屋敷に籠の中で生きているカナリアがいました。

 そのカナリアの御主人は病弱な少女。

 外に出掛けることもできない少女の為にカナリアは綺麗な歌声を聞かせていました。


「綺麗な歌声ね。羨ましいわ」


 少女はカナリアの歌声が大好きでした。

 カナリアは誉めてくれる少女が大好きでした。


 カナリアに不自由はありません。

 安全な籠の中。

 ご飯も外の鳥たちのように探さなくても勝手に出てきます。

 カナリアにとって籠の中が唯一の世界。

 少女の喜ぶ姿が存在意義。

 それ以外必要だとは思いませんでした。

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