死んだらなぜか、俺のことを好きな女子の部屋にいたので、飽きるまで生態観察をしてみた。

澄空

プロローグ

 


 四十九日。

 その期間、死んだ人の魂は辺りを漂い、天国か地獄か死後の行く末を決められる、らしい。

 辞書で引けば出てくるような知識だが、少なくとも俺は今、事実だということを強く実感していた。


 目の前には、1人の女の子がいる。

 俺からは見えているが、相手は俺の存在を認知出来ていない。…のだと思う。多分。きっと。


「…おーい」


 口を動かして呼んでみるが、反応はなし。

 古びた木の机に突っ伏している。

 どうしたものか……。


 そもそも、俺はどうしてここにいるのだろう。

 六畳半程の部屋の中、俺は彼女2人でいる。

 いや、俺を1人とカウントしていいのか?


 ただ1つ確かなことは。



「さすがに死んだよな、俺」


 俺が、死んでいると言うことだった。




 ***




 これは嘘みたいな本当の話。

 学校からの帰り道、俺は子猫が道端でうずくまっているのを見つけた。

 そこに接近する1台のトラック。


 …いや、もちろん俺も目を疑ったよ?

 こんなベタな展開あるのかって。

 でも一刻を争う状態だったから、頭を使ったのはほんの一瞬だった。


 抱きとめた子猫。

 目の前に迫るトラック。



「っ!!!!」


 一瞬の衝撃の後に。

 気づいたら俺はこの部屋にいた。

 悲しいことに、異世界に召喚されたり、生まれ変わることは許されなかったらしい。

 俺は、俺と言う存在を保ったまま、きちんと死んだ……らしかった。



「いや、ほんとにどうすっかな…」


 困った。

 色々試してみて得た結論。俺はどうやら魂だけの存在。

 すなわち、霊とも言えるモノになったようだ。

 憶測の域を出ないが、とにかくまだ俺の意識はある。


「つってもなぁ……。この部屋から出られないし……」


 そう。

 俺はなぜかこの部屋で目覚め、この部屋から出られない。

 ドアノブは霊体であるが故に掴めない。

 霊なら壁とかも透けられるかも、とか思ったけど、無理。

 見えない壁に遮られるかのように、部屋の壁に遮られてしまう。

 俺からは物を掴んだり触れないのに、一方的に閉じ込められているって何なんだよ……。


 この部屋で気づいてから早3時間弱。

 外はぼちぼち暗くなってきていて、時間の経過を感じさせる。

 俺が死んでから3時間……。

 さすがに死にたてほやほやではあるけど、実感ないよなぁ……。


 目線を周りに巡らせてみると、またまた机に突っ伏している女の子の姿が目に入った。

 この子、一体誰なんだろう。

 俺が気づいた時からこの体勢なんだけど。

 後ろ姿を見てもピンと来ない。

 セミロング?ぎみの髪と制服が特徴という特徴だけど……。


「寝てんのか…?」


 制服から同じ高校の子だとは分かる。

 しかし、得られる情報はそれ以上でもそれ以下でもない。


 と、不意に女の子の肩が揺れ…。


「ふわぁぁああ」


 大きなあくびと共に、起き上がった。



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