第2話『俺はここを出て行くぞっ(キリッ』
第二話『俺はここを出て行くぞっ(キリッ』
資源惑星かぁ、あのブラウザゲーム通りなら編成画面から戦略画面に移って確認出来るのかな?
……出来ましたな、なるほど。
う~ん、これは一先ず放置だな。魔王ブッ殺すとかドラゴンスレイヤーとか凄い力を持ってるとか転生チートとか、そんなレベルじゃねぇ……
攻撃力が宇宙レベルぞ?
支配域も宇宙レベルぞ?
こんな力、権力者から色んな意味で狙われる危険性有り。
宇宙艦隊を持たん今の俺じゃぁ手に負えんわ。
フッ……と切なげに苦笑する俺。
そんな哀愁漂う俺の背後に居たクソ文官が十七回目ぐらいの舌打ちを鳴らすと、俺がステータスを出せなかった様子に業を煮やして行動に出た。
舌打ちクソ文官が両隣の騎士に指示を出し、騎士二人が俺の背に剣を向けた。騎士の一人から前へ進めと言われる。
同騎士から『道具を使い問答無用でステータスを見る』的な説明を受けた。
クソ文官が『自主的にステータスを見せないとは小賢しい』と俺の頭を小突く。
不思議とまったく痛くはないが、おやおやコイツぁ……
……軽い殺人衝動に駆られた。ふぅ、落ち着こう。
『処刑しますか?』
え、いや、まだいいです。
アグレッシブな秘書官の言葉に頼もしさを覚えつつ、不貞腐れながら玉座の方へ連行される。物凄く注目されているな。
連行されながら、ステータスを出しっぱなしにしている奴らをさり気なく見ていく。少しゆっくり歩こう。
皆、ステータス開示以降やたらと態度がデカい。『日本に帰る手段』を教えろと周囲を威圧する者も居る。チート能力でも手に入れたか? 腕試しに宇宙艦隊と勝負してみる?
あの帰せ帰せとウルサイ数人は、日本に帰って無双する気だな、僕は詳しいんだ。
しっかし皆の外見に戸惑いを覚えるな、召喚された彼らの人種は……ふむ、恐らくゲームが反映されているからだろうが、肌の色も髪の色も様々、いわゆる亜人っぽい奴も居る。
彼らの共通点を挙げるなら全員若い、中高生のように見える。俺の外見も若いのだろうか? 俺の両手は張りの有る若者の手に見えるが。
さて、ステータス表示に次いでコレもまた俺だけ違う点だが、彼らが身に纏うのは近世欧州風ファンタジー装備。
対して、現在自分から見える範囲で推測するに俺の服装は恐らく近未来的な黒い軍服(戦闘服ではない)、他の奴らとは方向性がまるで違う。
俺は軽装だが、彼らはクソ重そうな武器を肩に担いでいる奴がチラホラ。
俺の近くに居た自称高レベルの女の子なんて、床を突けば『ドスン』と音を立て石床を破壊した巨大ハンマーを片手で持ってブラブラしているし……
俺にはあんな怪力披露は無理だ。
試しに……何故か被っている黒い軍帽を右手で持ってみるが、普通に予想通りの重さを感じる。
右腰のホルスターに刺さった拳銃も重い、ってか重すぎワロタ。
何kg有るんだコレ?
『ドワルサーP3800ハイギガ粒子拳銃ですね。重さは約12kg、高級士官用の支給品です。小型戦闘機も撃ち落とせます』
おっ、秘書官レイディが疑問に答えてくれた。
なるほど、え、戦闘機? 対物ライフル系?
これ拳銃だよね? おかしいな……?
マントの中でコソコソ銃を確認しようとしたところ――
ズガッ!!
「さっさと歩けウジ虫めっ」
「えぇぇ……」
背後のクソ文官にケツを蹴られた……
オモロすぎるわコイツ……キレそう……
いや待て、さっき頭を小突かれた時もそうだが、痛みを感じんな?
『司令長官の一型礼服は全身に防護バリアが常時展開されております、まず負傷する事はありません。それでは司令、暴行犯を
ほほう、バリアか、優秀やなっ!!
銃殺は……まぁいいや、今回は我慢だ我慢。
ひとまず俺のステータスを確認してからだ、今は大人しくしとくよ。
――と言う事で、ハイ、王様と宰相っぽいハゲの前まで来ました。
騎士の『止まれ』の声で俺が立ち止まると、目の前に変な男が来た。
彼は青く縦に細長い帽子を被り、床まで届く青いマントを白い衣服の上に纏っていた。神官だろうか、その中年男性が水晶玉を持っている。
何々~、ふむふむ、その水晶玉に触れば良いんですね?
『古いタイプの生体情報識別装置です、特にトラップは仕掛けられておりません』
ア~ハン、おっけおっけ。
コレを、この水色の水晶玉を、サッカーボールサイズの水晶玉を触れと、あ、手を置くだけで良いと、ハイ、ペタっとな。
ん? ウンともスンとも言わんな。
ザワッ……
ザワザワッ……
ヒソヒソ……
ヒソヒソヒソ……
周囲がざわつく。
王様が明らかにガッカリしている。
ついでに侮蔑の眼差しを俺に向けた。シバキたい。
「ハァ~、能無しときたか……」
「陛下、召喚された他の異世界人の目が御座います、沙汰は慎重に」
「いやいや陛下、奴は無能ですぞ、態度も反抗的、ここは見せしめに」
「いやいや陛下、オマン公の仰る通り、荒事は避けるべきかと」
「ふむ、心苦しいが……無能では城で生き辛い、か」
「いやしかし、追放程度では他の異世界人に
「城下に家を下賜したのち、下賤な仕事を与えみては?……」
「奴のおかしな格好は無能ゆえのハッタリ、ですかな、ガハハ」
オイオイオイ、チラ見しながら穏やかじゃない話を聞こえよがしに……あ~、ワザとやってんのか、自主的に城を出るようにしたいのかな?
一応の保護姿勢は臭わせつつ、実際は捨てる気マンマンの会話だしな。
まぁ捨てられるのは構わんがね、自分が何者なのか分からん孤独な身の上だ、嫌々保護して欲しいとも思わんし追放された方が気楽だろう。
そんな事より、やっぱり俺達は召喚されたのか、俺だけ転生後の召喚っぽいが。
『今から数十分前、地球で死亡予定だった者達を強化しつつ召喚したようです。司令だけは召喚直前に死亡した為、身体の再構築を施されております。記憶障害はその代償かと』
あ~、死ぬ予定の奴らだったのかアイツら。
って事は、俺が死んだあの爆発の被害者集団かな?
俺だけタイミングが早まった感じ?
ふむ……結構どうでも良いなっ!!
あ、そうそう、強化しつつ召喚とは?
『スキルや職業の付与、身体強化や言語等に関する融通です。司令には職業だけ付与されました』
なるほどなぁ、しかし待って欲しい、俺はこいつらの言葉が解かるぞ?
『司令は肉体再構築の際に我々が
ほほ~ん、つまり幻想科学の勝利的なアレやなっ!!
『司令の性格にも多少は左右されますが、強化人間は心身共に強靭です。
なるほどな~、世紀末自己中の姿勢ですね分かります。
じゃぁ取り敢えず、王様にこの場でサヨナラ宣言しとくわ、城下町の家も要らない。あ、去り際にあのクソ文官ブッ殺しとこう。
他の奴らは放置で良いな、俺は拉致召喚されたわけじゃないし、むしろ生き返ってラッキーだったからな。
それでは皆様、ご機嫌ようっ、アバヨっ!!
俺の話を聞いた王と宰相達は嬉しそうに承諾したが、その様子を
騒ぎに目を向けると……恐ろし気に俺を見ている奴と、俺を指差して笑っている奴の二派が居る模様。
怖がっている奴らの中には俺と目が合う事を避けて俯く奴や、ゲロを吐く奴まで居る……
え、何で?
分からない事は直接聞いてみる、記憶喪失男の基本だっ!!
なので、近くに居た双剣少女に聞いてみる。
何でビビッとんのや?
「え~っと、あの~、追放サレキャラは、その~、ほぼ確定で最強化して、その~、追放以前の関係者をその~、九割方殺すのであの~……」
何そのサイコパス怖すぎワロタ。
それ何の物語? 僕は詳しくないんだ。
そもそも九割殺すなら安全の為に全員殺すよ馬鹿だなー。
『少し宜しいでしょうか司令』
ん~、何ですか?
指差して笑ってる奴らを殺したいんですか?
絡まれた後に殺した方がスカッとしますよ?
クックック僕は詳しいんだ。
『いえ、資源輸送の手段がない現状では貯蔵資源が少なすぎます。出立後の計画をスムーズに実行する為にメタル製錬・燃料精製・食料加工の産業施設を設置して下さい。指差し猿を処刑するタイミングは御随意に』
え、資源の話? いきなりだなオイ。
ちょっと待ってね、今忙しいから。
そもそも産業施設は造るのに時間が掛か――
『最初の産業施設は完成まで四秒です』
早すぎワロタ。
『これも司令が備えた能力の一つです』
……まぁ、あの古いブラウザゲームの仕様なら、そうだな。
ゲーム開始から一時間は施設建設が早く済んでて楽しいが、それ以降は全てにクソ時間が掛かる宇宙大戦
俺の記憶に残るゲームの仕様なら四秒建設もアリか。
でもまぁ編成画面内の話だしな――
『資源を多く消費しますが、ご指定の場所に出現させる事も可能です。その場合は立地条件に合わせて生産率上昇効果が付きます』
――え、何それ楽しそう。でもお高いんでしょう?(資源的に)
『貯蔵タンクが初期レベルのままですので、必要資源の確保も出来ません』
ふむ、それは面白くないですねぇ……そんなんじゃ爽快な『ざまぁ』が出来ない、何度も言うが僕は詳しいんだ。
と言う事は、追放は先延ばしの案で行きましょう。
王様に頭を下げて城下に家を用意してもらう事にします。
エクスタシーとカタルシスを感じる為なら、一時の恥など屁とも思わんよ僕はっ!!
当然ながら、王様達にすごく嫌な顔をされた。
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