第61話 怪獣8号を読みました
いまさらですが、アプリ「少年ジャンプ+」で『怪獣8号』を読みました。スマホアプリだと、全話無料で読めるんですよね、一度だけですけど。おもしろかったです。少年漫画! って感じのアツイ展開に何度も泣きましたよ(笑
松本直也さんが2020年から「少年ジャンプ+」で連載している『怪獣8号』は、怪獣の襲来から日本を守る日本防衛隊の活躍を描くSFバトル漫画です。2024年4月にはアニメ化されました(見てないですけど 汗)
以前から「少年ジャンプ+」で連載していることは知っていましたが、「いまさら少年マンガを読む歳でもないだろ」とスルーしてきたのですが、いつも聞いているポッドキャストでおすすめされたので読んでみたのです。
うん、おもしろい。
考察のしがいもありそう。
読み進めるにしたがって『新世紀エヴァンゲリオン』っぽく感じるとか、いやエヴァの元ネタである『ウルトラマン』のほうが強く出てるとか、バトルシーンの連続に『キン肉マン』を思い出してしまうとか、主人公の年齢とチート能力に「なろう系の導入と同じだな」とツッコんでしまうとか、いろいろと語りたくなるポイントはあるのですが、まとまらなくなってしまうので今回はおいておきます。
今回は、マンガの描く「敵」に注目してみました。
このマンガの中で主人公が戦う敵は、怪獣です。バトル漫画なので、人(正義)と怪獣(悪)が戦うという構図であり、自然、読者は人に肩入れして読むことになります。
視点を変えて、先日、「柱稽古編」の放送を終えた『鬼滅の刃』を見ると、人が戦う相手は鬼です。また、昨年アニメが完結した『進撃の巨人』では巨人が敵として設定されていました。
これらの漫画に共通するのは、人類ではない敵が人類を無慈悲に殺戮してして、主人公は人類の生存のためやむを得ず敵を排除している――という世界観です。
はじめて『進撃の巨人』を読んだときから、「どうしてこんなに奇妙な設定なんだろう」と不思議に思っていました。理不尽の象徴が、巨人なんだろうと一応考えてみました。
コロナ禍という理不尽によりロックダウンした街を思い出すと、巨人の恐怖から壁の中に隠れ住む人類という『進撃の巨人』の設定は、周囲に盾を作ってコロナ感染症から身を守ろうとしたあのころの無知なわたしの行動と見事に合致するので、理不尽=巨人という説明は的外れでないように思います。ただ、その時はなぜ巨人に象徴させたのか、わかりませんでしたが。
その後、『鬼滅の刃 ―無限列車編―』の熱狂に触れてなんとなく理由が分かり、『怪獣8号』に至って、ある種の確信となりました。人ではないモノと人との戦いという構図は万人が乗れるコンテンツなんだなと。
2000年以降のネット社会の進展は、一般の人が多様な価値観、情報に触れる機会を飛躍的に増やしました。多様な価値観とは、多様な正義を含みます。正しいことは、だれにとって正しいことではなく、相対的なものだという認識が広がっていると感じます。
ロシアによるウクライナ侵攻について、ロシア(またはウクライナでもいい)だけを一方的に悪者にして戦争と語ると違和感を感じるという人は少なくないと思います。それは人が人を殺す行為を肯定することに対する違和感です。ロシア、ウクライナそれぞれに正義のあることはネットを通じて知っているけれど、そもそもどんな正義の下でも人を殺すことは許されないんじゃないの? と。
多様な正義を認める社会の中で、戦闘や戦争をエンタメとして描くのはリスクを抱えることになります。敵とレッテルを貼られた側から激しく反発される(炎上する)ことが予想されるからです。
たとえば、大ヒットしたトム・クルーズ主演の映画『トップガン マーベリック』で、トム・クルーズ演じるマーベリックが撃墜した敵戦闘機。映画のなかでは一切触れられませんでした。映画制作者が特定の国に敵のレッテルを貼ることを避けたとわかります。人や国を敵としてフィクションを作るのは、それだけでリスクなのです。
その点、人ではないモノを敵に設定した物語はだれも傷つけないから安全です。どんなにひどい戦闘や戦争、残酷な行為を描いても、巨人や鬼の団体がクレームを付けてくることはありませんし、怪獣が街を破壊するなんてことは起こらないのです。そんなモノは存在しないから。
メリットがある反面、人でないモノとの戦いは、まったくの絵空事なので、漫画やアニメから現実の痛みが失われていくデメリットがあるような気がします。必要かどうかは別にして、『火垂るの墓』を見て感じる切実さ(なにかしなければならないと急かされるような感覚)は大事なもののような気がするんですけどね。いろいろ書いたのでよく分からなくなってきました……。
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