第43話 2024年の日本ダービーを終えて

 26日、競馬の祭典、第91回日本ダービーが17頭の若駒を東京競馬場に集めて行われ、9番人気の伏兵馬ダノンデサイルが、皐月賞の勝ち馬で1番人気だったジャスティンミラノを2着に抑えて優勝しました。


 ダービーは今年もおもしろかった。


 番狂せの主役、ダノンデサイルを優勝に導いたのは、横山典弘騎手。競馬界のレジェンド武豊騎手に続く通算勝利数を誇るスーパージョッキーですが、近年は勝ち鞍を減らしており、2018年を最後にG1勝利からも遠ざかっていました。「あの横山典弘も寄る年波には勝てないのか」むかしからの競馬ファンは皆そのように思ってたはず。それが56歳となった今年、目の覚めるような騎乗で、ダービー優勝をかっさらい、一昨年に勝った武豊騎手を上回るダービーの最年長勝利記録を更新しました。


 横山騎手と同じ50オーバーとして、わたしにとっても痛快な日本ダービーとなりました。年齢を理由に腐ったり諦めたりせず、挑戦し続ける姿勢の大切さを教えられたような気がします。


 振り返れば、クラシック一冠目の皐月賞。ダノンデサイルはレースに出ませんでした。レース直前に横山騎手がダノンデサイルの足運びがおかしいことに気づき、出走をキャンセルしたからです。


 サラブレッドの脚は芸術品に例えられるほど繊細で、わずかな異状でも悪化させると馬の競走能力を台無しにしかねない、まさにアキレス腱です。大事をとるのは大切ですが、G1レース、しかも生涯に一度しかチャンスが巡ってこないクラシックレースをキャンセルするというのは、相当な決断力が必要です。


 馬主の、厩舎スタッフの、競馬ファンのとを背負って走る馬をその判断で走らせないというのは、彼らの批判を一身に浴びるということですからね。考えるだけでぞっとします。


 皐月賞を回避したダノンデサイルは、その後、脚をしっかり直してダービーに優勝しました。横山騎手の円熟の判断と騎乗――二重のファインプレーがあったればこそです。


 年を取るのも悪くない。ベテランならばこそ勝利を得る道もある。今年のダービーでは勉強させてもらいました。わたしも腐らずにがんばろうと思います。ありがとうございました、横山典弘騎手。おめでとう、ダノンデサイル。

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