第31話
☆☆☆
「雄太ありがとう。雄太のおかげで私すごく楽しかったんだよ」
時刻はもうすぐ夜中の1時になる。
化け物の破壊衝動は加速していて、体育館はすでに半壊状態だ。
このままではいつ校舎が標的になるかわからない。
「本当にありがとう。大好きだよ」
笑顔でそう伝えて、雄太から手を離した。
泣きたい気持ちを押し殺して自分の足でベランダへ向かう。
これでいい。
私は間違ったことなんてしてない。
後悔だってない。
ドアノブを掴んでゆっくりと回す。
化け物はすでにこちらを見据えていた。
ベランダへ出たら、すぐに手が伸びてきて捕まえられるだろう。
ドアを開けて外に一歩踏み出しだその手が掴まれて、教室内に引き戻されていた。
突然のことで尻もちをついている間に雄太がベランダに飛び出していたのだ。
「え……」
呆然として雄太の姿を見つめる。
雄太は窓の向こうで微笑んで手を振った。
その顔に迷いも恐怖もなく、だけど後方には化け物の手が迫ってきていた。
「雄太!!」
郁が叫んだと同時に雄太の体は化け物の手の中に消えていた。
「雄太! 雄太!!」
すぐに立ち上がってベランダへ向かう。
だけど美麗がドアと鍵を締めて立ちはだかっていた。
「ダメ、行かせない」
強い意思を感じさせる声。
「どけてよ! 雄太が、雄太が!!」
すがりついて懇談しても美麗はどけない。
それならと力づくでどかそうとするけれど、美麗は両足を踏ん張って耐えた。
「なんで邪魔するの! 雄太が死んじゃう!!」
叫んで泣いて、美麗の髪をひっぱって頬をはつって。
それでも美麗は動かなかった。
ボロボロと涙をこぼしながら「ごめん。ごめんね郁」と何度も呟く。
窓の向こうで化け物が大きく口を開くと、その中に雄太を放り込んだ。
腕力によってすでに息絶えている雄太の体が口の中へ吸い込まれるのを見て郁はその場に力なく座り込む。
「嘘だ……こんなの嘘だよ!」
だってあみだくじで当たりを引いたのは私だった。
私が1時の生贄になるはずだったのに!
「こんなのひどいよぉ!!!」
郁は大きな声で泣き声をあげ、うずくまって両手で顔を覆ったのだった。
日下部美麗 椎名昂輝 宮木郁 山口理沙
清水雄太 二宮妙子 河島仁 土屋恵子 岩本利秋 安藤清 池田智 須江正
残り4人
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