現し世は桜花の化身

和達譲

;はじまりの雨

;ふるさと


ふるさとの地を離れて七日。

雲ひとつない空とは裏腹に、わたしの心は湿った陰りを帯びている。


いっそこのまま、永久に霧中を彷徨えたなら。

不毛な願いも虚しく、気付けば都が目の前に。


果たして待つのは順境か、逆境か。

これは正しい選択なのか、進むべき道だったか。

確かめる術は、もはやない。

後戻りは、二度と叶わない。


ただ、恵みの雨が降りますように。

家族に幸福が、両親に安寧が訪れますように。

重ねて願うのは、己の屍を超えた未来だけ。




「───お待ちしておりました」



何故ならわたしは、顔も知らないお殿様のもとへ、召し上げられるのだから。


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