第4話 耐久なしの装備
レディロスのテレポートにより一瞬にしてまた知らないところへやってきてしまった。
いくつかの大きな柱が天井まで続き窓からは太陽の光が差し込んでいた。
奥には大きな銅像がありその前には立派な椅子が置かれていた。
「ここが私の城だ」
サンドリーヌ様は手を広げて自慢気に言った。
「サンドリーヌ様、先に自己紹介をした方がいいと思います!」
「そうだったな」
サンドリーヌ様は少し間を開けたあとキリッとした顔つきになった。
「私は六大魔王の一人。サンドリーヌ・フリーデンだ。よろしく」
「……魔王!??」
つい声に出してしまった。
ちょくちょく村の人や敵がよくわからないことを言っていたけれど本当に魔王だったのか。
今生きられていることに全力で感謝…!
「私を知らなかったのか」
「まぁ…、人が来ないような場所に住んでましたので」
余計な事にならないようにてきとうな嘘をついたけれどこれで上手く行くだろうか。
ちなこれは前世で見ていたアニメの知識を参照したものである。
「それなら仕方ないか。それより自己紹介を進めよう」
何とか嘘だとはバレなかったみたいだ。
「私はラウハ・レッドグレイヴよ」
このお嬢様みたいな人はラウハと言うのかしっかり覚えておかないと。
「俺はロバン・ビートレイヤルだ。よろしくな」
筋肉質の塊と命名していたがこれからはしっかりとロバンという名で呼んでいこう。
言ったら絶対にボコられそうだから。
「私はレディロス・シーンリタと申します。以後お見知りおきを」
テレポートをしたのがこの高身長の眼鏡の人だ。
「私はミール・シルフィーネです! 男の子さんよろしく!!」
俺の呼び方が変なのは気になるが悪い子ではないことはなんとなくわかる。
もうその水色髪と整った容姿が物語っているからだ。
「ウチはミュールス・アーリエント。よろよろっ!」
最後のはよくわからなかったが気にしないでおこう。
それとどうやらミュールスで全員の自己紹介が終わったようだ。
次は俺か。
でも名前って前世の名前を使ったほうがいいのか。
そうしたら謎の違和感が生じて変に感じられてしまうかもしれない。
この世界での新たな名前を作るしかないというのか。
俺は頭の中で無難かつ違和感のない名前を考える。
「それじゃあ最後だな」
この名前ならきっといい名だ。
「俺の名はクロノ」
「クロノ…。とても良い名だ」
最終的に俺が決めた名はクロノ。
使える魔法が黒っぽかったのと魔王の仲間になるということは少しダーク感があった方がいいと思いこれにした。
今日から俺はクロノだ。
「クロノ、今日から君は私の幹部である
魔王幹部として風格を持っていかないとな。
キャラ作りは大事だ。
「それとクロノには数人ほどの部下もつけよう」
部下だと。
そんなものこれから魔王幹部としてオーラをガンガンに放つ者にはいらないな。
「それは大丈夫です。俺一人でやっていきますから」
「だが危険になった時にはどうするつもりだ」
「そうなる前にいずれ信頼出来る者でも見つけますよ」
「それなら構わないが。あーそれと私達はもう仲間なんだ。タメ口でもなんでも好きなようにしてくれ」
「さすがにサンドリーヌ様には厳しいですけど皆さんよろしくおねがいします」
俺がそう言うと他のみんなも笑顔で返事をしてくれた。
ふと思い出したがまだ装備を受け取っていなかったな。
「それと装備を…」
「そうだったな。レディロス、連れて行ってやれ」
「承知しました。クロノさんこちらへ」
俺はレディロスの向かう方へついていった。
ほんの少し歩くと大きな扉があった。
その扉をレディロスが両手で開くと中には沢山の物が置かれていた。
「ここは私達が集めてきた装備や宝などを保管する場所です。どうぞお好きな物を選んでください」
俺はさっそく中に入った。
剣や槍、斧、魔法杖までもが綺麗な状態で揃っている。
他にも綺麗な宝石や鎧なども。
隅々まで目を光らせてみているとひとつ気になるものを見つけた。
それは何の変哲もないただのフードのついた黒いロングコートと黒い手袋、黒いブーツだった。
耐久性も無ければ身を守ることすらも出来なさそうなその装備がなぜか気になってしょうがない。
俺がその装備を持つとレディロスが
「それを…」
と小声で言っていたのが聞こえた。
装備は特に外傷はなく最近まで誰かが丁寧に使っていたのかと思うほどに綺麗だった。
そして俺はその装備を羽織る。
その瞬間、俺の体は痺れ頭の中に何かが浮かぶ。
だがそれは一瞬の出来事で何もわかりはしなかった。
「…これにするよ」
「いいと思います」
俺は着たままレディロスと共にみんながいる元へと戻った。
この装備はいかにも魔王幹部って感じがしていいな。
あとは強い仲間を見つけるだけだ。
「!?」
元の場所へと戻るとみんなは俺を見るなり驚いた表情をしていた。
それも仕方ないことだろう。
なんせ装備を貰うと言っておきながら装備とは言えない服を選んだのだから。
でも俺はこれが一番いいと感じたのだから異論は認めない。
「…良いのを選んだな」
サンドリーヌ様は見る目があるみたいだ。さすが魔王。
「よし、クロノも加わってくれたところでこれから会議を行う。会議室へ向かうぞ」
一体何の会議をするのだろうか。
気になりながら俺は会議室に行くみんなについていった。
@ @ @
ここはデーリチャフ国王による横暴な政治を受けるファーリアス王国。
そして今、ファーリアス王国は貧困層が多くその上食糧難という危機に陥っている。
しかしデーリチャフ国王は何もすることはない。
それを見かねた他国が何度かファーリアス王国に侵攻を行ったがすべてが失敗に終わった。
それの最大の要因は戦力と貴族の権威の強さである。
ファーリアス王国は戦士や貴族の優遇が行われている。
その為数多くの戦士や貴族が集まっているのだ。
だがそのファーリアス王国の戦力であるグランドが死亡した。
もちろんデーリチャフ国王は怒り狂った。
「お前、誰に殺られたんだ。グランドは誰に殺られたんだと聞いているんだ!! 答えろ!!」
「はっはい! 情報によりますと六大魔王であるサンドリーヌの仲間に倒されたとのことで」
「仲間?
「詳しい詳細は不明ですが黒髪の少年のようだったとのことです」
デーリチャフ国王は怒りに任せに手に力を込め近くにあったグラスを弾き飛ばした。
「そんなやつはサンドリーヌのとこにはいなかったはずだぞ」
「もしかしたら新たな
「チッ、面倒なことをしやがって。サンドリーヌめ。おいお前準備を始めろ」
「わかりました!!」
命令を受け部屋を去っていった。
部屋に一人椅子に座り込んでいるデーリチャフ国王。
拳をテーブルに叩きつけた。
「サンドリーヌ。お前の好きなようにはさせないぞ。民の苦しみは私の生きる糧だ。私を殺そうとするのならば殺してやろう」
デーリチャフ国王は大きな声で笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます