最強のエスパー




「早くマトリクスコピーを解きなさい!!!」


 二五四は自分の目を疑った。

 ニセモノの最強のエスパーの身体が薄くなってきている。

 いや、消えかかっているのだ。

 二五四の両の手はもう、ニセモノの最強のエスパーの両の手に触れる事はできない。

 通り過ぎてしまう。

 どこもかしこも。


 どういう状況なのか。

 透明人間だと、ニセモノの最強のエスパーも少年も言っていた。

 能力で透明になろうとしているだけなのか。

 それならいい。

 また能力を使って戻れるならば。

 けれど。

 嫌な予感が増幅する。

 消滅してしまうのではないか。


 望みを、

 マトリクスコピーをした最強のエスパーの望みを叶えるのではないか。

 ニセモノの最強のエスパーは、本物の最強のエスパーができない事をできるのだ。

 死ぬ事が、できるのだ。


(強制的に眠らせれば、今使っている能力が止まる?いえ、眠ったとしても、能力が止まるとは限らない。だったら、)


 どうすればいい。

 どうすれば。

 マトリクスコピーをした最強のエスパーの望みではなく、もしも、消滅がこのニセモノの最強のエスパーの望みだとしても。

 目の前で死のうとしているエスパーを見過ごす事など。

 きっかけは、確かに、自分なのだ。

 暴いたのは、自分。

 ニセモノだと暴いたが故の、結果なのだとしたらなおさら。


(私の能力で強制的に眠らせてのち、脳の働きを限りなく低下させれば恐らくは、この能力は止まる、はず)


 二五四が覚悟を決めて、うっすらと輪郭しか残っていない両の手に自分の両の手を重ねわせようとした時だった。

 誰かが、二五四の肩を優しく触れたのであった。

 そして、その瞬間。

 ニセモノの最強のエスパーが完全に姿が消えてしまったのであった。











(2024.1.27)



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