肉体の再生




 最強のエスパーであるあの方は、不老不死だった。

 死に際を迎えた瞬間、肉体が再生するのだ。

 あの方の意思なのかそうでないのか。

 尋ねた事はないので、わからない。

 ただ、死ねないという事実だけは、知っている、だけ。だ。


 度重なる戦。

 エスパーとエスパーではない者同士の戦の時も。

 エスパー同士の戦の時も。

 エスパーではない者同士の戦の時も。

 あの方は時に頼られ、時に自ら赴いて、戦に加わり、終末を見届けてきた。

 終末を、幾度も幾度も見届けてきたのだ。

 そして、これからもきっと。

 終わりの見えない戦の終末を、見届けていくのだろう。

 望むと望まざるとにかかわらず。


 疲れたのではないか。

 本当はもう、自らの終末を迎えたいのではないか。

 だからこんな人が訪れる事のない小さな星で、ひとりぼっちでひっそりと暮らしているのではないだろうか。


 あの方の意思を尊重して、私たちは声がかからない限り、この星を訪れる事はなかった。

 訪れるのは大抵、農作物が取れすぎたから持って行かないかという、平和な声かけを受けてから。

 訪れた私たちを出迎えるのは、静かな世界。穏やかな世界だ。


 どうか。

 願うのだ。

 このままずっともう、この方の身が削れるような事が起きないように。




 そう願っていたのに。




 こいつは。

 マトリクスコピーして、あの方を装うこいつは、何だ?











(2024.1.26)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る