プロローグ(共通)
「校門のそばにある伝説の桜の木の下で好きな人に告白すると、永遠に結ばれるんだって」
突然どこかのゲームのパクリのような話をする幼馴染を前に、オレはほぉんと曖昧な発音で返事をしながら目の前のプリントの未記入欄を眺めていた。
「おい、学校に関する話しろって振っといて、その反応はないだろ」
「だってオレが聞きたかったのは部活決めの参考になる話だよ、誰も告白スポットの話なんか聞いてねーよ、大体そんなところでの告白なんか全校生徒への晒しもんみたいなもんだろ、相手も断りづれえわ」
「それはまあ……そうかもね」
片手で回し続けるシャーペンはうまい具合に止まることを知らない。延々と2枚のプリントを見比べては考え込み、書こうとしてまたもう一枚別のプリント、『校内部活動・同好会一覧リスト』を頭から眺めるのを繰り返している。いつまで経っても『希望する部活動』の項目に何も書き込めず、ついに提出最終締め切りである今日が来てしまった。
「ほんっとめんどくさい、なんでうちの学校は新入生のクラブ活動参加が必須なんだよ」
「別に半年経ったら辞めてもいいんだからどこでも良くないか?」
「もし合わない部活に入ったらその半年が地獄だろ!?あー、いいなあタカハシは、生徒会入りしてるから強制入部制免除されてるんだろ」
「ははは、相馬も入れば良かったのに」
タカハシはこう見えて学年1位の優等生だ。
入学早々に生徒会立候補し、オレがぼんやりしている内にいつのまにか当選して立派に活動している。記憶力がよく、まだ葉桜の季節だというのに既に同学年の生徒の顔と名前はだいたい覚えているらしい。
オレと隣の席になってから、何かと情報をくれる親切な奴だ。
「決められないならもうこのまま空欄で出しちゃえば?そういう奴は人数枠が空いてる部活に割り振ってもらえれるんだぜ」
「やだよ!せめて自分で決めて入りたいわ。はあ、今から部活動見学しようかな。なんかプレッシャー感じるから嫌だったんだけど……」
「今日が提出締め切りなのにいまから見学!?遅くないか!?」
「悪かったな、どうせオレは夏休みの宿題を8/33までかけて泣きながらやるタイプだよ」
「それは間に合ってねーよ。まあ、まだ数時間あるし見学できないって訳でもないか。ただ活動曜日が決まってる所もあるから、今から見るのができるのはこの中だと……」
『校内部活動・同好会一覧リスト』のプリントにタカハシが蛍光マーカーのラインを引く。もっと早くにこいつに相談すればよかったのかもしれないと、今更ながら思う。
「まあ、このへんが妥当じゃないかな」
タカハシがプリントを回転させ、オレのほうに向けた。
真っ先に目を引いたのは・・・
>ボランティア部
>国際交流同好会
>柔道部
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