第268話 流れるように
茶が出され本格的に打ち合わせに入ってしまいました。
このまま続くと晩御飯に間に合うのか気になる俺、クルトンです。
お茶請けは既にテーブルに有るが小腹がすいたので以前テホア達に渡したナッツ棒をバッグから取り出しかぶりつきます。
うん、強烈な甘みとナッツの油分がカロリーの高さを主張していて、少ない量でも満足感が有ります。
ここまで甘いと日持ちもするし携帯食として結構重宝するんだよね。
「・・・ちょっと、行儀が悪いわよ」
「そうですわ、せめて小分けにして口に入れないと見苦しいですわよ」
ソフィー様とチェルナー姫様からお小言を頂戴する。
すみません、小腹がすいてしまって。
「・・・」
「・・・」
スッとアスキアさんが俺の横に来て耳打ちする。
「(クルトンさん、お二人はクルトンさんを責めているのではなくて、”私たちにもそれを寄越せ”って言ってるんですよ、いい加減この位は察してください)」
分かるかぁ、そんなもん!!
「「はぁ~~」」
何ですか、お二人とも「分かってないわねぇ」みたいなそのジェスチャー。
「良いから寄越しなさい」
はいはい。
改めてカバンからナッツ棒を仲良く全員分取り出し配ります。
俺はちょっと前まで平民だったんですから、ちゃんと言ってくれないと分かりませんよ、全く。
それに高カロリーで長期の保存が利くように高価な砂糖結構使ってるんですからね、コスト結構かかってるんですよ。
そうごちるが俺のそんな言葉は全く聞いてない様で、既に皆がナッツ棒モシャッている。
(モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ)
静かだ。
・・・美味しいですか?かなり甘いんですけど。
「悪くないわね(訳:メッチャ美味い)」
「強烈な味ですわね、渋めのお茶と合いそうですわ(訳:メッチャ好みの味)」
女性陣2人がそう言う。
「正直旨い、この量で腹持ちもよさそうだ」
「歯にくっつきますね」
其々感想はある様だが味については概ね好評の様だ。
その後も皆がナッツ棒を片手に持ってモシャりながら打ち合わせは続いていく。
「なら、学者連中との打ち合わせが必要ね。でも人員は厳選しないと・・・情報が漏れてしまったら一大事だわ。
命知らずのハンター達が群がるわよ」
「学者連中は基本研究以外はどうでもいいと思っている節が有る、どの情報が機密なのかすら興味ないだろう。
そうだな・・・予算なんかを人質にしないと情報が漏れ放題になるだろうな」
「誓約魔法で対処します、誓約の合意を得られないなら人選から外しましょう」
話しがどんどん進んでいく、もう俺必要なくね?
巣の位置情報も追記した地図準備したし。
「とりあえずは元老院と騎士団でこの件は進めましょう。早速陛下と宰相閣下に報告してきます。
それとクルトン、パジェの件ですけど4日後に初回の技能検証の時間が都合着いたそうです。
その後は週に2回ペースで時間を取るそうですから、時間などの詳細は追って連絡がいきます。
イエレンと一緒に対応してね」
承知しました。
ようやくと言えばそうだが思ったよりパジェのスケジュール調整早かったな。
女性達から「もう一つ寄越せ」とナッツ棒を集られ、それを渡した後に部屋を出る。
ナッツ棒補充しとかないといけないな、今で結構消費した。
歩いていると部屋の中ではずっと大人しかったポムが、俺の顔を見上げながらしきりに足元にじゃれつく。
・・・はい、オヤツ。
サラミ状にした狼用の減塩ハムを渡すとブンブン尻尾を振って口に入れ、モッチャモッチャしだす。
旨かったんだろう、尻尾が余計ブンブンしていて・・・犬だよな、もう。
今日はそのまま部屋に戻り、晩御飯の時間になるまで気分転換に指輪を一つ拵えた。
・
・
・
よし、時間だ。
食堂に行って晩御飯食べて来よう、今日のメニューは何かな~。
有難い事にポム、プル、ぺスは獣にも拘らず食堂に入る事を許されている。
定期的に俺の魔法で作り出した水で念入りに洗浄しているから抜け毛も気にならないし匂いもほぼ無い。
獣であれば自分の縄張りを主張する為に体臭は重要な役割を果たすが、頭の良いポムはそれを消す事に抵抗を見せなかった。
獣でありながら自分は人間であると主張している様にも見えて俺の方が戸惑ったことも有る。
すべての行為に対しその意味を理解しているみたい。
配膳コーナーに並びポムの分も含め食事を貰う、今日はパンと根菜と鶏肉のシチュー。
そしてワインが一杯ついている。
「この子は本当に良い子だねえ」
ニコニコ顔の配膳のおばちゃんがポムを見ながら骨付き肉を渡してくれた。
勿論これはポム用だ。
席についてたっぷり時間をかけて食事を済ませると、改めて食堂内を見渡す。
ここにもだいぶ世話になったな・・・。
いつも旨い飯を提供してくれて、しかも街より割安だし。
そう言えば夏なんかは食材が痛むのが早いから歩留まり考慮して食材多めに仕入れないといけないんだっけか。
配膳のおばちゃんがそう言ってたのを思い出す。
なので食材の受け入れ量が増えて「地味に面倒臭いんだよねぇ」って言ってた。
おばちゃんに「保冷庫は有るの?」と聞くと、保冷蔵が有るそうだが古いし蔵と言う割に小さく、冷え方もイマイチらしい。
保冷設備はそれなりに高価な設備なので、より大型で高性能な物への入れ替え申請しても優先順位の都合で予算が確保できずにいるとの事。
・・・お礼に拵えましょうか?
「え?作るの。作れるのかい、本当に?」
ええ、以前も箱サイズのですけど下宿先へ拵えた事ありますし。
「・・・ちょっと予算の話は私は分かんないから親方呼んでくるよ」
ええ、お願いします。
もしもっと上の人に話し通す必要あれば教えてください。
俺の感謝の証としての提案だが、保冷設備販売している業者さんの仕事を奪うような事をしたいわけでもない。
だから筋は通さないとまずいよね。
俺は業界を荒らしたいわけではないんだから。
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