第256話 ゴーレム
以前、やっと発見する事が出来た金属、チタンとアルミが有る事を思い出し、余計な事をひらめいた俺、クルトンです。
「?何か思い出した事が有る様だな、言ってみろ」
ええ、鳥ではありませんが空を飛ぶゴーレムが作れそうです。
地を駆ける獣や虫型と違ってかなりの重量制限有りますが重要な書簡の運搬に絞って使えば問題ないと思います。
「ほう!つまりはグリフォン並みの期間で書簡が届くのか?」
・・・多分もっと早いです。
「なんと!ぜひ実現してほしいものだ。
色々問題有るだろうから国家で管理する事になりそうだがな」
人が乗る飛行機を製造するにはかなりの年月を要するだろうが、ラジコン程度の大きさの飛行機なら直ぐにでも試作機作れそうだ。
付与魔法と魔素が有る時点で動力と燃料に相当する問題は解決した様なものだから、機体と姿勢制御の術式開発、猛禽類やそれこそグリフォン、飛竜の被害対策を行えば何とかなりそうな感じ。
矢が届かない上空を飛行すれば基本人が邪魔する事も出来ないだろうから。
つまり飛ばすだけなら直ぐ出来そう。
コルネンに戻ったら材料揃えて作ってみよう。
出来るだけ早く試作機を王都に持って来いと宰相閣下からの支持を受け退出する。
正直言って玩具の様なものを作るのは純粋に楽しい。
それを使って遊ぶのも。
コルネンに帰るのが今から待ち遠しい。
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「インビジブルウルフ卿、治癒魔法協会から書簡が届いております」
部屋に戻ると扉の前に護衛の騎士さんと一緒に侍女さんが待機していた。
書簡の内容は多分顔合わせの日取りの件だろう。
書簡を受け取り部屋に入る。
封を開け中を確認すると思った通り顔合わせの日程が書いてあるけども・・・、
(俺が候補として挙げた日取りを完全無視だな、自分たちの都合に合わせろって事か、ハア・・・)
俺も暇ではない、日取りの希望日を五つ程提示したのだが全部却下されている。
その理由を一言でも添えられていれば別に気にしないのだが「ここしか予定が開けられない、合わせられなければ来なくていい」みたいな事が絶妙に失礼にならない様な言い回しで書いてある。
じゃあ、いいか。
顔合わせしなくても良いから中だけ勝手に見て来よう。
通常なら向こうの都合に合わせても問題ないのだけれどあまりこちらが譲歩する実績を作りたくない。
今回の件は”俺が顔合わせを拒否した”ともとらえられかねないが、少なくとも王族や俺に近しい主要貴族、それに何といっても『来訪者の加護』持ちの皆さまから今までの俺の行いは理解頂いているので問題ないだろう。
治癒魔法協会の運営費は貴族からの寄付、治療費、治癒魔法師への指導料などの他に国家から予算が捻出されている。だから下世話な話だが対応を間違えれば敵を増やすのは向こうだ。
早速この返事に対しては明日にでもプサニー伯爵様に告げ口してこようと思っているしね。
これはこれでちょっと楽しみ。
そして「じゃあ、顔合わせしなくて良いので見学しに近々伺いますね」と、しっかり儀礼に則り書いた書簡を作ると、アスキアさんの使用人へ料金を支払い届けて貰う様にお願いした。
さて、向こうに伺う(忍び込む)のは俺の都合で良くなったから、今ある仕事を熟してしまおう。
薄々感じていた事だが以前からスクエアバイソンのドックや王城で浴室を造ったり温泉なんかを掘削してみたところ、ハウジング内でクラフトスキルを発動させると僅かばかりでも抵抗してきたこの世界の物理現象をほゞ無視できるみたいだ。
魔力消費量との兼ね合いになるが素材、資材を準備したらハウジングとクラフトスキルの合わせ技で拵えた方が時間も短縮され品質も上がる。
ハウジングの魔力消費を考えたうえでどうしたら良いかの判断にはなるけど、今となっては併用した方が良いだろう。
じゃあ、これから材料仕入れに行って来ようか。
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騎士団修練場の一角を間借りして昨日購入した資材を搬入してもらっている。
木材、鉄やニッケルが中心で川砂もそこそこある。
「何を作るんだ?」
そう言いながらレイニーさんが近寄ってきたので返事をします。
チェルナー姫様の鏡台とゴーレムを3機程拵えます。
「・・・ゴーレム?この前騒ぎになった奴か」
はい、その認識で間違いないです、スンマセン。
一言謝ってまずは鏡台から。
既にハウジングは展開しているのでサクッと作ります。
以前ソフィー様用で拵えた者より高さが有るものにしました。
高さに合わせて縦に長い姿見が特徴の豪華な物です。
もう一つ馬車の中に置けるコンパクトな物を拵えてそれぞれ傷防止の為に布で包みます。
後は指示された場所へ納品すれば終わり、とってもスピーディー。
次はゴーレム、ちょっと足の長いカブトガニ型の物を1機づつクラフトしていく。
鉄とドライカーボンを中心に各パーツを製造、組み上げる前にそのパーツの内側に付与術式を彫り込んでいく。
基本6本足の蜘蛛型でカブトガニの外側の殻を乗っけて覆った感じなので、脚や胴体には動力、制御なんかの付与、殻側には魔素から魔力への変換術式と放熱、何かしらの攻撃から守るための防御術式を刻む。
作っているうちに「ひっくり返った時に姿勢を戻す機能必要だよな」とか、「大型の獣から咥えられたときどうしよう」とか色々解決必要な事案が思い付き比較的スペースが開いていた殻の方に術式を追加していく。
こんな事が有り1機作るのに結局2日を要した。
その間、先に拵えた鏡台はチェルナー姫様に届けられ、大層お喜びになられたとの情報を頂く、良かった。
試作と言えど正式にゴーレムを世に出す為にはそれなりの完成度を求められるから手は抜けない。
そしてこれもまた技術資料を整えていかなくては。
これも何れは俺の手から離れ、独り立ちしていく作品になるだろうから。
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