第151話 そよぐ風に乗る様に
そのまま王城内から魔力量に物を言わせて索敵魔法を展開している俺、クルトンです。
頬に風を受けている様な錯覚を感じてしまう程に濃厚な魔力を放出して目標を索敵していきます。
条件は二つ、ロミネリア教信者、又はその協力者である事。
悪党共お約束の下水道等、地下まで索敵範囲を広げ、文字通り虱潰しに魔法自身が持っている選別機能に身を任せどんどん魔力をつぎ込む俺。
「ちょっと・・・この魔力量大丈夫なの?馬たちが怯えてないかしら。
アスキア、何かあるといけないからこれを持って宰相閣下に事情と今の状況を説明してきて頂戴」
「承知しました」
そう言うとソフィー様が左人差し指から指輪を外し、それを受け取ったアスキアさんが部屋を出ていきました。
その間も王城から王都の外周に向かって索敵魔法の網がそよぐ風に乗る様に広がっていき、対象の人間をマーキングしていく。
この国は居心地がいいのだろうか、全部で500人を超える対象がマーキングされ脳内でその位置情報が黄色の点で認識された。
しかし・・・索敵魔法の条件の内容の都合で協力者の定義が緩かったのだろう、信者だけでなくロミネリア教信者以外、彼ら相手に商売しているであろう人なんかも炙りだされる。
黄色の点の脇に表記されている補足事項に『信者』以外で『商人』とか『農夫』なんてのもある。
どうしようか、この人達に対しては『布教をしない』といった制約では何も意味をなさないのではないか?
ロミネリア教と知らずに協力している人ももしかしたらいるかもしれないし。
・・・とりあえず信者のみへ『制約』を行い様子を見よう。
これに見せしめの効果が有ればそれでよし、なければ次の手を打つ。
追加で信者のみに限定、赤の点でマーカーを上書きする。
閉じていた瞼をゆっくり開けてソフィー様にこれからの行動を告げる。
「目標の選定は完了しました、王都内に254名、その内王城内にも12名対象者が居ます。
王城内から始末を付けようと思いますが構いませんか?」
「アスキアが戻ってくるまで少し待って頂戴、覚悟はしていたけれど王城内での行動はより慎重でなければなりません、こちらが犯罪者になる可能性は極小でも潰す必要があります。仮に私へ疑念を向けられたら確実に面倒な事になります」
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30分もしないうちに宰相閣下を伴ってアスキアさんが部屋に戻ってきた。
「クルトン、事情は理解した。取り合えず王城、王都内で今日から明日の2日間の内に突然『昏睡』してしまう者が大量に発生するという事でいいのだな」
はい、その通りでございます。
それ以上でも以下でもありません。
「分かった、ではその混乱に備えよう。
『原因も分からず突然昏睡してしまう者』が大量に発生するとの事前情報を入手したのだ、対処せねばなるまいてぇーーー(棒)
準備に2時間くらいかかりそうだのうぅーーー(棒)」
それだけの時間であれば問題ないでしょう、あ、独り言ですよ。
「茶番は終わったかしら。
それでこれから貴方は王都内を走り回るのでしょう?時間も少々あります、今のうちに軽くお腹に詰めていきなさい。
空腹では思考が卑屈になります」
はい、確かに空腹は心が貧しくなった様な錯覚をさせますからね、大事な事です。
すかさずお付きのメイドさん達が軽食の準備をはじめ15分と経たずにテーブルにサンドイッチと紅茶が並んだ。
モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ
「あらあらシンシアさんは命知らずね(笑)、まだ称号を下賜されていなかったとはいえこの狼の通る道を塞いだなんて」
モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ
「いえ、そんな事全然わかって無くて・・・友達と一緒に村の為になる仕事をしようとして・・・」
モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ
「良い教訓になりましたね、望んでいない運命に翻弄される事はこれからも多々あるでしょう。その都度考える事、決断する意思を手放さない事です。それが無ければ人は成長しませんよ」
モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ、モッシャ
・・・もしかして俺、貴族ジョークでディスられてるんじゃね?
並べられたサンドイッチの半分以上を俺が平らげ取りあえず腹は落ち着いた、メイドさんありがとう。
シンシアとソフィー様の談笑に付き合い食事をとっていたがそろそろいい頃合いだ、動くとしよう。
「では行ってきます」
「ええ、ご武運を」
ソフィー様、不吉な事言わんでください。
戦いに行くわけではありませんよ?
そう言い残し狼は風に溶け込んでいった。
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