第135話 方針

翼竜と聞いてロマンを感じはするがやはり捕獲は難しいと諦めた俺、クルトンです。


因みに分かりやすく言えば翼竜は大きな鳥類。


この世界の摂理なのか『空を飛べる種』は体重に見合わない明らかに小さな翼であっても空を自在に舞う。

虫のように高速に羽ばたいているでもないのにだ。

物理的な合理性によるものではなく種族として『飛べる事』が世界の理に組み込まれているからの様に感じる。


ワイバーンの様な飛竜ならまだしも西洋のドラゴンと呼べる様な超巨大な古龍も飛べるらしいから。

目撃例だけならここ100年程で数件あり、その中でも移動途中の商隊の真上を横切っていく事例も合った様でそこそこ信憑性が高い情報らしい。

商隊中の人達が一斉に目撃してそれはまさに巨大な商船が空に浮かんでいる様だったってさ。


ただ古龍は未だに生息地の見当もついていないとか。




当然人類は飛べないので飛べる騎乗動物に頼るしかない。


もし将来飛行機の様な物を作ったとしても『飛ぶために作られた人工物』が世界の理に認められなければ、それは飛ぶ事はかなわないのではないか?

想像でしかないけれど。


発明した瞬間にこの世界に認められるようなアプローチをしなければいけないんじゃないかな。

具体的にどうすればいいかは思いつかないが。


まあ、とりあえず事業では陸上を移動する為の騎乗動物に狙いを定めていった方が当たりを引く確率上がりそうだ。




取りあえずどこに行けばいいでしょうね?


「地竜なら一番楽なんだろうが話を聞くに陛下はそれを望んではいないのだろうな、やはりスレイプニルあたりか・・・ここからなら黒の森、緑魔の森、西南に行けばカサラ湿原か」


知らない地名が出てきた、カサラ湿原とは?


「ここからなら10日程、お前のスレイプニルと馬車ならその半分くらいで行けるだろう。ここに居るのは湿原に適応しているスレイプニルでな、とにかく悪路に強いらしいが正直良く分からん。

俺も捕獲作戦を行ったが結局発見出来ずじまいだったし、捕獲例は文献に残っているだけだが10例も無かったはずだ。

つまり近年では捕獲に成功した事例が無い。

足跡はよく発見されているから生息している事は間違いないんだがな」



結構特殊なスレイプニルみたいだ。

これも諦めた方がいいな、特殊な環境に適応した種はそれ以外の環境下では飼育の難易度が跳ね上がりそう。


余裕が出てきたら考えるが事業始動早々に手を付ける事案じゃないな。



「ならポンデ石切り場か、ポポを捕獲した実績も有るがそもそもあそこの獣はデカいからな」


そうですね、そこが良さそうですね。

候補の一番にしておきましょう。



下宿先に帰ってくるとシンシア含め皆が既に戻っていた。

女性陣が買ってきた衣類を前にやいのやいの話をしている。

今、男の俺は近づかない方が良さそうだ。


自分の部屋に戻りテーブルに前世で言うA4サイズ程度の紙へシンシアの治癒魔法習得に対するカリキュラムを箇条書きにくしていく作業を行う。


とは言ってもコーチや教師の様な事は経験が無い。

ただ兄弟達へ畑仕事や家事、空手に柔道と言った事は教えた事が有るのでそれを参考にする。


山本五十六の有名な格言を丸パクリして実行しただけなのだけれど。


まずは俺の治癒魔法を見せて

理論的にその内容を説明し

実際シンシアに魔法を使わせて

成功したら正しく評価し

失敗したら一緒に問題点を洗い出す。


都度目標を定め

繰り返し練習し

成功、失敗、発現した効果の大小に対してどうしてそうなったかシンシア自身が考え

それと俺の考えとの齟齬を確認し合い修正して

再度改めて練習を繰り返す。



効果の大小もあるが、騎士団が求めているのはおそらくいかなる状況でも安定して行使出来る様に訓練された治癒魔法。

いつでも平常心で治癒魔法を行使できるように練習あるのみだな。

クレスの弓の練習もそうだったなあ、懐かしい。


治癒魔法についても分類ごとに分けて説明しないとな。

自分もなんとなく使っていたのが正直なところだから、書き出してみると割と知識に穴が多いのが分かる。

よくこれで治癒魔法発動したな、スキル、世界のアシストマジ優秀。


具体的に治癒魔法と言ってもどんなものに効果を発揮させるか・・・

体力の回復

意識の回復

外傷の治癒

欠損部位の再生

解毒、これは神経毒とか種類に応じてになる

伝染病なんかの原因になりうる細菌、ウィルスの消毒と体内からの除去

魔法で受けるデバフの解除

過労や加齢により低下した能力の一時的解消、バフかな

後は俺がシンシアの膝に施した分解、再構築

こんなところか?


治癒とは違う物もあるかもだが俺のイメージではこんな感じ。

この中でシンシアに教えるとしたらまずは体力の回復、意識の回復、外傷の治癒、解毒の四つだろうな。




ここからは体力の回復、意識の回復、外傷の治癒、解毒についてスキルにある情報を記憶の表層に掬い上げ内容を確認、どうやってシンシアに伝えればいいか言語化の作業を進める。


いきなり「赤血球がー」とか「DNAがー」とか言われても理解してもらえないだろうから「こんな感じ」って丁度いいイメージを言語化するのが大変だったが・・・こんなもんか。


シンシアのリハビリの終了目安が付くまでには、簡単な冊子にでもして準備しないと俺が説明できない。

アドリブは苦手なのよね。

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