第85話 腕時計を完成させて
なんとかなってホッとしています。
帰る足取りも軽い俺、クルトンです。
しかしオリハルコンがあんなに光るとは予想しておらなんだ。
光を反射して光るくらいは分かるがあれは間違いなく発光していた。
どんだけ魔素吸収したんだか。
何気にあれだけ暗かった『黒の森』が夜でも明るかったもんな。
あまりにも魔素が濃くて、それが理由で空気の透過率下がって森の中まで光が届かなかったんじゃないかと仮説を立てるが
だとすると、それこそどれだけ森の魔素を吸ったんだ、この腕時計。
もう姫様が生きてるうちは魔力充填しなくていいんじゃね?
まあ、今回の事でオリハルコン自体がやべえ物質だって事はよく分かった。
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コルネンに帰還して10日後、当初カサンドラ工房内で腕時計の完成お披露目会を開催する・・・つもりだった。
工房には到着した翌日には顔を出して「仕上がりを皆で見ましょう」と言ったところ『品評会』開催の話にまで盛り上がり、ならば手伝ってもらった工房の奴らも呼ぼうとその関係各所への通達期間を設けたのと会場の確保で時間がかかった。
なんでも領主であるカンデル侯爵様も参加したいと申し出が有った様だが、『国王陛下を差し置いてそれはどうなんだ』というデデリさんからの横槍が入って控えた様です。
なので製作に携わった工房、職人たちとその家族だけでの品評会。
それでも100人くらいにはなるらしい。
で、何故か俺の親族という事でアイザック叔父さんもここにいる。
「腕時計なんて初物なんだろう?縁起が良いじゃないか」
これが見に来た理由の様です。
100人とはいえカサンドラ工房には入りきらないので地域の会合施設、魔獣襲来時はシェルターになる頑丈な建屋を借りての開催。
ほんと10日くらいの準備期間で良く借りれたな。
会場はちょっとした立食コーナーまで設置してあって製品の展示会の様。
ん?あっちにはオルゴールに懐中時計、付与を施した馬具にステンレス製の食器やナイフや包丁、鍋などがテーブルに乗っていて・・・、
どれもかなりの意匠を凝らした作品ばかりで・・・職人さん達の腕を披露(自慢)する為の展示会ですね、うん俺理解した。
俺の仕事は完成した腕時計を所定の台に乗せ、職人たちからの質問に答える役割。
開場して腕時計お披露目の前に展示品の観覧時間を設けていたので、段取りでは俺が品評会会場に入るのはその後になる。
いったん控室で休憩しに行く。
準備は台に腕時計乗せるだけなので控室でゆっくりお茶を飲んで出番が来るまでまったりしてるとお声がかかる。
会場、扉の前に到着、そしてゆっくり扉が開く
俺は深緑の外装箱がのった盆を両手に持って静かに台まで歩いていく。
台の有る中央まで茶褐色のカーペットが敷かれ、その両脇に居る職人たちの間を歩いて・・・職人たち?
いや、職人たちももちろんいる、かなりおめかしして。
軽装鎧を着ているいつもの俺がかなり浮く位きらびやかだもの。
ただ、成人前と思われる人から90歳にはなっているであろう方まで、年齢は様々だけれども女性かなりいる、全体の半分以上は確実にいる。
・・・パメラ嬢までいるじゃねえか。
あ、カンダル侯爵嫡男のセリシャール様も、まだ爵位継いでないからセーフとかそんな屁理屈か?
しかし事前の情報と規模が違うぞ200人位いる、周りのスタッフ入れたらそれ以上、王都に知れたら問題にならないかコレ。
最初は出来栄えを皆で称え合うそんな内輪の飲み会程度のつもりだったのだけど。
そうはいっても事は進んでいく。
中央の台に箱を乗せ、蓋を開くと軽やかで優しい音楽と共に淡い光を発する腕時計が現れる。
相変わらず音もたてず滑らかに動く秒針が目を引く。
「「「「「「「おおーーー」」」」」」」という声と共に皆が中央に寄ってくる。
これだけの人だから危ない、ただこれは予測して役割分担決めていたのだろう、スッと職人さん達がロープを張り交通整理の様に人をさばいていく。
練習してたのかなかなり手慣れた感じ、素晴らしい。
ここで段取り有った通り俺からの説明に入る。
「えー、本日は国王陛下より拝命を受けました、チェルナー姫様の成人のお祝いの品であります『腕時計』の品評会となります」
つらつらと挨拶をすまし、すぐに腕時計の説明に移ります。
職人さん達の目がギラついてるので。
魔法付与内容は姫様の生命維持に関わる為公表は差し控えるが最上のものを惜しみなく施した、来訪者の加護持ちの姫様でも屋外で我々と遜色ない活動ができると説明。
「それは素晴らしい!」
との声が上がる中、涙ぐんでいる年配の女性もいた。
姫様の関係者かな?
次は材質、機能についてプレゼン。
使用した材料とその精錬、加工方法を公開。
オリハルコンやアダマンタイトなんかの時は質問攻めになった。
そうなるよな、今までのこと考えれば。
どうやったところでそれまでは俺のスキル以外で加工する事が出来ないアダマンタイトやオリハルコンであったが、「俺のスキルで道具作ればいいんじゃない?」と思い立ち『溶解炉』や旋盤、フライスなどの『加工機』でキモになる部品である発熱装置、切削刃にアダマンタイトとオリハルコンを駆使して製作。
これの道具を操作する事で一般職人も加工可能となった事を説明すると職人達がフィーバーし出した。
・・・なかなかおさまらない。
無視して続ける。
各パーツが持つ役割、そこに使用している素材、この内容を設計図として既に製本している事など。
その度に職人さん達の大きなどよめきが起こり実はサクラなんじゃないかと俺が疑い出した頃、スッと手を挙げる女性が一人、パメラ嬢だ。
質問を受け付けます、ハイ、どうぞ。
「チェルナー姫様の成人の祝いが終わった後、魔法付与はともかく腕時計として同じ物は注文できるのかしら?」
周りがザワザワしだしました。
そうですよね、そうなりますよね。
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