第31話 作戦会議
「というわけで、第一回天下五剣攻略会議を開催します!」
デートも終わり次の日、ダンジョン内でZPを使って作り出したホワイトボードを叩いて高らかに宣言した。
俺の宣言とは裏腹にフィオナ、あいな、オタメガの反応は微妙そうな顔をしていた。
「いや、なんでそんな顔してんのさ! 鬼丸国綱の所持者がここに攻めてくるだよ! 俺達はそれを倒さないと!」
「いや〜。ぶっちゃっけやれることは全部やったくない? 魔物達の配置は終わった事だし、あとは鬼瓦さんが来るのを待つくらいしかなくない?」
「んんっ、まあそれはそうだけどさ……なんか鬼瓦さんの情報について調べるとかさ!」
「魔王様! 恐れながらこのフィオナ発言させてもらってもいいですか?」
フィオナが手を上げた。おぉ、流石フィオナ。何か言ってくれるのか。
「どうぞ!」
「魔王様が負ける事などありえないので作戦を考える必要なぞないかと!」
ズコーっと俺は地面に倒れる。
そうだった。フィオナはこういう時に役に立たないのだ。
「俺としてはここまで辿り着いて欲しくないの! その為に作戦を考えようよ!」
うん。マジで来てほしくない。出来ればというか普通に戦いたくない。前回マスラオさんと戦った時ですら気を遣ったのに今度は天下五剣。しかもテレビ局付きだぞ。
「むー。では、私が討って出るというのはどうでしょう! 私であれば天下五剣なぞ切り捨てて見せましょう!」
えっへんと胸を張るフィオナ。
「うん。ダメ」
「な、なんでですか!?」
「だってフィオナが行くとすぐ殺そうとするじゃん」
「……しませんよ?」
ヒューヒューとならない口笛を吹きながら目を合わせないフィオナ。
「はい、ダウト。実際フィオナが殺す殺さないはともかくとして、フィオナを1人で行かせたくないんだ」
「はい? 何故ですか?」
「鬼丸国綱の伝承でござるな」
黙っていたオタメガが口を開いた。
「そ。あいなが言うには天下五剣はそれぞれ伝承通りの力を持ってるんだろ?」
「うん。そうだよ……でもそれとフィオナ様が出てほしくない理由なにか関係あるの」
「あるよ。あいなは鬼丸国綱の伝承って知ってる?」
「うん。たしか名前にもあるけど鬼を切った刀だよね?」
「そう。でも、もしかすると鬼以外にも効果があるかもしれない」
「でもそれじゃあ伝承通りって事にならなくない?」
「うん。そうなんだけど、じゃあそんな鬼にしか効かない刀を国がわざわざ渡すのかって話なんだよ。だから多分だけど鬼丸国綱は魔に対する特攻があると思う」
「それは話が飛躍しすぎじゃない?」
「うん。しすぎだよ」
俺はそれをあっさり認める。
「え? じゃあどうして……」
「でもそれくらいの事は考えていたほうがいいって話。実際それでいくならあいな以外の全員が特攻範囲って事になるしね。それにあいなは配信者として動きも知られてるんだ。前に出てもらう訳にもいかないだろ? だからここに来る前に鬼瓦さんには帰ってもらいたいんだよ」
たられば話だけど用意しておくに越した事はない。
俺は魔族じゃないけど魔王の力を持ってるし、オタメガも俺の血から女体化したのだ。安心はできないだろう。
「このフィオナ! 感服致しました! 私達を守ろうとするお考え流石魔王様です。私には見えない所まで見えていて……うぅ……私……私は……」
何故かフィオナが泣き始めた。
「お、落ち着け! 泣かなくてもいいだろ……で、最初の話に戻るけど、作戦会議をしようってこと!」
「う、うーん。と言われましても拙者達鬼丸国綱の所有者鬼瓦殿の事全く知らないでござる……」
……確かに。
とは言え俺がネットを見た感じ、明らかに情報が少ないんだよな。名前と持っている刀ぐらいしか載ってなかったし。
「それは仕方ないよ。天下五剣は問題があった時に、取り締まる人達だからね。素顔どころか戦闘シーンもネットからは消されてるはずだよ」
「えっ!? じゃあなんでテレビなんて出るんだよ?」
衝撃だ。初めて知ったぞ。
「ん〜。事情は色々ありそうだけど、テレビ局がよっぽどの賄賂を渡したか、前代未聞の魔王様を名乗の者を見せしめの為にこの機会を用意したのか。色々と考察が出てるけど、確かな情報はないね」
「なるほど……あいな。お前は国からその番組に出るよう要請を受けなかったのか?」
フィオナがあいなに質問した。確かに。あいなは配信者として、唯一2回も俺と遭遇できた人だ。
そんな人をテレビに出さないだなんて。
「きてないね。テレビと配信者って結構仲悪くてね。テレビが廃れた原因は私達のせいだ、とかテレビ関係者の人は思ってるらしいし」
確かに、ここ最近テレビを見てないな。調べたいことがあれば動画でいいし、ニュースなんかはネットニュースがある。
そういう事を考えればテレビ関係者の言っていることもあながち間違いではないだろう。
「拙者もテレビは見てないでござるね」
おぉ、オタメガも同じだったようだ。
「ふむ。私にはよくわからないが、そういうこともあるのだな」
フィオナは魔族だし、そんなの興味ないよな。ん? でもそれならフィオナは普段何してんだ?
「で、まずは魔物の配置が見たいんだけど……」
と言ってオタメガを見た。
「お任せください! 拙者、太郎殿の命令があれば野をかけ大地を駆けどこまでも行ってみせましょう!」
「ありがとう。それとフィオナもついて行ってくれないか?」
「はっ、勿論です! お任せください」
オタメガがどれだけ戦えるようになったか見てみたいし、フィオナが居ればどうとでもなるだろう。
「うん。じゃあよろしくね。俺とあいなはここで2人のこと見てるから」
「分かったでござる」
「じゃあ準備はいい?」
2人が頷いたので俺は2人に転移魔法をかけて1番下の階に飛ばすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます