第22話 攻略完了
「やっとついたか……」
というわけで、やってきました。ボス部屋前。
途中何人かの冒険者と出会ったがフィオナの圧倒的威圧感と俺の華麗(自称)なロールプレイで追い払ってやった。
そういえば最初に注意してくれたお兄さんとは出会わなかったな。
まあ会わなくて良かったか。会ったら追い払わないといけない訳だし……
「魔王様、申し訳ありません。私がもっと手早く敵を処理していれば時間をかけることがなかったのですが……」
フィオナは勘違いしているようだ。別にフィオナのせいで時間がかかったと言いたかったわけではない。
純粋にこのダンジョンが広すぎるという意味で言ったのだ。
「ごめん、そういう意味じゃないんだ。ここ広すぎるだろ? 普段から剣を持って歩かないから疲れちゃって」
「そうなのですか? それなら良かったです。ですがこのフィオナこれまで以上に魔王様のお役に立つ為、成長していきますのでよろしくお願いします!」
「あぁ、こちらこそよろしくお願いします……さっ、後はキマイラだけだし楽に行くか」
俺は刀をしまってレーヴァテインを取り出した。
そして部屋を開けるとライオンの頭とヤギそしてベビの尻尾を持った巨大な化け物がいた。
「ギャオオオ!!」
キマイラは俺達が入ったことが気に食わないのか咆哮を発した。
「うるさっ……」
あまりの煩さに耳を塞いでしまった。
そして次の瞬間、キマイラは何も出来ずに石になってしまった。
「やっぱこの武器ダメだろ」
許されてはいけない。1人だけ神様チートを使っている気分だ。
強すぎる力は身を滅ぼすっていうし、これからは乱用しないようにしよう。
何かあった時の切り札ということにしておこう。
「流石魔王様! レーヴァテインは普通の者では扱うことすらできませんからね!」
うーん。嬉しくない。凄いのはこの剣と魔王の魔力であって俺自身ではないんだよなぁ。
そんな事を思っていると目の前に管理権限のポップアップが表示された。
このダンジョンを併合しますか?
併合? これがフィオナの言ってたダンジョンを増やす事が出来るってやつだよな……
「魔王様、どうかされましたか?」
俺の顔色を察してフィオナが心配してくれた。
「あっ、うん。今日話してたダンジョンの吸収の話だけど、今その画面が表示されているんだよね」
「おぉ! それは素晴らしいですね! さっ、吸収しちゃいましょう!」
「んー。そうしたい気持ちはあるけど……これしたらこのダンジョンはどうなるの?」
そこが気になる。いきなり崩れたりしないよな?
そんな事になったら、今このダンジョンにいる人達はみんな生き埋めになってしまう。
「さあ? 私にも分かりません! ですが、魔王城を大きくする為には他のダンジョンを吸収する以外手はないかと思います!」
清々しいほどに脳筋だ。
「そうなんだろうけどさー。これって保留ってできるのかな?」
すると可能ですと出てきた。
「あっ、できるんだじゃあ保留で」
「えぇ!? 今から吸収しないのですか!」
「うん。まあ今回の目的はこれだったし……今はオタメガにこれを届けよう」
キマイラが居た位置には沢山の素材が落ちていた。そしてその中にはオタメガが望んでいたキマイラの牙もあった。
それら全てを異空間に収納する。
「それは……そうですね……」
ちょっと残念そうなフィオナ。
「まあこの話はあいなも交えて3人でしよう。とりあえず今は着替えてオタメガのラボに行こう」
俺とフィオナは服を着替えてオタメガのラボの近くに転移するのだった。
「はい……あれ? 太郎殿にフィオナ殿、キマイラの牙を取りに行ってくれたのではないのですか? っ!? それはまさかキマイラの牙でござるか!?」
オタメガのラボに来てチャイムを鳴らすとオタメガが出てきた。
現在俺とフィオナが2人がかりで牙を持っている。本当はフィオナが1人で持つと言ったのだが、こんな馬鹿でかい物を1人で持たせる訳にはいかないということで2人がかりで持ち上げている。
「そーなんだけど……これ重いから早く部屋に入れてくれない?」
興奮するオタメガとは逆で俺は今にも死にそうだ。
「ま、太郎様……もし重たいのであれば私が1人で……」
「だ、大丈夫! 大丈夫だから……」
「そ、そうですか」
もしかして今の俺って滅茶苦茶ださい?
フィオナから見たら1人で持てると言ったのに無理やり手伝ってきてとか言って持ったのに早々に死にそうな顔してるってダサいよな……
「おぉ、申し訳ございませんでした。あまりに早い到着だったので拙者我を見失っていたでござる。拙者も持ち上げますので3人で中に運びましょう」
と言うわけで3人でオタメガのラボに牙を運んだ。
「約束通りキマイラの牙は太郎様と私で持ってきたが、これをどうするのだ?」
部屋に入ってすぐにフィオナが口を開いた。
「まずは牙の一部を採取してそこからこの機械を使って粉末状にするでござる! えーと、確かここら辺に電鋸があったはず……」
オタメガはクローゼットを開けがさごそと物色し始めた。
なんでそんな所に電鋸いれてんだよ……
「これの一部を取ればいいのか?」
「はい、ですが普通の刃物では硬くて刃を通さないので特別な電鋸を使って……」
するとフィオナが腕を振った。
「これでいいのか?」
どうやら短剣で牙の一部を取ったらしい。
フィオナの手には牙の一部が握られていた。それにしても動きが速すぎて手の動きが見えなかった。
普段の鍛錬の時とか手加減してくれてるんだなぁ。
「おぉ!? これをどうやって!? 武器を持ってないようでござるが……」
「どうでもいいことだろう? 早く薬作りを続けろ」
オタメガには優しい方とはいえ、フィオナって人間相手だと本当に口悪いよな。
「……それもそうでござるね、ではありがたく頂戴するでござる」
そしてオタメガは本当に気にしてない様で機械に牙を入れて電源をつけた。
するとけたたましい音共に牙が粉になって出てきた。
「ほぉ、便利な機械だな」
「ふっふっ、これは我ラボの中でも最も高価な物でござるよ」
「あれ? 前は液体を分離させる機械じゃなかったっけ?」
前にそんな事を言っていたはずだ。
「今回の粉砕くんはそれを更新してしまったのでござるよ! その額なんと1億円! 魔物の素材で作られた特殊なプロペラが1秒間に100回転! どんな素材もこれさえあれば即座に粉にできるでござる!」
「おぉ、すげぇ……因みにその額は何処から?」
金持ちすげぇ……。1億ってもう想像すら出来ない額だ。
「勿論両親でござる! 拙者の夢の為、投資してくれる親に感謝でござるよ」
「ほんっと感謝しろよ!」
普通の親はしたくても出来ねぇよ。この部屋の機械だけで3億くらいはするだろう。
それにプラスで魔物の素材も親負担って本当凄いよな。
「勿論でござる。さて、話が逸れてしまいましたが、後はこの粉を作っておいた薬に混ぜて……一応完成でござる」
「ん? 完成した割にテンション低いな……」
珍しい。普段なら試験薬何番! とかって言いながらテンション高いはずなのに。
「実は……この薬実は完成系じゃないんでござる」
「ふむ、どういうことだ?」
「この薬は現状手に入る素材で作成した物に過ぎないでござる。ですが、拙者の予想だと魔王様の血が必要だと考えているんです」
まだ魔王の血とか言ってやがったのか……
フィオナがその話を聞いた瞬間ガバッとこちらへ振り返った。
やめろ! こっちをみるんじゃない! バレるかもしれないだろ!
「ははっ、でもそれはお前の予想だろ? 魔王の血がどんな成分でできているかも分からないのに、それを組み込むなんてオタメガらしくないぞ」
「確かに成分は分からないのでござるが、雪風ちゃんは魔の血を引く者。やはり必要なのは魔王様の血なのでござる」
普段はちゃんと成分やその素材の意味を調べたりしてるのにこんな時だけこじつけで話してくるんだよ!
漫画の考察動画くらい酷いこじつけだ。
「そ、そんなことないと思うけどなー……」
チラリとフィオナの方を見ると曇りなき眼でこちらを見ている。嫌な予感がする……
「ふむ。少し待ってろ。太郎様と私は少し席を外す」
何言ってんだよ、お前ぇ!!
「? 了解でござる」
ここで騒いだら怪しまれると思い、俺は黙って部屋を出るフィオナについて行くのだった。
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