第18話 オタメガとフィオナ
「って訳でこの人はお前が思ってるような人じゃないの。それとあいなとは付き合ってもないし、告白もされていないから」
公園に移動した俺はオタメガに事情を話した。とはいえフィオナの事を魔族とは言わず、一緒に冒険をしている仲間だと伝えた。
「なるほど、承知したでござる。太郎殿が何処ぞのハーレム系主人公みたいになってなくてよかったでござる」
「分かりました……私のはやとちりでしたね……」
2人とも納得してくれたようで良かった。
「で、オタメガは何をしてたんだ?」
「ああ、それは市場に買い出しに来ていたでござる。キマイラの牙が入荷したという情報を聞きつけたので拙者、居ても立っても居られなくなったのでござる」
あー、なるほど。薬の材料の買い出しか。
「キマイラの牙? そんなもの何に使うのだ?」
「あー、」
「それは拙者が銀髪ロリ美少女になる為の薬に使う為でござる!」
俺が不味いと思い口を開いたがオタメガが被せてきた。またあの地獄のような空気が……
そしてあの時の様に時間が止まった。
「ほぅ、貴様は女体化の薬を研究しているのか」
フィオナの反応は思っていたものとは違いとても興味深そうな声を出した。
「……そうでござる! 流石太郎殿のお仲間だけあって人を馬鹿にしないのですな!」
オタメガは少しの間を開けた後嬉しそうに声を出した。
「昔の仲間にも貴様の様な夢を持った奴がいて、やつの研究結果に何回か救われたこともある」
フィオナの昔の仲間か……そういえば、フィオナから封印される前の話とかって聞いたことがないな。
今度聞いてみるのもいいかもな。
「おぉ、その研究者も美少女になりたかったのですな! まさか同士が見つかるとは……拙者感激でござる!」
「そいつは女体化が夢ではなかったがな。……でもまあ似た様なものか。魔王様」
「あー!! フィオナちょっと話あるから耳貸してな!」
突然魔王様と呼んだフィオナに話をかけて大声でかき消す。
「な、なんでしょうか」
「俺が魔王って事は内緒だって! 人の前では名前で呼んでくれって言っただろ?」
「も、申し訳ありません……」
「先程魔王と聞こえたのですが……」
ま、不味い聞かれてたか。
「もう! フィオナったらいくら魔王のファンだからって俺を魔王と呼び間違えるなんて、おっちょこちょいだなー!」
「はははっ、申し訳ありません。ま、太郎様!」
「そうでござったか。魔王と言えば桜木殿も魔王と会った経験があって……って、あれ? そういえば桜木殿が太郎殿を慕い始めたのは……」
えぇい、こいつめ。なんでどうでもいいところで鋭くなるんだよ!
「そういえばキマイラの牙買わなくていいのか? 結構人気商品なんじゃないのか?」
「あっ! そうであった! 急がなくてはいけませんので、これにて失礼!」
そう言って忍びのような走り方で去って行ったオタメガ、形から入るタイプとはいえ側から見たら変人だ。
「魔王様、彼は何処に行ったのですか?」
「広場の方で開かれてる市場だよ。休みの日になると魔物の素材やそれを加工してできた品物なんかを売ってるんだよ」
「なるほど……」
「気になるのなら行ってみる?」
「いえ、魔物の素材には興味はないのです。オタメガ? に興味があるのですが……」
えっ!? 嘘! まさかフィオナのタイプってオタメガみたいなタイプなのか? 夢も馬鹿にしてなかったし……オタメガに取っている態度は他の人間に向けるものとは違うし、もしかするともしかするかも知れない。
「へー、オタメガに興味あるんだ」
「はい、彼の作る薬に興味があります」
あっ、そゆこと……完全に俺の勘違いか。
「あいつの薬に? 俺もフィオナに出会う前は手伝ったりしてたけど、まだ美少女になる薬は完成してないよ?」
「優秀な科学者に予め唾をつけているとは流石魔王様です!」
うん。フィオナは相変わらず話聞いてないな。
「唾つけるって……しかもあいつは科学者でもないし」
美少女を目指すただのオタクだ。
「あの手の自分の研究にしか興味を示さない科学者は時としてすごい発明をするものです。
そして彼らが失敗作と呼んでいる物さえ、我々からすれば想像を遥かに超えた力がある物も多くあります!」
その話を聞いて、確かにと思う節はある。
いつだったか透明になれる薬や、身体能力が飛躍的に増加する薬を作った事もあったはずだ。
「まあ、それは……確かにそうかも」
「魔王様! あの者を追いかけましょう! そして彼を我らの軍に入れることさえできれば我らの軍は更なる発展を……」
「待て待て待て! 俺は軍なんて作ってないし、発展させるつもりも無い!」
「魔王様、みなまで言わなくてもこのフィオナ分かっております。いずれは人間社会を支配し、この世界のトップになるつもりなんですよね?」
「ならねぇって! 俺の何を見てきたらそうなるんだよ!」
フィオナは本当に勘違いがすごい。
「さっ、オタメガの所まで急ぎましょう!」
「嫌だから!」
「魔王様! 魔王様は今日私に付き合ってくださるのですよね?」
急にフィオナが上目遣いでこちらを見てきた。
今までこんな事はしなかったのに急にされると断れない。
「そ、それはそうだけど……」
「……あいなの言った通りだな」
「何か言った?」
小さい声でフィオナが呟いたせいで声が聞き取れない。
「いえ、なんでもありません! それでは出発しましょう魔王様!」
「うぅ、分かったから引っ張るなって!」
俺はフィオナに手を引かれてオタメガの元へ動きまだしたのだった。
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