山のお礼とルードとお土産

「ありがとう。」

傷付いていた山が、お礼に未浄化霊を浄化してくれた。

悲しみを持った山に、初めて対面した。

傷付いている。

ただ、そこに居るだけ。

ただ、そこに存在しているだけ。

そして、人間が来て、自分に登り、

そして、足を滑らせ、亡くなっていく。

それだけならまだいい。

登って、亡くなった魂が、悲しみを抱えて、山に残り続ける。

「こんなつもりではなかった。」

「登らなければよかった。」

「来なければ、よかった。」

後悔の念が溜まり、そして、ループする。

山は悲しんでいた。

「悲しまれるために、私は存在しているのではない。」と。

「なぜ登る?登らなくても、良いではないか。」

「傷付けるために、私は存在しているのではない。。。」

山は、声を出さずに、泣いていた。

ただ、佇み、誰にも気が付かれないように、悲しみを堪えていた。

ルードは、山が傷付いていたことに反応し、

無意識に、謝り続け、その山で亡くなった者の代わりに、弁解し続けた。

山が分かってくれるまで。

誤解が解けるまで、謝り続けた。

ルードに、なぜその現象が起きたか?

山を見てしまったから。

登る景色を動画で見てしまったから。

そこで、繋がってしまっていた。

ずーっと、4ヶ月程、ルードは無意識に

そこに滞在する魂を自分の肉体に宿し、

ある日、山の意識と繋がってしまったのだ。

「ごめん。ごめんね。」

登った人達に代わり、ひたすら謝る。

そして、心が少し癒えた山が、ルードを浄化してくれた。

一体。二体。三体。次々と、除霊してくれ

八体。体が軽くなたったと共に、ルードは、山の気持ちを初めて受け取っていた。

「登らなければいいのに。」

山は繰り返していた。


山の登山道入口に辿り着くまで、ひたすらあやまり、そして、身体は軽くなっていった。

山のお礼だ。

ルードは、山にお礼を伝えた。

「ありがとう。気が付かなかった。」

「知らぬ間に、憑いていたんだね。」

「気が付かなかったよ。」

身体が軽くなり、心も軽くなり、心なしか癒えていた。

(よかった。。。)

そう、思ったのもつかの間、癒えたのは山の方で、山に残る魂は、癒えきれていないものもいた。綺麗に外れたはずのルードの身体には、新たな未浄化な魂が、六体ほど憑いてしまった。

八外れて、六付く。

減ったのか?増えたのか?

若干、分からぬほどの差異で、減った。

そんなところ。

憑き物を外して頂き、お礼を伝え

帰り際に、新たなる土産を頂く。

喜ばしくない。

そして、ルードは、山の気持ちを理解する。

山が傷つく理由。

山が絶えていること。

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ウタウタイのルード 一粒 @hitotubu

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